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最凶の存在  作者: 翔さん
第弐章*過去編
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過去・10*崩壊

『それは後で良かろう、精霊の王よ』


低い声が響き渡る

今まで沈黙を保っていたグレアントさんが声を出した


「そうですね。先ずは私達の事、それからここに来た目的をお姉様とカリーヌ様、ユウリ様、ヤンフ様にお話ししなければなりません。グレアントさん、椅子を作ってもらえますか?」

『うむ』


グレアントさんの巨大な尻尾がゆっくりと地面に叩きつけられる

すると、私達の前に5つの簡易な椅子が現れた

ヘルウェルに促されるままに椅子に座る


「先ずは自己紹介をさせて頂きます。私はお兄様…いえ、狂羅様の契約精霊である、闇の精霊王ヘルウェルと申します」

『同じく龍神グレアント。人間には『人類最終試練』等と呼ばれておる』

「カリーヌ様、ユウリ様、ヤンフ様、お姉様と共に過ごして頂いた事、心から感謝致します。我らが主も感謝しております」


そう言って頭を下げるヘルウェルにカリーヌさん達は慌てて頭を上げてくれと言っていた


「それで、言いにくいんだけどね、その狂羅様ってのは何処にいるんだい?いっ、いや、また今度にするかね…」


そうカリーヌさんが言った言葉に、ヘルウェルは体を一瞬震わせた

それを見たカリーヌさんが慌てて否定の言葉を投げ掛ける


「…大丈夫です。お兄様からはきっとそう言うだろうと言われておりましたので。そして、今の現状を全て話す様にと…」

「別に気にしないで良いんだよ!それよりも「いえ、見ていただきます」……本当に良いんだね?」

「はい。ただ、ユウリ様とヤンフ様には少々辛い物になるかと思います。カリーヌ様にお任せしますが、お兄様を見る事について話し合って頂きたいのです」


その言葉に本気を感じ取ったカリーヌさんは、ユウリさんとヤンフ君に見ないように勧める


「私は狂羅様を見る。ソフィアさんを助けてくれた人なんでしょ!?それなら何があっても私は知りたい!」

「僕も!」

「良いんだね?ヘルウェルさんは本気で心配してくれている様だし、きっと辛いものだ。大丈夫かい?」

「「うん!」」

「そうかい」


カリーヌさんが1度頷くとヘルウェルを見た


「分かりました。ただ全ての疑問や質問は最後にして下さい」


3人が頷いたのを確認して、ヘルウェルは立ち上がり、少し離れる


「『黒の棺』」


そう呟いたヘルウェルの目の前に黒い棺が現れる

そしてそれは地面にゆっくりと降ろされ、地面に触れると、一瞬にして消えた


そして、私達は現れた光景に声が出なかった

いや、小さな悲鳴は出た

直視出来ない程の光景だった


まず視界に入ったのは夥しい量の血

その次に血で真っ赤に染まった狂羅様

そして、その狂羅様に刺さる幾つもの剣

その剣は瞬時に消えると次は頭に刺さった状態で現れる


また溢れ出す血


腕がなくなり、血が流れ

足がなくなり、血が流れ

腹に穴があき、血が流れ

首から上が消え、血が流れ

腕の皮が全てなくなり、血が流れ

爪がなくなり、血が流れ

目がなくなり、血が流れ

体が真っ二つになり、血が流れ

頭が破裂し、血が流れ

体が破裂し、血が流れ


急に体が燃えた…体の何処かに剣が刺さった…眼球がなくなった…腕がなくなった…足がなくなった…頭がなくなった…内臓が飛び出した…


ずっと…永遠に繰り返される悪夢の様な…地獄すら生温い様な光景が続く

狂羅様の体は、破裂しようが、無くなろうが瞬時に再生し続け、永遠に繰り返される


もう、見ていられなかった


「『黒の棺』」


その呟きと共に狂羅様の体は黒い棺の中に入り、姿を消した

後に残るのは夥しい量の血と、血の匂いだけだった


「見ていただいた様に、お兄様は現在話せない状況です。申し訳ありません」


誰もその言葉を聞いていなかったと思う

時間が経つにつれ、頭は否応なしに見た光景を整理していった

涙が溢れる

何故…どうして…

そんな言葉すら出ない程に、衝撃が大きかった


「先ずは落ち着いて下さい」

「お、落ち着けって!?さ、さっきのが狂羅様なんだろう!!どうして助けないんだい!!」

「落ち着いて下さい。話さなければならない事があります」


もう1度何かを言おうとしたカリーヌさんだが、ヘルウェルの表情を見て何も言えなくなった

悲しみに満ちた表情で、今にも泣き出しそうだったのだから


私が知らない間、ヘルウェルは先程の光景をずっと見ていたのだろう

助けようとしても無駄だったと、そう表情が語っている


「皆さん、人神とは何ですか?」


突然発せられた言葉を皆は知っているが、誰も答えなかった

正確にはまだ頭が整理出来ずに答えられなかったのだが


『人神とは人の身でありながら神の頂に立った者達の事だ。その様に一般的に言われておる』

「一般的?」

『うむ。正確には神々の犠牲者こそが人神と呼ばれるのだ』


絞り出した疑問の答えも更に疑問が浮かぶ様な答えだった


「遥か昔の話です。生物達が独特の進化を遂げ、人類としての文明を築いて少しの間、とても平和な世界がありました。争いもなく、皆が協力して生きるような、とても穏やかな時代でした。

ですが、この世界にふらっと立ち寄った神が、数人の人間を選び、その者達の愛しい者達を傷つけ、他者を操り、殺め、いつしか、世界に戦乱が訪れました。

まだ満足出来なかった神は、世界で最も力ある者達の元へ自ら赴き、彼等の愛しい者達を想像を絶する苦痛を与えながら、彼等の眼前で殺しました。

彼等は怒りと復讐に囚われ何度も何度も神に挑み続けました。

ですが、神には彼等の拳は届く事はなかったのです。

神とはそもそもの存在が異なる存在で、どれだけ速くても、どれだけ強くても絶対に届かないのです。

彼等はただ己を鍛え続けました。

いつか必ず届くと信じ、彼等の復讐心が、生命がなくなるその時まで、ただひたすらに自らを鍛え続けました」

『その者達を、周囲の者が人神と呼んだのだ。人からすれば強大過ぎる力はまるで神の様だと。しかし彼等の力では絶対に届く事がないと言うのに…』

「人神と呼ばれる事になった方々は、既に気づいていました。自らの力では届かない事に。気づいた人神の方々はもう犠牲が出ない様に、尽力しました。神が自らの前に現れた時の力を基準とし、それ以上に強くならない様に諭す存在を創ったのです」

『それが我、今はグレアント名を頂いた、原初の龍である。我々龍も、竜も、全ては力ある者を止める使命がある』

「そうして人神と呼ばれる方々は年々減っていき、約1万年程前から10人になっていました。先に逝ってしまった人神の方々とグレアントさん達の尽力の結果、本当に犠牲は減りました。神も一定の力を得ていない者には干渉しづらいそうです。

そして、その頃にある人神の方がこう言ったのです『我々では神に届かない。ならば我々はいつか現れる神に届く者の為に武器を鍛え上げよう』と」

「武器?」

「はい。その剣は後に『終焉の剣(エンド)』と名付けられました」


ヘルウェルが1度大きく息を吐く


「『終焉の剣』は人神の魂によって形成され、全ての生物によって研かれ続きます。そして資格を持った者のみ手をする事が出来、その者に剣の所持する全ての経験を与える。

そう言い伝えられております」

「全ての経験?」

「はい。1つの魂が生きていた間に得た知識や技量の全てです」

「凄い…」

『ただ知識として得る事が出来たならば、本当に良かったのだろうな』


グレアントさんは静かに瞳を閉じた

どうゆう意味なのか…そう聞こうとした時、ヘルウェルが口を開いた


「『終焉の剣』は資格を有する者に、1つ1つ魂を体験させるのです。1つの魂が生きて死ぬまでの間の出来事全てです」

「…どうゆう事?」

「…痛みや感情と言ったもの全てです」

「「「「っ!」」」」

「…お気づきかと思います。お兄様が全ての人神の方々が望み続けた『終焉の剣』の担い手であり、先程の光景がその答えとなります。お兄様は現在も1秒の間に何千、何万と言った生を体験しています」

「いつ…いつ終わるのですか!?狂羅様はっ…狂羅様はいつ目覚めるのですか?」

「お兄様は必ず目覚めます…ですが…」


そこで口を閉じたヘルウェルは泣きそうな顔をしていた


『『終焉の剣』が何故その様に呼ばれているか…それは他にも担い手足り得る者が存在していたことに他ならない。主が現れるまで15人の担い手が現れた。しかし、彼等が神を殺すことは出来なかった。姫よ、何故だと思う?』

「…人神程の力がなかったからではないのですか?」

『『終焉の剣』には人神の魂も眠る。故に人神の力を得ると言っても過言ではない。だが彼等では駄目だったのだ。姫よ、何故だと思う?』

「…分かりません」

『簡単な事よ。1つの魂の感じた、幸福、喜び、怒り、哀しみ、憎しみ、焦燥、希望、絶望…それら全ての感情、そして痛み…。魂1つにどれ程の情報が込められていようか…。皆がたった1人の情報を経験しただけで狂った…。そしていつしか狂いは止まらず、『終焉の剣』を握り締め、人類を滅ぼそうとした。

故に『終焉の剣』と呼ばれる様になったのだ』

「狂羅様は…」


そこまで言って気づいてしまった

グレアントさんは1人でも狂うと言った

では狂羅様は…1秒と短い時間に数千、数万の経験をしていると言っていた


「大丈夫です。必ず狂羅様は自我を保ったまま帰ってきてくれます」

「お姉様…」

「狂羅様は必ず…」

「…はい」


ヘルウェルは流れ出ていた涙を拭き、話を続けますと発した


「お兄様は現在私の『黒の棺』の中で数多の魂の経験を吸収し続けています。そして確実に言える事があります。お兄様がもしも、自我を保ったままならば神を殺せるでしょう。そして、もしも自我を保っていなかった場合、神も人類も…全ての生物が殺され尽くすでしょう」

「大丈夫です。狂羅様は必ず…」

「はい…私もそう信じております」


ヘルウェルが立ち上がりカリーヌさん達に頭を下げる


「長い間お話しを聞いて頂きありがとうございました。お姉様と少し別の話がありますので、先にお家に戻っといて頂いても宜しいでしょうか?必ず後で伺わせて頂きますので」

「あ、分かったよ。ソフィア、気を付けて帰ってくるんだよ」

「はい、ありがとうございます」

「また後でね、ソフィアさん」

「後でね」

「はい」


3人が去っていくのを見送り、ヘルウェルがもう一度座るように促した


「お姉様にはこれから訓練をして頂こうと思っております。先程の話からも分かります様に、神は人神の大切な方を狙います。ですので、少しでもお姉様には自衛の手段を得て欲しいのです」

「はい」

「この件については、カリーヌ様と良く話し合って頂きたいのです」

「ヘルウェル…」

「はい、何でしょうか?」

「1日に1度だけで良いので、私を狂羅様に会わせて頂けませんか?」

「それは…」

「お願いします。私は…狂羅様が苦しんでいる時に、何も出来ないのは嫌なんです。会っても何が出来るかは分かりません。それでも行動を起こしたいのです」

「…分かりました。日が変わってから1時間、その間はお兄様は『終焉の剣』の影響を受けず、体を休ませる時間です。その間ならば危険はないと思います」

「ありがとう…」

『ふむ、話も纏まった様だな。では、我は行く。また近い内に会おう』


グレアントさんはそう言って飛んで行ってしまった

ヘルウェルに聞くと、元々の予定であったらしく、ただ挨拶をしたかったらしい


「お姉様、あまりカリーヌ様達を待たせるのも失礼ですので、ここからは歩きながら話させて頂きます」

「えぇ」


そう言って村へと歩きながら話す


「先ずは話し方を上品に、威厳ある話し方にしましょう。それと平行して訓練をして頂きます」

「私は…強くなれる?狂羅様の役にたてる?」

「大丈夫です。お姉様は特別な体を持っております。お兄様程ではありませんが、魔法に関する事ではこの世界でもかなり飛び抜けております。それに、素質はお兄様以上にあります」

「そう、良かった…」

「はい。ですが、お兄様には敵わないんでしょうけど」

「うん」


気づけば既にカリーヌさん達が待つ家についていた

扉を数回叩くとユリアさんが顔を出して中に入る様に言われる

ユリアさんの瞳がかなり赤く腫れ上がっていたのが、少し気になって質問してみると、何でもないと言われた


私はヘルウェルに言われた通り、カリーヌさんに訓練をするため家事を手伝えなくなる事を告げると、あっさりと許可が出た

すると何かを思い出した様にヘルウェル「あっ」と呟いた


「どうしたんだい?」

「申し訳ありません。すっかり忘れてしまっていたのですが、これを受け取って下さい」


そう言ってヘルウェルは何もない所から大きな箱を取り出した

かなりの重量感のある箱だ


「これは…なんだい?」

「金貨でございます。お兄様からお渡しする様に言われております」


そう言ってヘルウェルが箱を開くと、中にはぎっしりと金貨が入っていた

呆然とするカリーヌさん達にヘルウェルが言葉を続ける


「これはお兄様の所有する資金のほんの一部なので、気にせず受け取って頂きたいとの事です。お兄様はカリーヌ様、ユリア様、ヤンフ様にとても深く感謝しており、現状では挨拶もお礼を言う事すら出来ない事への謝罪の気持ちだと言っておりました。必ずお礼は別にするとの事です」

「え…いや、受け取れないよ!」

「どうか受け取って下さい。でなければ、私が怒られてしまいます」

「いや、だけどね…」

「お願い致します」


それから暫くの説得により、カリーヌさんが受け取った


「ありがとうございます」

「あんたは何処か行く宛はあるのかい?」

「私ですか?私はお姉様の影の中に潜もうかと思っておりますが」

「良いよ、あんたもここに住みな。じゃないとお金は返すよ」

「…分かりました。お世話になります」


こうしてヘルウェルの同居が決まった

ヘルウェルは完全な精霊で食事を必要とはしないが、家事全般を得意とし、私とユリアさんの仕事を一瞬で片付けてしまう


そして、その日の夜、日が変わる直前にヘルウェルに呼ばれた

ヘルウェルの目の前に現れている黒い棺は、朝と変わらない


でも、私の体は緊張で動かなくなる

あれが開かれた時、先の光景が…どうしてもそう考えてしまう


「お姉様、日が変わると同時に黒の棺は解除されます。お兄様はきっと寝ておられると思いますが、どうか宜しくお願い致します」

「うん」


そうして、無言の時間が続くなか、黒の棺がゆっくりと開いていった

中から現れたのは真っ赤に血で染まった狂羅様

一瞬体が後ずさってしまったが、狂羅様から聞こえる穏やかな寝息に心を落ち着かせる


側に寄る

すーすーと寝息のみの静かな時間…

狂羅様の右手を両手で包むと、それを胸に抱え込む


「狂羅様、私はここにおります。狂羅様の側にずっとおります…」

「ヘルウェルもここにおります」


反対側に座り込んで手を握るヘルウェルと目があった

それから1時間と限られた時間ずっと話しかけ続ける

狂羅様に届いているかは分からないけれど、届けと心から願いがら時間の許す限り話続けた


次の日、ヘルウェルの訓練が予想を遥かに越える程の厳しさに驚いたけど、何とか乗りきり、その事を狂羅様に話す


次の日も…その次の日も…

その日に起こった事を、感じた事を話続けた


何度も何度も話続けた…












「はぁ…はぁ…、まさか負けるとは思いませんでした。流石はお姉様です」

「そうですわね…。わたくしも驚いていますわ」


2年程の時が過ぎた頃、ついにヘルウェルに訓練とは言え勝利する事が出来た

私はこの2年で口調を変え、力をつけた

度々くるグレアントにはまだ勝てないのだけれど…


この2年で色々な事が起きた

ユリアが王都にある学園に通い始めた事

ヤンフがヘルウェルに戦い方を習い始めた事


そして、カリーヌさんの夫であるダンテが死んだ事

ダンテは冒険者だったらしく、依頼中に亡くなった事が書かれた手紙が届いた

その時のカリーヌさん達は泣いていた

カリーヌさんは1日泣いていたが、次の日にはもう泣く事はなかった

ユリアもヤンフも数日引きずったが、元に戻った

覚悟をしていたのだろう

ヤンフが訓練し始めたのはその頃だった筈だ


でも、2年経った今でも狂羅様は目覚めない

それから、狂羅様の入った黒の棺はヘルウェルの闇の中ではなく、遠くに建てられた小屋に置くことになった

今も狂羅様はその小屋の黒の棺の中で苦しんでいる…


今日は色んな事を話そう

ヘルウェルに勝てた事も話そう


そう思いカリーヌさんの店に向かっていると、村が騒がしい事に気づいた

気配を探ってみると、多数の見知らぬ気配が近づいてくるのを感じた

既にヘルウェルは気づいている様だ

そう言う能力ではヘルウェルにはまだまだ追い付けない


「賊でしょうか?。それにしては統率が取れた動きですが…どうしますか?」

「私で対処しますわ。ヘルウェルはカリーヌさんとヤンフの護衛を頼みますわ」

「ふふっ、はい。お気をつけて」


ヘルウェルはそう言い残すと瞬時に消える

もう既にヘルウェルはカリーヌさんの元にいるのだろう

私には使えない転移や移動に関する魔法


気配のする方向へと向かうと、視界に入ったのは何処かの紋章が入った旗を持つ騎士達だった

遠く離れた場所から様子を伺う村人が見える


「ベンダー伯爵の命により、この村の全ての者を反逆罪とし、拘束する。抵抗する者は殺して構わないとの事だ」


それを聞いた村人が反論の声をあげるが、一切の聞く耳を持たず、騎士達は拘束していく


「『氷樹』」


私は村人を拘束しようとする騎士達に魔法を放つ

私が最も得意とする氷の魔法

『氷樹』は1人目の騎士に当たると、大きな氷の樹となる

育った氷樹から更に幾つもの枝が騎士達に伸びていき、刺し貫く

更に増える氷樹がまた枝を伸ばし貫いていく


「あの女を殺せ!」


ようやく私が魔法を使った者だと判断した隊長らしき騎士がそう声を張り上げる


「あなた達は私の後ろに移動してくれます?直ぐに終わらせますわ」

「あ、ありがてぇ!」


村人に声をかけ、続々と私の後ろに避難してくる


「ちっ!逃がすな!」

「「「『火炎球』!!」」」


騎士達が声を揃えて魔法を放ってくる


「『氷壁』」


騎士達の魔法は氷の壁を突破する事はなかった

それでも尚魔法を飛ばし続ける騎士達に、私はそろそろ飽きてきた

止めの魔法を放とうとした時、それは起こった


一瞬にして魔法は止まり、全ての者が動く事がなくなった

私も…


息をする事も難しい…


「…な…ん…ですの?」


そう口にするも、私は似た者を知っている…かつて体験したグレアントの殺気…

でも…これはレベルが違う…いや、次元が違う…

グレアントの殺気の中でも問題なく動ける様になった私ですら身動きがとれない程の死の気配…


そこに存在する事を否定する様な…生きている事を否定する様な…存在そのものを否定する様な殺気…


逃げなければいけない…

頭では理解出来ても体が動かない…


その時、ふと頭上に違和感を感じた

視線を上げればそこに何かがいた

人なのか…人ではないのか…分からない…けれども、そこに何かがいる


それが近づいてくる

それだけで嫌悪感が溢れだす

その何かは、分からないにも関わらず、本能で嫌悪感を抱く


「******」


理解出来ない音が響いた

何となく…そう、何となくではあるが、笑っている様に感じた

他者を見下し嘲笑う…嘲笑の音が響き渡る


ふと、嘲笑は止まる

上空に漂ったままの何かの目の前にとてつもない光が集まっていく

魔力だと思ったけれど、魔力ではない何かが周囲を漂う

全てが謎にも関わらず、私にはその集まる力に恐怖を抱く…

とてつもない力が一点に集まり、何かはまた嘲笑の音を響かせる




そして…視界は一瞬の閃光と共に、真っ暗な闇の中に捕らわれた



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