始まりの
「じゃあ、行ってくるよ。」
僕は部屋の隅にうずくまって、すっかり拗ねている少女に向けて苦笑いする。
「行くなっ!…って言っても行くんだからさっさと出てけば?」
少女は冷たく睨む。
「えっと…僕がいない間、気を付けてね」ディセラはそう言う僕を完全に無視する。
仕方なく僕はそっと部屋をでた。
僕は用心棒を生業としていて、
僕らは世界各地を旅して歩いている。
まあ、僕らといっても僕、
ヴァーソンとディセラの二人なのだが。
旅の目的は2つある。
しかし全てを話すととても長くなるため後々話すとしよう。
さて、僕はいま夜の街の中を歩いている。
時間はちょうど8時になろうとしていた。
用心棒の仕事はとても儲かる。
よく人食いが現れて人間を襲うからだ。
意外と人食いを倒せるような強靭な者は少なく、商人などには特に重宝されているのだ。
「おーい!用心棒さん、こっちこっち!!」
そう言って僕に手招きをしてくるのはこの街でよく僕を雇ってくれる商人のヤンだ。
「やあ、ヤン。今日はどこまで?」
僕はヤンに仕事について尋ねる。
「今日は隣町までだからすぐだよ。」
そう言ってヤンは微笑む。
「隣町って昨日だか一昨日だかに事件になってたよな?」
僕は、朝読んだ新聞の一面に書かれていた記事の記憶を探る。
確かとても強い人食いが出て町の半分が破壊されたとか…。
「ああ、そんなことあったかもしれない…でも今日までに渡さないといけない商品がたくさんあるから行かないといけないんだよな。…悪いけど付き合ってくれる?」
そういってまた、にこりと微笑む。
「嫌だよ!めんどくさい。なんでこんな暗い時間に…。」
僕は正直に今の気持ちを告げた。
「えーっ!うーん…いつもの倍の金額でも?」
…なんだと?!
あのヤンが給料を上げるとは相当だぞ。
ねぇ?どうするの?うん?とヤンは僕の顔を覗き込んでくる。
まあ給料がいいのに越したことはないよな。
しかし、僕がお金に釣られると思うなよ!
だから僕の出した答えはこれだ…。
「…行きますよ。」
「そうこなくちゃ!」
そう言ってヤンは荷造りを手早く始めたのだった。