(第011話)謎の対応・4
悠爾たち三年生は臨時の全校集会が終わりようやく帰れると思ったが、それは校門を出た時に崩れてしまった。そこには野村ともう一人見慣れない男が立っていた。その男はだらしない髪型をしていたが、それなりのスーツは着ていた。そして三年生十人を学校そばにある学級長の薬師神の両親が経営している料理屋の二階に連れて行った。そして持っているスマホなどの電源を絶対落とすようにといわれた。その形相は恐ろしいものだったので、全員が従った。
「そこの方はわしの大学時代の先輩で愛媛日日新報の記者をしている広野さんだ。これから彼がいう事は他言無用だがすぐみんなが知るであろう事実だからよく聞く事」
野村に紹介された広野という男の眼光は鋭かったが、唇は少し震えているようだった。どうやら恐ろしい事をいうような雰囲気が伝わってきた。
「ここに集まってもらったのは、君たちの同級生のことを伝えるためです。本当はこんな形で情報を明かすのは報道倫理に反することですが、いま現在起きている事はそんなことなど吹き飛ぶようなことです。
実は金が谷地区は一昨日から政府が隔離しています! 今日来た自衛隊員はごく一部です・・・そして、この町ももうすぐ隔離されます!」
その時、海原が話を遮った。こんな事が今の日本で起きているのが信じられなかったからだ。それに、理由もわからないまま・・・
「ちょっと待ってください! そんな非常事態が起きているのに何故この町の大人たちが騒がないのですか? それにあんたのようなマスコミも!」
「それはもっともです。すべては秘密のうちに行われています。それを知っている大人はこの町には、ほんのわずかだと思います。そうでしょ、もし知っていたらもう脱出しています!」
そう話してから広野は水筒の水を飲み込んでからカバンから冊子のようなものを取り出した。それには目を疑うような文字があった。
「そのアマノイワド作戦ってなんですか?」
「これは、現在世界各地で発生しているゾンビのようなモノを封じる国連本部が立案した作戦です。しかしながら皆さんもご存知のように現在米中露が激しく対立していて国連が完全に機能を喪失しているので実行不可能となっているのですが、この作戦を考えたのが我が国のさるお方です」
「さるお方って・・・いったいなんですか、そのゾンビのようなモノって! まさか本当にゾンビが現れたのですか? そんな現実離れな事が起きるだなんて・・・」
「そのゾンビのようなモノですが、実は私もはっきりしたことは知らないのですが、なんでも人でない存在になるが優れた存在になるということらしいです。それ以上はわからないのですが。ただ、人類にとって脅威の何者ではないと」
広野がいう事の意味がさっぱり分からなくなった一同は互いに顔を見合わせるしかなかった。