(第008話)謎の対応・1
悠爾の同級生五人がどうなっていたのか? それを確かめるため野村は五人の自宅や保護者の携帯にも連絡を取ろうとしたが無駄だった。全くつながらなかったからだ。
「電話にでんわ! かよ、まったく。一人や二人だけでなく全員かよ? どうなってんだよ!」
野村はつまらない親父ギャクをつぶやきながら立腹していた。五人とも高校入学から知っている生徒だったが、いずれも問題を起こすような者でないことは知っていた。それなのに集団で休むなんて信じられなかった。
「野村先生、なに荒れているんですか? もう帰りましょ! 校舎閉めますよ」
「校長、申し訳ございません。実は金が谷地区から通っている生徒が全員欠席でして・・・どうも、それは二年も一緒で、ただ一年は三人のうち一人だけ登校したのですが・・・聞いても何も言わなかったです。しかも、今日から学校近くの親類宅に泊まるなどと言ったそうですが。なにか情報ないですか?」
「うーん、それなんだが私もいろんなところから聞かれたんだよ。郵便会社や宅配会社も困っていたよ。あの金が谷地区の世帯からしばらく配達しないでくれと言われたそうだよ、それに新聞も。なにかあの地区では起きているという噂があるんだよ。まあ、野村先生は遠くから通っているから知らなかったかもしれないけど」
校長はそういうと「職員室に貼られていた愛媛県南予」の地図から金が谷地区を指さした。
「あそこは三方を山で囲まれていて、北側は崖になっていてすぐ海が見えるところだが、道路は南北を貫く細いこの県道しかない。昔は銅山があったけど大昔に閉山してから農業を細々としている地区だからな。
それに観光地もないからあまり人がいかないところだけど・・・なにが起きているんだろうか?
取りあえず、町役場と警察に連絡したけど。もしかすると大変な事がおきているんかもしれんぞ」
「まさか・・・そんな大事が起きているんなら、とっくにニュースになっているはずではないでしょうか? 明日になってもうちの生徒が登校しなければ。学校としても何か手を打つべきではないでしょうか?」
「そうだなあ・・・食中毒で寝ているとかの方がいいが・・・実は、上の方から聞いたんだが、こういった事態は各地で起きているそうだよ。高校生が理由不明で欠席するのが。もしかすると・・・」
そういって校長はスマホのメールの画面を見せた。その文章を読んだ野村は青ざめてしまった。
「まさか・・・」