第一話:再会。そして・・・
蝉の声がうるさく聞こえてくる8月。俺は実家がある尾張に帰っていた
お盆休みで一週間、なんの予定も入れてなかったので2年ぶりに親の顔を見ようと思った
ここ数年、仕事が忙しくて実家に帰る機会がなかった。
「懐かしいなぁ・・・」
そんなことを口にしながら、故郷の変わりゆく姿を見ながら実家に帰ろうとする一人の男性。
名前は白水海斗。
年は26歳。
職は、日本でトップ5に入るほどの大企業。
「お、ここだここだ!」
子供のようにはしゃぎながら実家に着き、家のインターホンを押す。
「はい、どなたでしょう?」
懐かしい年老いた母の声が、インターホンから聞こえてくる。
「長男の海斗です。」
言った瞬間にドタバタと家の中から足音が聞こえてくる。
「おかえり、どうしたの急に?」
喜びながら驚きながら。そんな感じに母が飛び出してくる。
お盆休みもらったから、久しぶりに帰ってきたのだと母に伝え、家の中に入る。
実家には親しかいないため、家の中は無駄な家具がなく、ホコリすらないんじゃないか?
と、言いたくなるぐらい綺麗に整っている。
海斗には妹が一人。すでに結婚もして、今は徳島で新婚生活を楽しんでいる。
「久しぶりだな〜、海斗」
奥からひょいっと顔を覗かせて、親父が挨拶してくる。
「久しぶり」
そんな軽い挨拶をして、荷物を自分の部屋だった部屋に置いて、
リビングのソファに腰をかける。
ふぅー、と旅の疲れが出て眠気が襲ってくる。
そこへ、母がお茶とお菓子を目の前の机に置く。
「最近、仕事はうまく言ってるの?」
「まぁまぁかな」
実際、そんなに悪くない。むしろ良いほうだ。
似たような事をマシンガンのように母は聞いてくる。
そしてとうとう、聞いて欲しくないことを聞いてきた。
「・・・・彼女はいるの?」
いきなり声が高い音から低い声に変わる。
「・・・・ごめん、仕事が忙しくてさ。」
「はぁ〜、やっぱりお見合いするべきかしら?」
「遠慮しときます」
それだけは勘弁して欲しい。
理由は、前にもお見舞いをしたことがあるのだが親が選んでくる女性は大体が外れである。
顔は良くても性格が悪いとかそんなのばっかである。
そんなことを話しながら一日がすぎていった・・・・
次の日、中学時代の友人に電話して皆で酒でも飲まないかと誘い、近くの居酒屋に集まった。
懐かしい友人たちが集まる。ほとんどが地元から離れていないので、集めるにはそんなに苦労しなかった。男女問わず電話しまくって、かき集めた結果、男子が4人女子が3人と集まってくれた。
「おっす!久しぶりだな青年!」
「久しぶり〜。元気だった?」
こんな感じに昔話に花咲かせ始める。
「そういやぁ、給食のときに牛乳飲もうとした海斗に後ろから脇腹こしょぐって吹かせてたっけ。」
「そうそう、それで前に座ってた俺の顔に思いっきりかかってたな〜」
「ばっちぃーー、ところで海斗君。彼女はいるのかな?」
「ん〜いないけど?」
「よかった!ちょっとある人を呼んでるんだ〜」
なぜだか友人の顔がニヤニヤしている。
(・・・・なんか嫌な予感がするな)
そして、海斗の予想は的中する。
「あ、来た来た。こっちこっちぃ!」
大人びた女性がこちらに向かって歩いてくる。
しなやかで長めの黒髪に、派手すぎず、かといって地味でもない服装だった。
ウエストは締まっていて、胸もある程度ある。健康そうな体の持ち主だった。
「久しぶりだね、海斗君。」
「あ・・・・あぁ、久しぶり」
「隣・・・座っていいかな?」
「あぁ、もちろん。」
彼女の名は高橋七美。良き友人で、良き幼馴染。そして、元恋人でもあった。
彼女とは高校まで一緒の学校に通い、高校の時に向こうから告白されて、
付き合い始めたが、受験シーズンごろだったため、あまり相手にできず
卒業式の時に別れてしまって、あまり言い思い出がなかった。
「元気だった?」
「相変わらずといったところかな。海斗君は?」
「まぁまぁだよ」
「そっか・・・よかった。」
ぎこちない空気が二人の間に流れた。
正直、あまり七美の顔を見て話せない。照れくささもあった。
「はいはい!そんな空気漂わせてないで!盛り上がっていこう。ね?」
「そうそう、まぁ御二人さん。仲良くいこうや」
友人がバシバシと背中を叩く。
「わかった!わかった!頼むから叩くなよ!」
その後、夜の9時くらいまで馬鹿騒ぎをしていった・・・・
みんなで解散をした後に、七美から誘われた。
ちょっと歩かない?そんな感じに誘われてから10分・・・いやもっと経っていたかもしれない。居酒屋の時のようにぎこちない空気が漂った。
我慢しきれずに、自分から声をかけた。
「あのさ・・・」
「え?」
「まだ・・・恨んでるか?」
「なんで?」
海斗の言っていることがわからないのか、う〜〜っと考えてる。
「ほら、高校の時の・・・」
「あ、アレのこと?恨んでないよ。全然。」
「そっか」
「うん。でも、あの時はちょっとだけ恨んでたかも。」
前を歩いていた七美がくるっと回って、人差し指をビシッ!と海斗の方に向けながら言った。
回った時に長く綺麗な黒髪がふわっと月明かりに照らされながら、神秘的な絵を作り出す。
多分、世の男性が見たら一目惚れするだろうな。それぐらい綺麗だった。
「ははは、全く・・・相変わらずだな。ホント。」
「へへっまぁね。海斗君も全然変わってない。」
「そうか?」
「そうだよ」
いつの間にか、あのぎこちない空気はどこかへ行ってしまっていた。
逆に気持ちの良い空気が流れ始めた。
「いろいろあったね・・・ホント。」
「だな」
二人しか知らない昔の話をしながら歩いていると、高校時代に二人の仲が結ばれ、離れて行った噴水のある公園にたどり着いた。
「きちゃったな。この噴水にはずいぶんとお世話になったもんだ」
「二人の思い出の場所だしね」
「そうだな・・・」
二人とも同じことを考えていた。告白した時、告白された時、別れそうな時、別れたかった時。
いろいろなことがあった。
「海斗君って、もう結婚しちゃったの?」
「・・・いや、まだしてない。むしろ彼女もいない」
「悲しいですね、隊長〜」
「ははは、ホント悲しいよ。昨日親にお見合いに持ち込まれそうになったしな」
「ホント〜?親も頑張ってるね」
「いい迷惑だよ」
「ははは、・・・・そんでさ、もし悪くなかったら・・・」
「ん?どうした?」
「もう一度・・・・もう一度だけ・・・」
その時、海斗は感づいた。
七美は告白しようとしてる。正直動揺を隠せなかった。
そして、おどおどしているうちに、その一言が出てくる。
「私と・・・付き合ってください」
「あ・・・その・・・」
迷った。ぶっちゃけ、彼女もいないし、その告白を拒否する理由もない。
かといって、受け入れるのには抵抗があった。
もし受け入れたら、また泣かせるかもしれない。また悲しい出来事が起こるかもしれない。
頭の中をフル回転させて、考えた。だが、動揺していて冷静に考えられない。
そんな海斗を見た七美は、返事を恐れたのか一言いった。
「・・・返事は今じゃなくていい。また今度、明後日ぐらいに返事して・・・」
「・・・あぁ、わかった」
「それじゃ!またね!海斗君」
「あぁ、おやすみ。またな」
「うん!おやすみ」
そうして七美は走って、帰っていった。
残された海斗は、ボォ〜っとしながら家に帰り始めた・・・・・
初めまして、クニオと申します。
こんな小説を見てくれれば幸いです。
今回は再会ということで、まぁちょっと懐かしい話をしている話しか出てきませんでしたが、次回からはちょっと照れくさくなるような話にしようかなと思います。
では、次回までさよなら〜