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最凶の存在  作者: 翔さん
第壱章*学園編
57/68

終わりの始まり

翌朝はとても静かな朝だった

嵐の前の静けさとは良く言ったものだ


「なぁ狂羅…」

「あぁ…久しぶりに見た」


空気がピリピリしてる

朝からずっとだ

ソフィの無意識な心意気が他者を圧迫する


「綺麗…」

「そうだね…」


シェルとエレナがそう呟く


とても大きな氷の樹

氷の樹を形成する氷の薔薇

周囲には100の氷の竜

佇む2体の氷の騎士

氷のドレスに身を包み舞い踊る氷の女王


久しぶりに見た

ソフィの準備運動

改めて見て思う

言葉では言い表せない程の美しさ


俺もカイラも、いや、此処にいる者全てを引き寄せる魅力

どれ程の間見ていたのだろうか

ソフィが動きを止めた時、氷の幻想は消えてなくなる


「皆さん時間ですわ」


ソフィは本気で戦う様だ

ミンミが精霊王と手を組もうがソフィが本気を出さなくても全然問題はない程には力の差はある

それでも本気でやるのにはソフィなりの理由があるのだろう


「ソフィ。思いっきりやって来い」

「はい。わたくしとミンミさんの覚悟…必ず見ていて下さいませ」

「あぁ」


会場に入って行ったソフィを見送り俺は待機室ではなく、特別席へと向かった


「アレク、荒れるぞ」

「急に来たかと思えば…どちらにせよ止められる者は狂羅しかおらぬ」

「あぁ」

「止めぬのだな」

「あぁ」


アレクも分かっていたのだろう

そうここから変化する

世界は変わる


「さぁいよいよ決勝戦です!」


司会の声が聞こえた


「今この時をもって世界は変わる」

「狂羅さん?アレクさん?」


話が分かっていない聖女様が首を傾げている


「聖女殿、懺悔の書を知っておるか?」

「懺悔の書ですか?勿論知っています。エミリア・アイリス・レビィアム様がお書きになられ、現在は予言の書と呼ばれる書物の事ですよね?」

「その通りじゃ」

「それとどの様な関係があるんですか?」


試合はもう間もなく始まる


「それでは両校の選手は入場してください」


司会の声でソフィを先頭に入場してくるのが見える


「予言の書を読んだ事はあるかの?」

「はい。一通り目は通しています」

「我々人類…いや、生物の敵になるのは誰じゃ?」

「白き女神と黒き神ですよね?」


アレクは聖女へ頷いて返し、ソフィを見つめる


「予言の時が来てしまったのじゃ」

「え?」


それかは俺達3人の間にもう会話はなかった





「それでは早速第1回戦を始めたいと思います」


ソフィがアレイル魔法学校の選手に頭を下げているのが見える

そしてゆっくりと歩き始めた

観客が騒ぎ始める


「アレイル魔法学校からは宣誓をしたきり競技に姿を現さなかったソフィ選手が出るようです。一体どのような戦いを見せてくれるのでしょうか!!!」


ソフィは中央で優雅にお辞儀する


「ミンミさん、貴女の覚悟見せてもらいましたわ。素晴らしい試合でしたわ」


ミンミだけを見て、ミンミだけに語りかけるように話し出す


「ありがとうございます。生半可な覚悟で此処に立っている訳ではありませんから」

「えぇそれは分かっていますわ。ミンミさん、私も本当の意味での覚悟を決めましたわ。ミンミさんのおかげですわ。

だからこそ貴女には此処に立って欲しくなかった。夢…希望…そんなものは存在しない事を教えてさしあげます。覚悟が出来たなら私の前に立ちなさい」


最初から最後までソフィはミンミの目を見て話していた

ミンミは1度目を閉じ

ゆっくりとソフィの元へ歩き出した


「えっと…両校の選手が揃いましたので第1回戦を始めたいと思います」


そして幕は落とされた


「ソフィさん。私は貴女を倒します」

「捻り潰してあげますわ」

「シルフィード『風刃乱舞』」


開戦早々ミンミの風刃乱舞がソフィを四方八方から襲う

でもソフィはその場を動かなかった


「まだです!『鬼刃風竜』」


風の刃で形成された竜が姿を現す

更にその竜を中心に嵐が発生する


「これでどうですか!」


風の刃が四方八方からソフィを襲い続けるなか、上空へと飛び上がった竜が加速しながらソフィを押し潰す


「はぁ…はぁ…」


風の竜の着弾の摩擦により雷が発生する

やがて轟く雷鳴が止み砂ぼこりが覆い隠す


「それが全力ですの?」


砂ぼこりが晴れる頃、その声はやけに響いた


「そんな…」


大地は深く深く抉れるなか、ソフィは無傷で立っていた

服は砂や雷で焦げた後すらもない


「私の氷を削った事は誉めて差し上げますわ。そうですわね…ランキング500位くらいなら行けるんじゃありませんの?」


ゆっくりとミンミの元へ歩いていく


「本気を出しなさい。風の精霊王よ、いつまで隠れているんですの?」

「……どうして?」

(見破られてる…ミンミ本気でいきますよ)

「精霊持ちの本領は精霊と宿主の融合ですわ。出来ないなんて言いませんよね?それともミンミさんの覚悟とはその様な覚悟ですの?」

「分かりました。命に関わるような事は避けようと思っていましたけど…どうなっても知りませんから。シルフィード『一心同体』」


そう言ったミンミの横に風を纏う半透明の精霊が現れる

精霊は上位の精霊しか形を保つ事が出来ない

これが風の精霊王シルフィード

ミンミは右手を、シルフィードは左手を繋ぐ


突如激しい風が会場に吹き荒れる

更にミンミの体が半透明になっていく

体が浮き始め、ミンミは精霊同然になった


「(もう手加減なんて出来ません。『風雷土豪』)」


ミンミが手を前に出す

その瞬間ミンミの手から雷を伴った竜巻がソフィを襲う


「(『鬼刃風竜乱舞』)」


100の風竜が上空に現れソフィへと殺到する

耳を塞ぎたくなるような雷鳴が轟く

ソフィはそれでも動いていなかった


誰もがソフィの安否を気にしただろう

最悪の事態も脳裏をよぎっただろう


砂ぼこりが晴れる頃、嘲笑うかの様に凛とした声が響き渡る


「流石は精霊王との融合ですわね。まさか私の氷を貫き傷を負わされるとは思いませんでしたわ」


手に小さい切り傷…

ソフィが負った傷はたったそれだけであった


「(あれほどの技でそれだけ…)」

「まだまだですわね。融合してランキング200位と言ったところですわね」

「(嘘…傷が!)」


手にあった傷も既に治り、無傷のソフィが歩き出す


「ミンミさん、貴女が望むものは手に入らないわ」


ソフィを中心に巨大な氷の薔薇が咲く

氷の薔薇はソフィを包み込むように蕾へと変わる


「なぜならこの世界は理不尽だから」


そんな声と共に蕾はゆっくりと開かれる


現れたソフィの姿は劇的な変化を遂げていた


そう書かれた金の刺繍

純白のドレスに薔薇の刺繍

銀色だった髪は真っ白(・・・)になっている


「まさか…」

(なんて魔力なの!?これが人間…?)


観客も静まりかえっている

背中に背負う金の刺繍の意味を知っている

数人にだけ許されたこの世界の絶対者である者達の証明


「『白き世界』」

「(っ!『暴風結界』)」


それは一瞬だった

会場が…いや、国中が凍った

比喩はない

地面は凍り…草木も凍り…家々も凍り…

見渡す限りの氷像とかした国を見る


「(危ない所……えっ………)」


反射的に結界を張ったミンミ達

だが結界から出たミンミと精霊は融合が解けていた

維持することが出来なかったのであろう

結界により身を守ったミンミは変わり果てた光景に言葉を無くした


「(でも綺麗…)」


氷は日の光を浴びて美しい銀色の光を発する

国中が銀色に輝いている

それはとても神秘的な光景だった


「生物には影響のない魔法ですわ」

「(そうみたいですね)」


確かに観客は無事だ

ソフィの言う事が本当なら住民も大丈夫な筈


「(私達の結界は無駄だったんですね?)」

「そんな事はないですわ。貴女には別の魔法を放ちましたわ」

「(そうですか………ソフィさん。貴女に聞きたい事があります)」

「良いですわよ」


誰もが気にしていたであろう事

背中に存在するその刺繍の意味

この世界の絶対者である証明


そう…つまり…


(この規模の魔法は人間に出来る筈がないわ…)

「えぇシルフィード。こんな事が出来るのは神もしくは………人の身で神の域に達した方々だけ…違いますか?」


ソフィはその場で観客、映像魔道具、そしてミンミに深くお辞儀をした


私達わたくしたちはそんなたいした者ではありませんよ。改めて自己紹介をしましょう。私は人神が2位、ソフィア・アイリス・プリンセスと申します」


ソフィ…ソフィア・アイリス・プリンセス

これがソフィの本当の名前


「やはりそうでしたか…」

(人神?)

「えぇシルフィード。彼女こそがこの世界の絶対者の御一人です。最強種と呼ばれる3強種族、竜種、精霊種、古代種…。ただ最強種であるだけで、最強ではないと言うことです」

(つまり?)

「例え最強種であろうとも人神の方々の前では赤子も同然と言う事です」


観客に確かな波紋が広がっていく


「狂羅、私の覚悟は決まりました。生涯私は狂羅と共に」


ソフィが俺を見てそう言った

終わりが始まるんだな

短い…本当に短い間だったが俺は楽しめた

本当の在るべき姿に戻る


狂羅の足元に黒い穴が開いた

その穴に吸い込まれる様に消えた狂羅はソフィのすぐ側に現れた


「もう良いんだな?」


狂羅は再度問う


「えぇ。私が名を告げた時、それが始まりの時。始めましょう私達の復讐を」

「分かった。ソフィア」

「はい」


白髪の少女は空へと何らかの魔法を放った

それは世界のあらゆる場所に飛び散り超巨大な映像を写し出す


「この世界に住む者よ、俺の名前は黒志狂羅だ」

「ソフィア・アイリス・プリンセスですわ」

「突然だがお前達にゲームをしてもらう。参加者はこの世界の全員だ」


国に1つずつ空を覆う程の大きさで展開された映像に視線は集まる

突然始まった2人の言葉に世界は今、耳を傾けるしかない


「この世界が肯定するならば、俺達は否定しよう」

「この世界が否定するのなら、私達は肯定しよう」


2人の手は繋がる


「この世界に与えられた悲しみや苦しみ、孤独や憎しみ…そして絶望…」

「ありふれた幸せ…そんなものは私達には無かった」

「優しさや愛情…そんなものは俺達には無かった」


何の事を言っているのかわからない

何が言いたいのか分からないでいる

だが、2人の悲しみや孤独は伝わってくる


「私達に希望なんて無かった」

「俺達は絶望しか無かった」

「俺達の奪われた幸せは戻って来ない」

「私達の訪れた筈の時は戻って来ない」


既に2人の顔には何の感情も浮かんでいなかった

その色褪せた瞳は何も写していなかった


「俺達は復讐者だ」

「私達は略奪者だ」

「ルールは簡単だ。俺を殺せばこの世界の勝ち」

「この世界の人間を殺し尽くしたら私達の勝ちですわ」

「何言ってんだよ狂羅!」


誰もが言葉を理解することが出来ずに動けないでいた中、そこに話しかけた者がいた

数ヶ月と短い間だったが共に過ごした友だった


「そうですよ!ソフィさんも可笑しな事言うのは止めましょうよ!」

「狂羅君もソフィさんもね?」


カイラ、エレナ、シェルの3人が会場に出てきていた

短い間だったが確かに共に過ごしたのだ

狂羅が…ソフィアが…これは違うと信じたい気持ちでいっぱいだったのだ


「狂羅さん!」


また1人声をかける者がいた

声の主は先程まで戦闘を繰り広げていたミンミであった


「何だ?」

「お聞きしたい事があります」


そう話すミンミは悲しみが顔に出ている


「本当は確信しています。でも違っていて欲しいと望んでもいます」

「それで?」

「狂羅さんが狂神様ですね?」


会場が騒がしくなる


「あぁその通りだ」

「やはりそうなのですね……」

(狂神って何よ?)

「あの人がこの世界の絶対者である人神の方々の頂点に居られる方です」

(あの女よりも強いってこと?)

「えぇ」

(嘘でしょ…)


風の精霊王があり得ないと言った様な顔で狂羅を見る


「狂羅さん、覚えてはいないかもしれませんが、5年前私は狂羅さんに助けていただきました。本当にありがとうございました」

「確かに覚えてはいないが…お前もか…」

「何の事ですか?」

「いや、こちらの話だ」


俺が助けたと言うならばミンミは…


「狂羅…なぁ…冗談だよな?」

「カイラ、全ては後だ。先にこの世界の者達にも準備期間をやる。今日から1年。1年後に復讐を開始する」

「私達の復讐への準備をするもよし、1年の短い時を愛する者と過ごすもよしですわ」

「何だっ!?」

「「きゃっ!?」」


カイラとエレナ、シェルの足元に闇が現れ3人の姿は消えていった


(反応が消えた!?)

「狂羅さん…理由をお聞かせ下さい。狂羅さんは私を助けて下さいました。あの頃の狂羅さんは沢山の方を救っておられた筈です!何故…何故こんな事を…」

「………ソフィア」

「えぇ」


先程の3人同様闇に覆われてミンミの姿が消えた

それと精霊王も姿が消えた


「今から1年だ」

「「さぁこの世界への復讐を始めよう」」


闇の中へと姿を消した2人の言葉を世界は考えるしかなかった

これからどうするか?

彼達の言葉が本当なら緊急事態だ

必ず戦闘になる

各国はこの件を真剣に受け止め戦力の増強へと動き出した






☆★☆★☆






懺悔の書第1章

これが後に予言の書と言われた書物である




土の精霊王

風の精霊王

雷の精霊王

水の精霊王

火の精霊王

氷の精霊王

光の精霊王


7の精霊王が集まりし時が来る


火の神獣

雷の神獣

土の神獣

風の神獣


4の神獣が集まりし時が来る


聖杖

聖剣

聖槍

聖盾


4の聖装が集まりし時が来る


15の選ばれし者が世界の命運をかけて戦う時が来る

白き女神止まりし世界を歩き

黒き神は死を積み上げる


この世界が犯したとてつもなく重い罪

繰り返し続けた人間達への神からの罰

私達は罪を償うべきである

でも私達はきっと抵抗するのでしょう


闇は光の中にある

光もまた闇の中にある

光があるから闇は生まれ

闇があるから光は生まれた

世界に光が覆うとき、闇は動き出す

闇の封印が解かれ、この世界を闇が支配する

悲しみや苦しみが世界を支配する

絶望が世界に溢れ、混乱が世を支配する

死の蔓延する世界となるとき、この世界は自らの犯した罪に気がつくだろう

まもなく罪を償わせる為に彼の封印が解かれる

彼の封印が解かれし時、この世界は終焉を迎えるのであろう

彼の感じた悲しみを、絶望を理解することは出来ない

この世界に住む私達では彼に許してもらうことなどは出来ない


私達が犯した罪は重すぎる

私達は知らずに仮初めの平和の中で生きすぎた

私達は罪を償わないといけない


抵抗してはいけないのです

これは神による断罪の儀式なのだから


私達人の犯した罪を償わせて下さい

私達の命をもって


懺悔の書

第1章:エミリア・アイリス・レビィアム






--------第壱章-完--------



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