過去・5*闇の大精霊
「稚輪ちゃん!」
「はい!『大地の怒り』」
アースドラゴンを左右から石の壁が押し潰さんと迫る
だがアースドラゴンはそれを飛んで避けると、空中から伊波さんに向かって極大のブレスを吐く
「『聖母の盾』」
だがそれを防ぐ様に高嶺さんによって生み出された結界が伊波さんを守る
だが結界に亀裂がはしる
「このままでは結界が持ちません!注意を逸らして下さい!」
「任せとけっ!『空中歩行』からの~硬質化!」
紅條が風の魔法で空中を走りドラゴンへと迫る
ドラゴンは紅條に気づくのが少し遅れたのか紅條の拳を腹にうける
だが止めをさす威力はなく、鱗を数枚破壊しただけだった
「稚輪ちゃん、まずは羽を壊すわよ!毒槍の雨!」
「はい!『雷撃の弓』」
「サポートします!『増魔の陣』」
ドラゴンの上に展開された伊波さんの魔方陣が高嶺さんの魔法により更に輝きを増す
七宮さんの体から空中に放たれた毒は数100の槍の形をなしていく
だがドラゴンはそのままやられる事はなかった
上空の異変に気づき逃げ出そうと動き出した
「させない!重力操作!」
逃げ出そうとしたドラゴンに高嶺さんの重力操作によって10倍の重力がドラゴンへと襲いかかる
一瞬動きを止めたドラゴンだったが直ぐに動き始めようとした
だが、その一瞬で良かった
上空から降り注ぐ毒の槍と雷の矢による凄まじい攻撃がドラゴンを襲う
七宮さんの言葉通り羽を壊す事には成功していた
ドラゴンの両翼にはいくつもの穴が空いており、ドラゴンの背中はかなり血が流れておりダメージは確実に通っている
「さて、俺の出番だな。硬質化!」
「仕方ありませんね。『筋力増強』」
「サンキュー!」
ダメージを負ったドラゴンに、紅條が接近して心臓に向かってその
鉤爪を射し込んだ
この鉤爪は伊波さんによって作られた紅條の武器だ
更にこの鉤爪は紅條の能力と同化する事が出来る
その紅條の鉤爪はドラゴンの心臓を貫いた
流石にドラゴンも心臓を貫かれては生きている事は出来なかった
「やっぱ強ぇな」
「うん、流石はドラゴンだよね」
「はい、私も疲れました」
「そうよね…狂羅君以外は」
そう、僕は皆を影から見ていた
その理由を知る為に少し遡る事にしよう
*****
「はい、これで全員分の武器が揃ったね」
次の日の朝、魔力の回復した伊波さんによって紅條と高嶺さんの武器が完成した
紅條には紅條の能力と同化出来る鉤爪
高嶺さんには綺麗な宝石の付いた杖
勿論ただの杖ではなく、魔法の詠唱時間を短縮し効果を上げる杖だ
因みに伊波さん自身は杖と細剣を持ってる
僕達はエミリアさんの見送りをうけ、外へ出た
「結構賑やかだね」
「はい。外に出たのは初めてですけど、外は普通の町なんですね」
「そうね。さぁ早く冒険者ギルドへ行きましょ」
「そうだぜ、冒険者ギルドだぞ!?なぁ狂羅?」
「うん、楽しみだね」
僕もやっぱり冒険者ギルドって言葉には少しテンションがあがる
「そうゆう所は狂羅君も男の子なんだね」
「う、うん」
僕達は目的の冒険者ギルドにつくとドラゴン種の情報を集めた
するとドラゴン種の集まる山があるとの情報を得たのでその山に向かった
「さて、作戦会議をしましょう」
「作戦会議?」
「えぇ。私達は確かに強いわ。それでも相手はこの世界の最強種の一角よ。無策で勝てる相手じゃないわ」
「そうだよね…」
「私達の中での最高戦力は黒志さんです。黒志さんを中心に作戦を考えましょう」
「悔しいがそうするしかねぇな」
「じゃあ僕が1人で相手しようか?」
「「「「え?」」」」
「実験の中で既に戦った事があるし、1人でも大丈夫だよ?」
「マジかよ…」
「うん」
「参考までにどの様にして戦ったのですか?」
「身体強化を行って、後は首を全力で蹴ったら死んだよ」
「参考にはならないわね。仕方ないわ、少し狂羅君には別行動をしてもらいましょう」
「え?どうゆう事ですか?」
「正直言って狂羅君の戦闘能力は私達と離れすぎてるのよ。私達と一緒に戦うには狂羅君頼みになることが多くなるわ。それだと私達の成長にはならないと思うの」
「つまり黒志さんを抜いた4人でドラゴンと戦うと言う事ですか?」
「そうゆう事。でも念の為に最初は狂羅君がいつでも私達を助けられる様にスタンバイしていて欲しいの。もしも私達でドラゴンを倒せる様なら別れた方が効率が良いわ」
「分かりました」
そして冒頭に戻る訳だ
「どうですか?」
僕は4人の元に近づいて声をかけた
「連戦が無理って程じゃねぇな」
「これなら大丈夫だと思う」
「はい、少し魔力を消耗していますが、私も大丈夫だと思います」
「そうね、皆の言う通り大丈夫よ。だから狂羅君は心配しなくても良いわよ」
確かにさっきの戦闘を見る限りでは状況を冷静に判断し指示を出す七宮さん
物理的な攻撃力が高く危険な事でも自ら進んで行う紅條
多彩な高威力の魔法を放ち相手に有効な魔法を放つ伊波さん
皆を守る盾となり力を上げる事の出来る高嶺さん
4人はとてもバランスが良い
「そうですか、分かりました」
「でも、私達が強くなれるかどうかは狂羅君の腕にかかってるんだから、頼んだわよ」
「はい。それでは行ってきます」
僕はその場から離れる
僕達は皆魔力変換を行える
つまりドラゴンを倒せば倒す程強くなれる
(俺達を呼んでいるぞ)
(分かってるよ)
そう、この山に入った時から聞こえてくる声がある
はっきりとは聞こえないけど、何かが僕を呼んでいる
その声は正確に聞き取る事は出来ないが確かに僕を呼んでいる
(おに………時……した)
山の奥へと向かう程に聞き取りやすくなってくる
だから確信している
僕を呼ぶ何かはこの先にいる
僕は木々を走り抜け、山頂に向けて登っていく
(そこ………って………さい)
僕は声がしたので立ち止まる
そこに入ってって聞こえた気がする
辺りを見回してみると洞窟の入り口がある
(異様な魔力だな)
(だね…)
(だが…)
(うん。優しい魔力)
洞窟内に漂う魔力は奥に行くほどに強くなる
その魔力は僕を包み込む様に、優しい魔力…まるで抱き締められているかの様に…
光届かぬ暗い暗い洞窟の中、僕は魔力を頼りに進んでいく
魔力を辿り奥へと進む
幾重にも別れた道を魔力を辿り突き進む
「綺麗…」
魔力を辿り、最奥の間にてそれはあった
その空間の中央に漆黒の大剣が突き刺さっている
この暗闇の中、何故僕はそれを認識出来たのか?
それは漆黒の光を発していたからだ
周囲の暗闇よりも、より深く、より暗く、何者にも染められない黒…
「時が来ました」
暗闇の中に突如響いた声
それは徐々に姿を見せた
漆黒の大剣の直ぐ側、淡い光が形を成していく
それは頭を下げたままの女の子となった
「ユリ…ア?」
かつて僕が殺した少女…ユリアにそっくりな女の子だった
「それは少し違います、お兄様。私は確かにユリア様を基礎として形成されております。しかし私とユリア様は完全に別の個体として存在しております」
「じゃあユリアじゃないの?」
「はい」
「じゃあユリアはどうなったの?」
「ユリア様は私達の母となりて形を持たない存在となりました」
「え?」
「ユリア様は体を持ちませんが、確かに存在しております」
「う~ん、どうゆうこと?」
「申し訳ありませんが、その様なものだと認識して下さい。ですがユリア様は確かに存在しております。ですので安心して下さいとの伝言を預かりました」
ユリアがどうなったかは分からない
でも安心してって言ってくれている
ユリアが無事ならそれでいい
「それで君は誰なの?」
「申し遅れました。私は闇の大精霊ヘルウェルと申します。お兄様がユリア様と交わされた約束に従いお兄様の元に参上いたしました」
「ありがとう。ユリアにもありがとうって言ってもらえる?」
「申し訳ありませんがユリア様にお伝えすることは出来ません」
「そうなんだ…。えっと、ヘルウェルさん、これから僕はどうすれば良いのかな?」
「そ、そう…ですね…」
急にヘルウェルさんは頬を赤らめた
どうしたのかと声をかけても返事はなく、僕が近づいて様子を確認しようとしたならば更に挙動不審になる
「大丈夫?」
「は、はい」
彼女の顔を覗き見てみると、僕の顔を見て瞳を泳がせている
今は彼女の纏う光によってこの空間が明るくなっているから良く見える
美しい…
そう思った
綺麗な黒い瞳と髪が彼女の美しさを際立たせ、彼女の纏う雰囲気は神秘的な何かを感じさせる
そんな彼女が頬を赤らめているのを見て僕も恥ずかしくなった
「じ、実はですね…契約にはですね…えっと…その………くっ、口、口づけをしないとなりません!」
「ふぇっ?………えぇ~!?」
だから彼女は頬を赤らめていたんだ
そりゃ僕だって今ものすごく頬に熱を感じてる
「や、やっぱり私では駄目でしょうか?」
少し潤んだ瞳で見つめられたならば、僕には彼女の言葉を否定するしかなかった
「ち、違うよ!そんな事はないんだけど…、やっぱり恥ずかしいし…。そ、そうだよ!ヘルウェルさんは嫌じゃないの?」
「私はお兄様と出会ったその時には、私はお兄様を愛してしまいました」
「えっ!?」
「わ、私はお兄様を愛しておりますので嫌だなんて事はありません。寧ろ私にとっては…その…嬉しい事です」
僕は思わず彼女から目を逸らしてしまった
恥ずかしさが凄かったからだ
「お気に障りましたか?」
「違うんだけど、やっぱり恥ずかしくて…。契約ってそうしないと駄目なの?」
「はい、申し訳ありません」
僕は正直言って嬉しい
こんなに綺麗な人とキスして力が貰えるならそれはとても良いことばかり…
男だったらすっごい嫌だけど、もう少し気持ち的には楽だったんだろうな…
そんな事を思いながら僕は覚悟を決めてヘルウェルさんの肩に手をかけ………ようとして通り抜けた
「えっ!?」
「も、申し訳ありません!契約をした後に魔力を貰い私達精霊は実体を持つことが出来るのです」
「つまりキスをしたらヘルウェルさんは実体を持つことが出来るって事?」
「はい、その通りです」
なんだ、僕の勘違いだった訳だ
実体がないなら何もしてない様なもんだし
「じゃあいくよ?」
「は、はい!」
ヘルウェルさんが目を閉じ僕を待ってる
き、緊張する…なんせ初めてだし…
僕は彼女のその可憐な唇にキスをする
実体を持たない彼女の唇が徐々に実体を持っていく
僕は驚いて離れようとしたけど、僕の首の後ろにあった彼女の腕がそうさせてはくれなかった
しばらくの間、僕は彼女の唇の柔らかさ…女の子特有の甘い匂いに支配されていた
だが、その甘い時間は彼女が自らの所業に気づいた事で唐突に終わりを告げた
「も、申し訳ありません!」
「う、うん」
彼女の頬はもう限界の様に真っ赤になっていた
僕とは視線を合わせない様に必死になっている姿がとても可愛い
僕だってかなり動揺してるけど、僕より動揺しているヘルウェルさんがいたから僕は少し落ち着いた
取り敢えずヘルウェルさんが落ち着くのを待った後、話を進める
僕は取り敢えずこの漆黒の大剣はなんなのか聞いてみた
「これは世の絶望が形を成したもの…名を『終焉の剣』と言います」
「『終焉の剣』………」
「この世界に…全ての命に………そして絶望に終焉をもたらす剣と伝えられております」
「なんだか恐ろしい剣だね」
「はい。ですが今この世界に生きる者の中で扱う事が出来る者はいません」
「そうなんだ。まぁ良かったかもね。そんな危険な剣なら世界が壊れちゃいそうだしね」
「…はい」
「じゃあ外に出ようよ。ここ暗いしさ」
「お待ち下さい」
僕がそう言って来た道を帰ろうと振り返ったその背に待ったがかかる
「ん?どうしたの?」
「お兄様が絶望に支配された時、この剣はお兄様の力となります。この剣を扱えるのは世界にただ一人…お兄様だけなのです」
「………どうゆうこと?」
「これは世に放たれてはならない物なのです。ですのでどうか忘れないで下さい。お兄様の側には私がいます。他にも沢山の素敵な方がいます。どうか我を忘れずに、私達を感じて下さい」
「何の事を言ってるの?」
でも彼女は何も答える事はなく、ただただ頭を下げ続けていた
彼女は何かに耐える様に体を震わせていて、僕に必死に訴えていた
僕は彼女を抱き締めた
一瞬ピクリと反応する彼女を安心する様に、ただ彼女を抱き締めた
「僕には良く分からないけど、ヘルウェルさんの言う通りにする」
「お兄様…」
「だから泣かないで。ほら外に出ようよ」
ヘルウェルさんの手を引っ張りながら僕は洞窟の外へと向かって歩いていった
暗い道の中、しばらく歩いて僕達は出口に辿り着いた
僕達は出口の直ぐ側にある岩に座り、少し休憩することにした
「お兄様は現在私と契約した事により、魔力が全て闇の魔力へと変換されました」
「そうなの?火や水みたいに何種類も使う事は出来ないの?」
「はい。闇の属性は他の属性とは交わる事のない属性です」
「まぁ別に良いけどね。元々余り使わないし」
「それは良かったです。それでは闇の属性の知識をお渡ししますので、私の頭に手をのせて頂けますか?」
僕は言われた通りにヘルウェルさんの頭に手をのせる
すると莫大な量の知識が僕の頭の中に流れ込んでくる
闇の魔力、属性、魔法…様々な知識が頭の中に入ってくると共に、僕は理解した
そして僕はその万能さや強力な力に驚愕した
これに勝てる者なんていないんじゃないかと思った
「凄いね…」
「はい」
「これさえあればあいつに勝てる!ちょっと実戦しておきたいからドラゴン狩りに行くよ!」
「はい」
僕はその後、3体のドラゴンを狩った
基本的には僕には魔法は必要なかった
けれど、闇魔法は使える
その万能さがとても凄くて、更には決定打に長ける
相手の息の根を止める方法が山の様にあり、応用も含めると出来ないことはないかも知れない
僕は闇魔法『常闇の箱』にてドラゴンの死体から心臓だけを取りだし異空間に移動させる
魔力の大半は心臓にあるから体は邪魔なだけ
勿論体にも多少の魔力はあるが、心臓が一番重要なのだ
「それにしてもヘルウェルさんは強いね」
「ありがとうございます。お兄様、そろそろ私の事はヘルウェルと呼んで下さい」
「でもヘルウェルさんだって僕の事をお兄様って変な呼び方してるじゃん!」
「それとこれとは話が違います」
「もぅ…本当に頑固だ…。分かったよヘルウェル」
「はい!」
「じゃあさっき話した通り、皆の所に行くからね?」
ドラゴンを狩った後、1度僕は皆の元に戻る事にした
既に時は夕方
僕は闇魔法の1つ『深淵の瞳』によって皆の居場所を探す
『深淵の瞳』とは僕の魔力を影へと広げていき、影を使って情報を集める魔法だ
僕の魔力は元々多く、更にヘルウェルと契約した事により魔力は増大している
今なら国1つ分くらいの広さなら僕の魔力は行き渡ると思う
影さえあればこの魔法はとても使える
会話なども意識したら聞くことが出来る
ここで更に闇魔法『暗転』を使う
『暗転』とは転移より少しだけ使いにくくなった魔法で、影や日光に当たらない場所の様に暗い場所に移動出来る魔法である
『深淵の瞳』と『暗転』は相性抜群の魔法だった
「うおっ!?って、狂羅かよ…。一瞬びびっちまったぜ」
「ごめん、ごめん」
僕が急に紅條の影から現れた事により、紅條が驚いてしまったのは仕方がない
僕の背後にヘルウェルが現れる
「その子は?」
「うん、説明するよ。ほら、自己紹介して」
「初めまして、私は闇の大精霊ヘルウェルと申します」
ヘルウェルはドレスの端を掴み優雅に御辞儀する
「初めまして、私は伊波稚輪です」
「初めまして、私は高嶺凛です」
「あたしは七宮舞よ。宜しくね」
「俺は相倉紅條だ。それで、何があったんだ?」
「じゃあちょっと長くなるけど説明するね。ーーー」
僕は皆と別れた後の洞窟であった事を話す
「要するにだ、狂羅がまた強くなったって事だろ?狂羅ばっかりずるいぜ全く…」
「ははっ、まぁそうゆう事かな」
「ヘルウェルさんのおかげで、また勝率が上がりましたね」
「凛ちゃんの言う通りなんだけど、狂羅君頼みなのは変わらないね…」
「稚輪ちゃんが言う通り、今あたし達は狂羅君の力を頼りにしているわ。でもこのままじゃ駄目なの。あたし達が強くなる必要があるわ」
「そうですね。その為にもまずはドラゴンをもっと多く倒さないといけません」
「だな。狂羅とヘルウェルさんはどうするんだ?俺達はまだまだドラゴンを倒すつもりだが」
僕はどうすれば良いのか考えた
本当なら新しい力が手に入った今、その力を我が物にするために特訓するべきなのだろうが、僕はヘルウェルのおかげでこの力の使い方も分かっている
「正直言えば僕には分からないんです。当初の予定通りに別々で行動した方が良いのか、それとも一緒にドラゴンを倒した方が良いのか…」
「そうね…。狂羅君も一緒に来る?戦闘はあたし達でやるとして、…でもそれじゃあ狂羅君がいる意味がなくなっちゃうわね」
「取り敢えず予定通りに別々で良いんじゃねぇか?今のペースだと俺達はドラゴンを多く倒す事は出来ないしよ。いくら魔力を変換する限度があると言っても、俺達じゃ1人1体も厳しいしな」
「そうね。申し訳ないけど狂羅君にはドラゴンをたくさん狩ってもらわないと駄目そうね。狂羅君、お願い出来る?」
「分かりました」
「じゃあ宜しくね。日が沈む前には町の入り口に戻りましょう」
「分かりました。それじゃあ行ってきます」
ヘルウェルもお辞儀をした後、僕達は『暗転』でその場を移動した
取り敢えず少し離れた場所に出る
「時間もあまりないし、さっさとドラゴンを見つけないとね」
「はい。私もお兄様と離れ、ドラゴンを狩った方が宜しいのでしょうか?」
「う~ん………いや、大丈夫だよ」
「そうですか」
「うん。じゃあ行くよ?」
「はい」
『深淵の瞳』と『暗転』でドラゴンの居場所を探る
少し離れた場所にドラゴンの反応を見つける
ヘルウェルに見つけた事を伝えて移動する
ドラゴンの影に移動し、影の中から首を思いきり蹴る
ドラゴンは何も出来ず、反応することすら出来ずに首の骨が折れ死んでしまった
「………」
「どうかしましたか?」
「この力は本当に殺す事に特化しているなと思ってさ」
僕は本当にそう感じた
今の様に影から攻撃されれば避けようがないし、知ることも出来ない
暗殺………そんな言葉がぴったりな魔法だ
ヘルウェルの返答がないことを不思議に思って見てみると、顔を伏せていた
何かを悲しんでいるような表情…
「ご、ごめん!そんなつもりで言った訳じゃないんだ。ただ本当に凄い力だなって思っただけで…」
「いえ、お気になさらないで下さい。お兄様の仰る通り、闇の属性とは殺す事や苦しめる事に特化しております。ですが何事も使い手次第で変わるのではありませんか?」
「そうだよね。僕が間違った使い方をしなければ問題ないもんね。ごめんね、ヘルウェル」
「いえ、私は大丈夫ですのでお気になさらないで下さい。さぁお兄様、次のドラゴンを倒しに行きましょう」
そう言って歩くヘルウェルの背中がこの話しは終わりだと告げていた
何かを隠すかの様にヘルウェルは僕から遠ざかっていった
「ふぅ、案外見つからないもんだね」
「そうですね。この辺りのドラゴンの大多数を討伐してしまった可能性がありますね」
「だとするとここから離れた場所に行かないといけないよね?取り敢えず皆の元に戻ろっか。確か待ち合わせは町の門の所で良かったよね?」
「はい、町の入り口と言っておられましたので、間違いないと思われます」
「じゃあ行こっか」
「はい」
あれからドラゴンを探し続けたが近くに反応はなく、皆と別れた後に手に入れたドラゴンの心臓は4つ
元々持っていた3つと合わせて、合計7つの心臓を手に入れた
取り敢えず1人1つあることに安心する
『暗転』を使いヘルウェルと共に町の入り口の側に移動する
どうやら僕達の方が早かったらしい
木の根元に腰かけ待つことにした
その時不意にヘルウェルの様な精霊は何を食べるのか気になった
食べてはいけないものもあるかも知れないし、聞いてみる事にした
「ねぇ、聞いてもいい?」
「はい。どの様な事でしょうか?」
「ふと思ったんだけど、精霊って何を食べてるの?」
「そうですね………お兄様は精霊の事をどの様に理解しておりますか?」
「ごめん、全く知らないや」
「ふふっ。それでは私が簡単に精霊について説明させて頂きます。まず精霊には大きく2つの種類があります。実体を持つことの出来る私達精霊王、それから実体を持つことの出来ない精霊の2種類です。私達精霊王が人と契約することはありません。例外はありますが、基本的にはないと思って下さい」
「じゃあ精霊王以外の精霊なら契約出来るの?」
「はい、その通りです。精霊とは四元素と呼ばれる火、水、土、風の他に雷、氷の精霊が大多数を占めます。普通は、以上の6種類の精霊と契約することが出来ます。精霊とは自らの体を魔力と元素によって構築されていますので、契約者の魔法の威力の底上げ等の手伝いをします」
「って事は精霊は僕達と契約する為にいるの?」
「それは違います。精霊は大気中の使用済み魔力を純粋な魔力へと変換する為に存在します」
「使用済みの魔力?」
「はい。魔法を使えば術者の魔力が大気中に残ります。精霊は周囲の使われ汚れた魔力を純粋な魔力へと変換する事が出来ます」
「そうなんだ。ヘルウェルもするの?」
「いいえ、私達王の仕事は精霊の管理ですので、私達が行うことはありません」
「そうなんだ」
「話を戻しますが、私達精霊は魔力をエネルギー源としております。ですので食事は必要ありません」
「へぇ~」
「契約者を持った精霊は、契約者の魔力をエネルギー源とすることも可能になります。その場合、契約者も持つ精霊は存在が昇華し、精霊としての格が少し上がります」
「どうゆうこと?」
「精霊自信の魔法威力があがるのです」
「じゃあ精霊も契約したら得はあるんだ」
話を聞いていると精霊も契約者も得があって、一石二鳥だった
でもヘルウェルの表情は苦笑していた
どうしたのか聞いてみる
「契約者を持ってしまうと呼び出しに応じなくてはいけませんので、正直面倒の方が多いのです」
「あぁ…」
「ふふっ」
「ヘルウェルは…その…大丈夫?」
「なんの事でしょう?」
「その、面倒なんじゃないかなって」
「それは違います。私は好きでお兄様の側にいるのです。ですのでお気になさらないで下さい」
そう笑顔を向けられて、かなり照れくさくなる
そんな時視界の端に人影が見えた
木の裏に数人の人影
少し『終焉の瞳』で確認すると紅條達だった
近づいていくと皆も木の裏から出てきた
「何してるの?」
「いや、何とも言えない雰囲気だったから邪魔しちゃ悪いかなってよ」
「何言ってるのさ。僕達待ってたんだからね?」
「ごめんごめん」
紅條とそんな話をしながら町へと戻る
ヘルウェルは女の子3人に捕まってるようで、少し後ろで色々聞かれている
「あっ!」
「どうしたの?」
「金!」
「金?」
「だから金を持ってない俺達は何処に泊まるんだよ?」
「あっ………どうしよう?」
「とりあえず、皆に相談だな」
「だね」
僕達は後ろを歩いていた女の子達に状況を説明する
「そんな事だろうと思って鱗を剥がしてるわ」
「マジっすか!」
「えぇ本当よ」
「舞さん流石っす!」
問題はあっさりと解決した
本当に七宮さんは頼りになると思う
「売れるとは思うのだけど、何処で売るかが問題ね」
「冒険者ギルドで売れると思いますけど?」
「そうよね。でも防具屋さんでも売れるとは思わない?」
「まぁそうですけど、別に冒険者ギルドでも良いんじゃないですか?」
「面倒は避けたいじゃない?何があるか分からないしね」
確かに僕達の存在は色々と面倒だ
何処から国王に伝えられ、どの様に伝えられるかも分からない
その情報が、僕達を助ける為に1人頑張っているエミリアの不利にならないようにしたい
後々僕達の首を絞める事になるかも知れないし
僕の考えも話す
「狂羅君の言う通りだとあたしも考えてるわ。行くのは1人、尚且つ目立たない格好で行くしかないようね」
「そうした方が良いと思います」
「誰が良いのかしら…?」
「宜しいでしょうか?」
僕と七宮さんが話していると、ヘルウェルから声が上がった
因みに今後の行動について話をするのは僕と舞さんだ
他の3人は参加はせず、話を聞くだけなのだ
紅條は考えるのが苦手で、伊波さんと高嶺さんは僕と七宮さんに任せるのが一番良いと言ってくれた
「どうしたの?」
「はい。皆さんが行動することに問題があるのでしたら、私が動きますが?」
「そっか、ヘルウェルなら大丈夫だもんね」
「本当に良いのかしら?ヘルウェルさんに迷惑をかけちゃうけど」
「構いません。私もお兄様の役にたちたいのです」
「そう言う事ならお願いするわ」
舞さんが素材を取りだしヘルウェルに渡す
「お兄様、それでは行って参ります」
「うん、気を付けてね」
「はい、ご心配ありがとうございます」
ヘルウェルを送り出してしばらく待つことにした
結果だけ言えば何も問題は起こらなかった
僕達はヘルウェルから受け取った金貨5枚を手に、僕達は宿に向かった
「狂羅君、また後で部屋にお邪魔するわ」
「はい」
部屋は3部屋とった
僕と紅條、七宮さんとヘルウェル、伊波さんと高嶺さんに別れた
食事を直ぐに持ってくる様に頼んでいるので、食事をした後僕の部屋で作戦会議である
各々の部屋に別れた後食事を頂く
「この肉うめぇな!」
「うん、何のお肉だろ?」
「牛だろ?」
「牛っているの?」
「さぁ?」
「もう…本当適当なんだから」
「まぁ気にすんなって」
はぁ…と1つ溜息をついたところで僕達は女性陣を待つことにした
しばらくすると扉をノックする音が聞こえて中に入るように言う
女性陣全員の到着だ
「少し遅れたわね。早速始めようかしら」
「はい」
皆が各々好きな位置に座る
僕と七宮さんはテーブルを挟んで向かい合い、僕の後ろにはヘルウェルが立っている
2つあるベッドには伊波さんと高嶺さん、それと紅條が座って耳を傾ける
「じゃあ今日の成果から終わらせましょうか」
「僕達は7つです」
「そう。私達の3つを含めて1人2つね。早速魔力変換を各自始めましょう」
テーブルの上に広げたドラゴンの心臓を皆に配る
既に様々な実験をしてきた僕達は躊躇うことなく、心臓を体内に取り込んだ
「………皆無事完了のようね」
七宮さんが確認をとって話を再開する
「狂羅君は現状をどう見ているのかしら?」
「そうですね。このままでは1週間が限界かと思います」
「ふふっ、やっぱり狂羅君は気づいてたのね」
そう、問題はドラゴンの少なさだ
元々ドラゴンは珍しい種族だ
強者であるドラゴンは種の存続の為に多く産む必要はない
その為数が少ないのである
1年もドラゴンの心臓を食べ続けるのならば軽く1500は越える
さて、この町付近のドラゴン達の数が1500いるかどうかだが、結論を言えばいない
「それで、何か策はあるかしら?」
「正直に言えば、ありません。もう少し情報がないと動く事も出来ないですし」
「そうよね…」
僕達が悩んでいると、紅條達も何か話しているのが視界に映った
「それで、あの2人は何を話してるんだ?」
「分からないんですか?これだから変態は困るんです」
「わ、私も分からないんだけど…」
「稚輪さんは違いますよ!」
「まぁどうでも良いけどよ、結局なんなんだ?」
「ドラゴンが少ないんです。この町付近の山に住んでいるドラゴンだと、会話から察するに1週間もするとドラゴンはいなくなる様です」
「マジか…」
3人も状況を理解したらしい
さて、打開策を本気で考えねばならない
何処にドラゴンがいるのかも分からない以上情報を集めるしかないのだが…
「仕方ないわね。明日からは野宿ね」
「そうですね、移動しながら探すしかありませんしね」
「そう言う事だから、皆明日から野宿になるわ」
4人が頷いたのを確認してそれぞれの部屋へと帰って寝ることにした




