表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最凶の存在  作者: 翔さん
第弐章*過去編
61/68

過去・4*希望の光は今ここに

第7の実験は問題なく終わる事が出来た

全てのデーモンを一身に宿し、僕は第7の実験を終えた


「次の実験について説明をするわね。第8の実験はより強力な魔物と戦ってもらう事になるわ」

「また広場で戦うの?」

「いいえ、ついてきて頂戴」

「うん」


エミリアさんにそう言われて僕は研究室を出た

しばらく歩いているとエミリアさんが大きな扉の前で止まり、扉の中へと入る

中には知らない子供達がたくさんいて、驚いた


「もしかして…」

「えぇそうよ。狂羅君以外にも実験されている子達はいるわ。1人1人実験内容は異なるけどね」

「そう…なんだ…」


確かにこの広い研究所で僕とエミリアさんだけだと広すぎる

だからと言って僕と同じ様に実験されている人達がこんなにいたなんて思ってなかった

ううん、考えている暇がなかったんだ


「第8の実験で戦う魔物はこの世界でも上位の魔物なの。狂羅君がいくら強いとはいえ、1人で倒せる物ではないわ。ここにいる子供達は皆第8の実験を受ける子達よ。狂羅君を含めて100人の子供達を5人一組に分けて魔物を討伐する事が第8の実験内容よ」


僕はそれを聞いてとても嬉しかった

ここにいる人達は皆僕と同じくらいの年齢だし、この世界で初めての友達を作るチャンスかも知れないから


「この実験の目的は戦闘能力の向上の他にもう1つ目的があるの」

「え?」

「狂羅君が仲良くなった子供達を人質にとることが実験のもう1つの目的よ」

「そんな…」

「狂羅君も含めてここにいる100人は既にかなり強力な力をもっているわ。それでも国王あいつには勝てないけど一般の兵士では止める事は出来ないの。狂羅君が反乱を起こした場合の人質として使われる事になるのよ。だから情を持っては駄目よ。狂羅君にとって悪い事しかならないわ。勿論外の子供達にとっても同じ事が言えるけれどね」

「そうなんだ…」


確かにそれは有効な手段なり得るだろう

正直ショックだ

仲良くなればなるほど僕が国王を殺す事が出来ない状況になってしまう


良く見ると既に5人で固まっている人達がいた


「もう作り始めてるんだね」

「そうね。狂羅君も行ってきて良いわよ。選んだら私の研究室にもどって来てくれたら良いわ。選んだ子達のも私の研究室に連れてきて頂戴」

「うん」


エミリアさんが大部屋から出ていくのを見送る

もう既に何組かは大部屋から出ていっている


(どんな人が良いんだろ?)

(エミリアの言ってた通り余り気にせず選んだ方が良いんじゃないか?)

(でもやっぱり仲良くはしたいよ)

(そうか)


「ねぇ、貴方はもう組んでいる人はいる?」


そう話しかれられて横を見る

そこには僕と同じくらいの背丈の女の子がいた


「えっと、まだだけど」

「なら良かった。私と組まない?」

「うん、別に良いけど」

「ありがとう。私は伊波知輪いなみちわ、宜しくね」

「僕は黒志狂羅、宜しく」


黒い髪をポニーテールで纏めた可愛らしい容姿の女の子

胸はまだ発展途上だけどスタイルは良く、挨拶と共に差し出された握手を求める手を握る事が少し恥ずかしかった


「宜しく、狂羅君。後3人だけどどうしよっか?」

「僕は誰でも良いよ。でも女の子ばっかりはちょっと嫌かも。せめて1人は男の子が良いな」

「あはは、そうだよね。じゃあ私に任せてくれる?」

「うん」


僕が頷いたのを見ると彼女は歩き始めた

えっと、これはついていった方が良いんだろうか?

いや、でも僕が後ろからついて行ってると気持ち悪がられるかも知れないし

う~ん、どうしよう?


と、そんな事を考えている内に彼女の姿が遠くなった

まぁここで待っておくのが一番良いよね


少し待っている事にした

既に半数以上は大部屋から退出していて、少し広くなった気がする

ふと伊波稚輪さんを探してみると見失ってしまった


「なぁあんたは1人なのか?」

「今はだけどね」


僕は後ろから来ていた気配を感じていたから直ぐに答える


「おっ、なら俺と組まねぇか?実は俺もちょっと出遅れてしまってな、どうしたものかと思っていた所だ」

「えっと、僕既に1人組んでいる子がいるんだ」

「でも後、3人いるんだろ?なら大丈夫じゃねぇか」

「それが、その子が今残りの3人を集めに行ったんだ」

「マジか…。まぁしゃあねぇな。えっと、あんた名前は?」

「黒志狂羅だけど、君は?」

「狂羅か、格好いい名前だな。俺は相倉紅條あいくらこうじょうってんだ。紅條って呼んでくれや」

「ありがとう。もしも3人来なかった場合、紅條に入ってもらっても良い?」

「うん?そりゃ嬉しいんだけどよ…まぁ最悪残った奴等で良いから気長に待つとするよ」


そう言って紅條は笑った

僕は紅條が入ってくれた方が嬉しいんだけど、それに紅條となら直ぐに仲良くなれそうだし


(それで良いのか?)

(うん。良いんだよ)

(辛くなるだけだぞ?)

(分かってるよ。それでもやっぱり僕は仲良くなりたいから)

(そうか)

(ごめんね)

(何故謝る?)

(きっと君にも迷惑かけちゃう)

(気にするな。俺はお前自身なのだから)

(ははっ、そうだね)


「狂羅く~ん!」

「あっ、伊波さん」


見ると女の子2人を連れてきていた


「ごめんね、2人は見つかったんだけど…男の子はちょっと話しづらくてさ」

「実はさっき僕に話しかけてくれた人がいるんだ。男の子なんだけど、その子で良いかな?」

「狂羅君も探してくれてたんだ。うん、良いよ」

「ありがとう、じゃあ呼んでくるよ」


僕は改めて紅條を探す

すると端の方で僕に手を振っている


「紅條、1人足りないんだ。僕と一緒に来てくれない?」

「見てたから分かっていたさ。それに他は女の子ばかり…これはハーレムって奴だよな!」

「いや、僕もいるんだけどね」

「そんな事些細な問題だ。さぁ行くぞ!ハーレムへ!」


そう言うことでハーレム?へと向かって歩いていく


「待たせてごめんね」

「良いよ。それでそっちの人が言ってた子?」

「うん」

「じゃあ自己紹介しようよ。じゃあ女の子チームからって事で。私は伊波稚輪いなみちわ宜しくね」

「私は高嶺凜たかみねりんです。宜しくお願いします」


一番小さい女の子だった

ツインテールに纏めた茶髪がとても似合っていて、とても礼儀正しい良い子だと思う

まぁ体も幼児体型なのは許してあげて欲しい

服はワンピースなのに右腕は包帯に巻かれており、手袋をしている


「最後にあたしだね。あたしの名前は七宮舞ななみやまいよ。宜しく」


どう見ても一番歳上の人だと思う

僕達の中だと一番落ち着いている様に見える

肩ほどで切り揃えた黒い髪が彼女に良く似合っていた


スタイルはかなり良く胸も大きい

お姉さんポジションが決定した瞬間だと思う


「いや~それにしても綺麗所が揃っていますな旦那」


だいたい紅條の性格が掴めた気がする…お調子者だ

でも確かに3人とも美人だ


「旦那って僕の事?そんな言い方止めてよ。僕は黒志狂羅こくしきょうら宜しくお願いします」

「それで俺は相倉紅條あいくらこうじょうだ。宜しくな」


そう言った紅條だけど、女の子の3人の反応がいまいちだ

紅條は顔はイケメンに入ると思う

短い髪も似合っている

それでも特に伊波さんと高嶺さんの反応は悪い


「狂羅君、ちょっとこっち来てくれる?」

「う、うん」


紅條1人を置いて、女の子達と少し離れた場所に移動した


「ねぇ狂羅君、本当にあれで良いの?正直言えば私反対なんだけど」

「私も反対です。黒志君は構いませんがあの男の子は苦手です」

「で、でもちょっとお調子者なだけだと思うよ?」

「狂羅君の言った通り思春期の男の子としては仕方ないと思うわよ」

「舞さんが言うなら別に良いけど…」

「私はやっぱり嫌です」

「凜は私が守ってあげるから」

「絶対に絶対ですからね?」

「えぇ」


どうやら纏まったみたい

それにしても第一印象だけでここまで嫌われるとは…紅條恐るべし


「じゃあ申し訳ないけど宜しくお願いします」

「うん」

「はい」

「えぇ」

「じゃあ5人集まった事だし、これからどうしよっか?」

「そう言えば私の担当の人が連れてくるように言っていましたが…」

「え?凜ちゃんの所も?」

「それは稚輪さんも同じと言う事ですか?」

「うん、私もあいつに言われた」

「私も言われたわよ」

「僕もです」


皆おんなじ事を言われてる

これは紅條も同じ事を言われてると推測できる

因みに紅條は放置されたままだ


「どう言った意図があるかは分かりませんが、向こうにもそれなりの事情があると思われます」

「そうね。例えば実験を成功させた者に報酬が出され、その為にここで人数を絞っておくとかね」

「はい。それでどうするかなのですが、もし特にこれと言った理由が無いのなら僕の所へ来てくれませんか?」

「それは良いんだけど…」

「何か理由があるのですか?」

「うん、理由はある。でもそれは来てもらった方が早いと思うんだ。口で説明するよりもあの人と話してもらった方が良いと思う」


僕がそう言うと彼女達は少し表情が固くなった

分かってる

誰も実験をする研究員を信用なんてしていないと思う

それよりも憎むのが普通だと思う

僕だってエミリアさんじゃなければきっと信用なんてしていなかったから


「お願いします、僕を信じてくれませんか?」

「まぁ、狂羅君がリーダーだから別に良いんだけどね」

「え?僕がリーダー?」

「当たり前じゃん」


当たり前なんだ…

納得いかないけど、納得するしかないと思う

七宮さんも高嶺さんも頷いてくれた


「ありがとう。じゃあ紅條にも伝えてくるよ」


その後、紅條に伝えて皆で僕の研究室へと向かう

そう言えば今まで気にならなかったけど、ここにあれだけの人数がいて今まで出会わなかったって結構凄い事かも知れない


僕の部屋の前に来る


「え?ここ何か違うくない?」

「私の部屋より豪華です」

「そうね…」

「お前だけズルいぞ狂羅!」


言われて初めて気づいた

僕の部屋は皆よりも豪華らしい

エミリアさんのおかげかな


「皆ゆっくりしててよ。もうすぐエミリアさん来ると思うから」


まぁ既に紅條は僕のベッドに横になってるけど


しばらくして扉の外からエミリアさんがやって来るのが分かる

エミリアさんが扉をあけた

皆警戒する様にエミリアさんを見る


「エミリアさん、ただいま」

「えぇ良かったわ、戻ってきてくれて」

「それはどうしてですか?」

「え?」


そう言ったのは七宮さんだった

エミリアさんも少し驚いている


「どうして狂羅君が戻って来たのを喜んでいるのかお聞きしているのです」

「そうね…。まず自己紹介しておくわ。私はエミリア・アイリス・レビィアム、貴女達の実験を受け持つ事になるわ。それで先程の質問だけれど、確かに私達研究者は実験毎の報酬があるわ。今回からは他の実験対象の人数が増えてその分報酬が追加されるわ。でもそれは私には関係ない事よ。私は狂羅君の実験をしないと駄目なの。私以外に狂羅君の実験をすることは出来ないわ。いえ、させる訳にはいかないの」

「報酬が関係ないのなら、理由は何ですか?」

「私には狂羅君に任せてしまう責任がある。全てを強要した責任が私にはある。狂羅君の行く末を見守る義務がある!」


他の4人は訳が分からなく、説明を求める様に僕を見る

でも分かってた事だ

僕が殺してしまった人達に報いる為に国王を殺そうとしている様に、エミリアさんは僕にそれを求めてしまっている事に責任を感じている


「貴女は七宮舞さんね」

「そうですけど、何か?」

「それから高嶺凜さんに伊波稚輪さん、それから相倉紅條君」

「「「………。」」」

「皆が非道な実験を生き残ってここまで来てくれた事に私は感謝してる。他の研究員ではなく、私の元に来てくれた事にとても感謝してるわ」


僕が皆を説得すると言った方法もある

でも今は違う

エミリアさんの話を聞いてちゃんとエミリアさんを信じて欲しいから

だからエミリアさんが皆に本心を伝える事を僕が妨げてはならない


「私と狂羅君の目的は国王を殺す事」

「「「「なっ!?」」」」

「そんな事は不可能です!」

「国王は正真正銘の化け物です!」

「私達が強くなったのは分かります」

「だがあいつには届かない!俺達がどれだけ頑張ってもあの化け物には勝てない」

「でも狂羅君は違うわ」


エミリアさんは僕を1度見て視線を戻す


「皆の実験過程の詳細、それから様々な能力の詳細を私は持ってる

。確かに貴女達は強い。国王はそれよりも遥かに強い正真正銘の化け物よ。でもだからこそ国王を殺さない事にはこの実験は止まらないの!私はこの実験を止めたい…それが今まで私が殺してしまった人達に報いる唯一の方法だから」


そう、この実験を止めるには国王を殺すしかない

才能があり、逆らう者は武力で支配し、それでも逆らう者には人質を使う

才能がないものは排除する


だからこそ国王を殺さないと終わらないのだ


「でも僕なら出来る。いや、僕が終わらせる」

「えぇ。皆に強要はしない。それに私が実験をしないって事は出来ないわ。だから私は貴女達にも実験を行う。それでも私はこの巡り合わせに感謝してる」

「どうゆう事ですか?」

「何の因果か…いえ、これは必然だったのかも知れないわ。世界が今私達に味方して国王を殺せとそう言っているわ。希望は今希望ではなくなり、確定した未来となって今ここにある」


エミリアさんが微笑んだ


「実験の中でも飛び抜けた能力の4人。その4人すらも一切寄せ付けない強さを持つ狂羅君。この5人なら国王にも届くかも知れない…いいえ、必ず届くわ」


そう言われて思わず皆を見る

皆もお互いの顔を見ている


「だからお願い!国王を殺す為に狂羅君に協力して下さい!」

「そ、そんな事言われてもな…」

「す、少し時間が欲しいです」

「分かってるわ。それからまず貴女達に言わないといけない事があるわ」

「何でしょうか?」

「貴女達の心臓には王の一声で爆発する爆弾が仕掛けられているわ。実験が終るまでには取り除く手段を見つけておくつもりよ。勿論断っても爆弾は取り除くわ」

「「「「嘘でしょ(だろ)!?」」」」

「残念ながら本当の事よ。全ての実験対象者は爆弾が埋め込まれているわ」


皆の表情が一気に暗くなる

いつでも殺す準備が相手にはあると教えられ、その相手に逆らえと言われているのだから


「時間はまだあるわ。次の実験迄に答えを用意してくれる?」


4人は頷いた

今は状況を整理するだけで頭がいっぱいだと思う


「それじゃあ第8の実験の説明をするわ。第8の実験はドラゴン種を倒しなさい」

「え?前と言ってた事が違うよ?」

「えぇ少し予定を変更するわ。狂羅君の選んだ子達のおかげよ。皆違った実験だけど魔力変換を行えるわ。ドラゴン種は魔力総量が他の魔物よりも多くその分強いわ。でもその強さも魔力も皆を強くする力となる。出来る限り多くのドラゴンの力を手に入れなさい」

「そんな事してバレないの?」

「狂羅君の場合、7年前から実験内容の変更、それと偽りの報告をしているから問題ないわ。それに既に4人の分も少し弄ったわ」


びっくりだよ

皆も驚いてる


「皆に教えてあげるわ。この世界には戦闘能力を目に見える数値として測る魔法があるの。国によってその魔法は少し弄られたりするけど、それはまぁ今は関係ないわ。その魔法は色々な呼び名があるのだけど、この国では"バトルサーチ"と呼ばれているわ」

「それで?」

「この"バトルサーチ"では魔力保有量や身体能力、知能や反射神経、更に戦闘経験等の様々な要素を含めて数値として教えてくれるの。だからこの魔法で出た結果が勝負を決めると言って過言ではないわ。国王の数値は2億2000万」


正直言ってその数値がどれ程の物かは分からない

皆も首をかしげている


「伊波稚輪さん、貴女は3200万」

「そう聞くと勝てる気がしないんですけど…」

「大丈夫よ」


伊波さんの表情が曇った

それに僕も聞く限りだと勝ち目はないと言ってる様に思う

それでもエミリアさんは笑顔だった


「高嶺凜さん、貴女は2800万」

「これでも私達が強い方なんですよね…」

「そうね」


高嶺さんも余り信じてない様に見える


「七宮舞さん、貴女は3800万」

「そうですか」


七宮さんも同じだった


「相倉紅條君、貴方は3500万」

「舞さんに負けた…」

「男の子なのにね~」


紅條も別の意味で落ち込んでる


「最後に狂羅君、狂羅君は1億2000万」

「「「「「え?」」」」」


1億2000万?

僕達は驚いた

確かにエミリアさんは僕だけ飛び抜けていると言っていたけど、それにしても4人と離れていると思った


「狂羅君はそう不思議ではないでしょ?狂羅君は他の誰よりも困難な実験の中で数十倍もの量をこなしてるのよ?いつも狂羅君は無理してね」

「で、でも」

「誇りなさい。狂羅君のしてきた事は全て狂羅君の力となっているわ。狂羅君に起きた奇跡の連続が国王を殺す刃となって光出している。他の4人もまだまだ数値をあげられるわ。まだ3年もあるのよ?」


希望の光が射し込んだ…そんな気がした

僕があの化け物にそれほど近づいていたなんて知らなかった


しっかり近づいてる

4人がお互いを見て頷いた


「俺達もあいつを殺すのを手伝うぜ」

「まだまだ私達では敵わない事は分かりましたが、エミリアさんの言う通り希望はあるように思えました」

「それに狂羅君がいれば勝てる気がするしね」

「私が役にたてるかどうかは分かりませんが、私も頑張ってみます」


そう言って僕を見る4人の顔がとても頼もしかった


「そう…頼んだのは私だけど本当に良いの?貴女達は死ぬかも知れないのよ?」

「はい、覚悟は決めました」

「まぁそう言うこった」

「そうそう」

「そう言う事です」

「………ありがとう」


エミリアさんは複雑な表情をしていた

皆を死地に向かわせるかも知れない…けど成功率があがる事を嬉しく思ってしまう

やっぱりエミリアさんは良い人だと思う


「そうと決まったらこうしちゃいられねぇな。早速ドラゴンでも狩りに行こうぜ!」

「ごめんなさい、まだ待って欲しいの」

「マジか…こんなにもやる気マックスだってのに」

「ごめんなさい、でも今の貴女達をこのまま外に出すのは危険なのよ」

「どうゆう事でしょうか?」

「貴女達が外に出ると私は関わる事が出来なくなるわ。偽りの報告を偽装することも出来なくなるの。つまり外で"バトルサーチ"でも使われたら直ぐにバレてしまうわ」


七宮さんに答えたエミリアさんだけど、それは最もな意見だった

今ここでバレてしまったら全て終わってしまう

ではどうすれば良いのか

その様な疑問が出るのは自然だった


「勿論対抗策は用意してるわ。ただ狂羅君以外の4人の詳細データを打ち込むのに少し時間がいるのよ。今日中には仕上げるわ。だから今日はお話でもしていてくれるかしら?それと部屋は用意出来なかったのだけど、大丈夫よね?」

「え!?」

「駄目かしら?出来れば1日だけだから我慢して欲しいのだけれど。それにこの部屋は映像魔道具に妨害魔道具を仕込んであるから一番安全なのよ」

「…狂羅さんは良いけど、そっちのひとは無理です」

「おいチビ、ケンカ売ってんのか?」

「変態と一緒に寝泊まりは嫌だと言っただけですが?」

「誰が変態か言ってみろや」

「言わないと分かりませんか?」


いつの間にか高嶺さんと紅條が一触即発な状況になってる!?

七宮さんは笑ってるし、僕はどうしたら良いか分からない


「凜ちゃん、寝るときには私が壁を作ってあげるから。それなら良いでしょ?」

「稚輪さんがそう言うなら…」

「紅條も落ち着いて…」

「ちっ!」


出だしが最悪だよ…


「じゃ私は行くわね。早く完成させた方が良いでしょうしね」


エミリアさんはそう言って出ていった

残された僕達の空気は重い…


「仲間同士でケンカしてる時間はない筈よ。私達がやるべき事は親交を深める事。そうでしょ?」

「う、うんその通りだと思う。今すぐって訳にはいかないと思うけど、ケンカは駄目だよ」


七宮さんと僕の声に2人は渋々頷いた

取り敢えず頷いてくれて一安心だ


「じゃあ自分が何を出来るか言っていこうよ。お互いの事を知ってたら頼りに出来るでしょ?」

「そうね。私から言って良いわね?」


七宮さんは反論が無いことを確認する


「まず私に状態異常は効かないわ。完全に状態異常は無効なの。それから全身から毒を生成する事が出来るし、この毒は即効性の麻痺毒から遅効性の毒の様に様々な毒を生成出来るわ。

得意な魔法は風ね。風で毒を遠くに飛ばしたりする事が出来るわ」

「凄いですね…」

「舞さん怖えぇよ」

「そうね。だから手をだそうなんてしない事ね」

「はい」


舞さんは凄い能力を持ってた

きっと僕とは違った実験の成果なのだろう


「じゃあ次は私ね。私は舞さんみたいに特殊な能力みたいなのは無いんだけど、物を作る魔法を使えるの」

「「「「物を作る魔法?」」」」

「うん。私は創造魔法って呼んでるんだけど、魔力さえあれば何でも作れる魔法なんだ。凄いでしょ!」

「試しに何か作ってくれよ!」

「そうだね、『創造魔法』」


伊波さんの手に魔方陣が展開される

するとそこには熊のぬいぐるみが…


「可愛いですね」

「でしょ!創造魔法はね、武器も作れるんだ。私はそうやって戦ってた」

「武器も作れるんだ!凄いね」

「ありがとう狂羅君」


でも伊波さんに武器を作ってもらったら良いと思うんだけど

きっと凄い武器を作ってくれると思う


「次は俺のターン!俺の能力は硬質化って勝手に呼んでるぜ。俺の皮膚はアルテイドゴーレムの細胞を埋め込んである。皮膚を鋼の硬さまで変化させる能力だ。魔法は正直得意じゃねぇから体術で戦うぜ」


との事だったけど、正直紅條の能力は凄い能力だと思う

防御にも攻撃にも有効な能力だと思う


「それでは次は私ですね。私の右腕はベルハァトルエと呼ばれる魔物の右腕を完全に移植したものです。ベルハァトルエは重力を操る魔物です。私の右腕は重力を操る事が出来ます。それから私が得意とする魔法は補助魔法です。皆さんのサポートであれば上手く出来ると思います」

「じゃあその腕は…」

「はい、想像通り魔物の腕のままです」


重力を操る能力を持った高嶺さんの力の使い方は分からない

それでも使い方によれば強い力となりそうだ

それに補助魔法が得意と言う事ならばきっと戦いが楽になりそうだ


「最後は狂羅君だね」

「はい、私達の希望は黒志さんにあります」

「そうね、どんな凄い能力を持ってるのか気になるわね」

「俺達の秘密兵器だからな」


皆が期待した様な目で僕を見る

あ、あんまり期待しないで欲しいんだけど…それに恥ずかしいよ


「えっと、僕の両目は魔物の目と入れ換えてあるんだ。左目は見える物や人の危険度を色で教えてくれる。右目は死んだ人の魂や精霊を見る事が出来る」

「両目って…マジかよ…」

「後内蔵をヘルワーム、皮膚をダークエルフのものと入れ換えている。内蔵は毒物でも食べられるし、皮膚も状態異常が効きにくい皮膚になってる」

「後で私の毒が効くか試してみたいのだけど良い?」

「遠慮しておきます。魔法も体術もどちらも使えます」

「じゃあ特殊な能力みたいなのは無いんだ?」

「うん」


皆ちょっとガッカリしてる

でも勝手に期待したのは皆だよ…


「それで皆に提案があるんだけど」

「提案?」

「うん。私の創造魔法で皆の武器を作ろうと思うんだけど…どうかな?」


伊波さんの提案に皆頷いた

僕もそう思ってた所だもの


「でも強い武器を作ろうとしたら1日に2回しか出来ないの。魔力があれば良いんだけどね」

「それで、誰のから作るんだ?」

「えっと…取り敢えず狂羅君が私達の中で一番の戦力だから狂羅君が一番最初にしとかないと駄目だと思う。もう1人は七宮さんじゃ駄目かな?」

「狂羅君の事は分かったわ。でもどうして私なのかしら?」

「それは次に数値が高かったからかな。明日外に出ると危険があるのは分かってると思うんですけど、その時に私達が生き残る為には強い人がより強くなっていた方が良いかなって」


皆伊波さんの説明で納得したみたいだけど、正直言って僕は後でもいい

魔力での身体強化を行える様になってから僕は剣を使っていなかった

でも今更言い出すのは少し心苦しい


「じゃあ決定って事で、どんな形の武器が良いか言ってくれる?」

「じゃあ僕は大剣が良いな」

「七宮さんはどうしますか?」

「じゃあ鞭が良いわね」

「「「「鞭!?」」」」

「鞭は便利よ。棘のある鞭が良いわね。出来るかしら?」

「あっ、はい」


伊波さんは魔方陣を展開した

複雑な展開式で難しそうだった

その展開式から黒い大剣が出てきた

刃渡り3メートル程の大きな大剣だった


「凄いですね…」

「こんなので良いかな?」

「う、うん。ありがとう、伊波さん」

「でもっ…めっちゃ重いよ、これ?」


そう言われて持ってみると持ち上げる事は出来なかった

魔力で身体強化を行ってもう一度挑戦してみる

持ち上げる事は出来たけど、確かに重い

100キロくらいありそう


「大丈夫みたいだね。じゃあ次は舞さんの作るよ」


次の魔方陣から現れたのは無数の棘に覆われた鞭が現れた

全身が紫色の鞭だ


「これで良いですか?」

「えぇ充分よ。1回鞭を使ってみたかったのよ」

「そんな理由なんだ…」

「何言ってるのよ、一番重要な事よ?」


理由は良く分からなかったけど、これで僕と七宮さんの分の武器は手にはいった


「う~ん、これからどうしよっか?」

「そうだよな。暇過ぎるしな」

「確かにする事がありませんね」

「それじゃあ私がご飯を作ってあげるわ」

「舞さんが?それなら私もお手伝いさせて下さい」

「じゃあ私も~」


女の子3人がキッチンへと向かったのを見送る

僕は1度も使った事はなく、エミリアさんがいつも食べ物を用意してくれてたから


「俺の夢が1つ叶ってしまった」

「夢?」

「何言ってんだよ。そんなの女子の手料理に決まってるだろ?」

「でも僕はエミリアさんのご飯を食べた事あるし」

「狂羅は良いよな、あんな綺麗な人が研究員でよ」

「まぁそうだね」

「なぁ狂羅ならあの3人の中で誰が一番タイプなんだ?」

「えぇ!?そ、そうゆう紅條は?」

「俺か?俺は絶対舞さんだな」

「そうなんだ」

「で?狂羅はどうなんだよ?」

「今はちょっと考えられないかも…それどころじゃないしさ」

「まぁそうだよな…」


紅條はその表情を真剣なものへと変えた

僕達には成さなければならない事があるから

きっと紅條も少し場を和らげようとしただけだと思う


「なぁ狂羅…」

「何?」

「俺とお前は男だ」

「うん」

「あいつ達は女だ」

「うん」

「今から言う言葉は狂羅の胸の中だけでとどめていて欲しい。俺は正直あいつ達には危険な事はさせたくねぇんだ。でも今の俺達には目標があり、成功する為にはあいつ達の力を借りない訳にはいかない」

「うん、僕もそれは思ってた。元々1人でするつもりだったし、僕は皆を危険な事に巻き込んでしまった事をまだ後悔してる。例え皆が選んでくれた道でも、結果的に巻き込んでしまった事には変わりはないと思ってる」

「あぁその通りだ。少なくとも俺は自分で選んだ。この事について狂羅に責任なんてないし、責任を感じるのも間違っている」

「そう言ってくれると嬉しいよ」

「でもよ、それでもあいつ達は女だ。俺はあいつ達…いや、狂羅にも生きて欲しいとそう思ってる」

「それは僕も同じだよ。勿論紅條もね」

「ありがとよ。だからよ、ちょっと考えてたんだ」

「何を?」

「俺とお前のどちらかが瀕死、もしくは死んだ場合の事だ」

「な、何言って「聞け!」………うん」


その必死の姿に僕は言葉を出す事が出来なかった

いや、しては行けないと思った


「俺とお前のどちらかがその様な状況になった場合、計画は中断する。そしてあいつ達を逃がす事を第1に行動する」

「それはっ!………その場合国王はどうするの?」

「勿論対策も考えてある。手を出してくれ」


僕は言われた通りに手を出した

紅條は僕の手を握り詠唱を始めた


「『我の命が散ろうとも汝との絆は消える事なかれ。汝の命が散ろうとも我との絆は消える事なかれ。我は汝の力となりて、汝は我の力とならん』」

「何したの?」

「これは大昔の魔法らしい。人生に1度しか使えない魔法らしい。これは絆の魔法なんだ」

「絆の魔法?」

「あぁ。さっきの約束覚えてるか?」

「…うん」

「俺が死んだ場合狂羅に全魔力が、狂羅が死んだ場合俺に全魔力が渡される魔法だ」

「す、凄い魔法だね」

「凄ぇだろ?まぁこの魔法が発動なんてしない方が良いんだけどな。でもこの魔法によって俺達の戦闘能力は飛躍的に上昇する。それこそ俺達が強くなればなる程あいつを殺す事が簡単に実行出来る様になる。それこそもしも片方が死んだ時、1人であいつを殺すくらいにな」

「そう…だね」

「そんな暗い顔すんなって、な?」


無理だよ…

確かに紅條が言った通りなら国王を殺す事は出来る

でもそれは紅條か僕が死ぬ事前提の作戦だ


「狂羅…約束は何があっても守れ。これは俺とお前の男の約束だ」

「…分かった。でもそうならない様に僕は努力するからね」

「それでいいさ。俺だって少し嫌な奴もいるがそいつも含めて気にいってるんだ」

「僕も皆が好きだよ。今日会ったばかりだけど、それでも皆好きなんだ」

「俺もだよ…」

「ご飯出来たよ~」

「おっと、さっきの話はあいつ達には秘密だぜ」

「分かってるよ」


本格的に舞台が整っていく

別々に回っていた歯車が徐々に噛み合っていく

1つ…また1つ…ゆっくりと回っていた歯車は噛み合い、スピードを上げて回り始めた


絶望的な差は既に足元が見えるまでになっていた

光届かぬ闇に光を射そうとする者達

その光は深い闇に今届かんとしている

長い時を闇に覆われた世界に今希望の光が射し込んだ








だが闇もまた光を消さんと忍び寄っている事を忘れてはならなかったのである



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ