リリアンヌ・グィード
___好きになっては、いけない人に、恋をした。
リリアンヌ・グィードは、公爵令嬢でありながら、あまり目立たない。故に、寡黙令嬢とあだ名された。
リリアンヌと第二皇子クレイシオが婚約を結んだとき、二人は六歳であった。
第一皇子と、婚約が結ばれなかったのは、彼の皇子が、王位につくことは無いと言うことが予想されたためであった。
リリアンヌは、知っていた。
此の先の未来を
第二皇子の婚約者となったリリアンヌは、十年後、一人の少女によって、その身分を奪われると。
故に、彼女は、感情を捨てた。
家の中以外では、笑うことも、泣くこともせず、鉄壁の笑みを浮かべ過ごした。
当然のごとく、家族は心配をした。
たった一人の娘であったためか、父の公爵も兄二人も、彼女の事を心配した。
そもそも、公爵家は、娘を王家に嫁がせるのは反対であった。
王命と言うことで、いな仕方なしに、婚約を結ばせたのだった。
家族の心配もよそに、リリアンヌは、美しく成長した。
ふんわりと甘いはちみつブロンドの髪、晴天の空の瞳。陶磁のように白い肌、華奢な四肢。
どこをとっても、ひけにとらない美しさであった。
彼女は、その美しさを地味に隠し、学園に入学した。
二年後。
古びた図書室で出会ったのは、彼女の人生を変えることになる少年だった。
(______所詮道ならぬ恋。叶うことはない。淡い初恋として、蓋をしましょう)
かつて、王妃が同じことを呟いたことを、彼女はしらない。
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私には、王妃様が泣きたそうに見えました。
故に、その場を静かに離れたのです。
《とある侍女の独白》