五校戦・7
短いですがお願いします
ふと魔力が抜けていくのが分かる
フェスが再生の為の魔力を補充している
(フェスに何かあったな…まぁいい。こんな所で消える程度なら先はない)
外を見ると日の光が眩しい
穏やかな朝だ
毎朝繰り返している修練をするために外へ出る
「よっ」
「早いな」
「まぁな」
外へ出るとカイラが俺を待っていた
あの日から俺の修練に付き合っている
カイラはよっぽど堪えたらしい
「そろそろ実戦と行こう」
「おぉ!やっとか」
俺の修練は基礎しかしない
カイラは実戦に似た特訓だと思っていたらしい
「ヘル」
「はい」
俺の影が人の形をとり始める
「なっ何だ!?」
カイラは驚いている
俺の影は完全な人の姿になり、色がついていく
身長150センチ程、黒い髪はポニーテールにされ、そのグラマーな体は黒いドレスに覆われている
「お久し振りですお兄様」
「長らく呼ばなくてすまなかったな」
「いえ、お兄様が目的を達成した今となっては私も必要なかった筈ですので」
「そうだな」
カイラがヘルを見て口を開けたまま固まっている
「カイラ、お前の相手をするヘルだ」
「ヘルウェルと申します。お兄様の命により貴方の相手をすることになりました」
「えっと…カイラです。宜しくお願いします」
とても礼儀正しく頭を下げるヘルに戸惑いながらもカイラは挨拶する
「お兄様、お話したい事があります」
「何だ?」
「あの者達が動き始めました」
「そうか…そろそろなのだな」
「………はい」
先の事は後回しだ
結局俺は止められないのだから
「じゃあヘル頼んだぞ」
「はい」
俺はヘルに任せて木の根元に座り込み様子を見る
「それでは時間が余りありませんので直ぐにでも始めます。死なない程度なら問題ないと聞いておりますので、死なない様に頑張って下さい」
「………え?」
俺はカイラの叫び声を子守唄にし、目を閉じた
ふと周りが騒がしくなった
あれからどれくらい眠っていたのか分からない
目を開けて空を見る
日はまだ高くない
周りを見ると俺を囲むように人混みが出来ていた
「ヘル」
俺の前に立っていたヘルを呼ぶ
ヘルは申し訳なさそうに頭を下げて謝ってくる
「申し訳ありませんご主人様。この者達を殺しても良いものか判断することが出来ず、近づかぬ様に見張っている事が最善であると判断しました。騒がぬように何度か忠告したのですが、結果お兄様を起こしてしまいました」
「気にするな。ヘル戻るぞ」
「分かりました。それでは私はあちらで待機していますので、ご用の時はお呼び下さい」
そう言って影の中に戻ろうとしたヘルを呼び止める
「戻らなくていい。呼ぶ事もなくなった今となっては気にする事もない。現界したままで構わない」
「良いのですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます」
そう言って子供の様な笑顔を向けてくるヘル
俺はヘルを連れてアレイル魔法学校の待機室へとむかった
「あら?ヘルではありませんの。お久し振りですわね」
「お久し振りですお姉様。また仲良くしてもらえると嬉しいです」
「えぇ勿論ですわ」
ソフィがそう言うなり、ヘルはソフィの腕を掴んで自らの胸に抱き抱えた
まるで仲の良い姉妹のようだ
あの後待機室の前でソフィと合流し、今に至る
「ヘルウェルと申します」
俺が寝ていた為既に他の奴達は待機室にいた
待機室へと入りヘルを紹介する
ヘルは色々質問されていたが全て無視し、ソフィにくっついていた
ふと映像魔道具を見るとべリア第1魔法学校とヴァルキリア魔法学校の試合は既に半分は終わり、後半へと入っていた
その後も試合は進んでいき、2連戦を勝ち残ったミツバの前にミンミが歩いていく
「お兄様風の反応です」
「あぁ…あいつは選ばれたんだな」
「…はい」
風の精霊王に選ばれたのなら敵だ
例え誰であったとしてもあれは止められない
立ち塞がるものは必ず………
「貴女はどちらにせよ側にいることは出来なかったのですわ」
「ソフィ?」
「何でもありませんわ」
そっと呟いたソフィの表情は何処か寂しそうだった
「いよいよ最後の試合です。べリア第1魔法学校がここまで勝ち残ったのはミツバ選手の尽力によるものが大きいでしょう。昨日の試合では全試合を勝利でおさめるその力は本物です。対するはヴァルキリア魔法学校の頂点。賢く美しく、剣技にも長ける。完全無欠なるヴァルキリアの女王が今戦場に降り立ちます!」
司会の言葉で一気に観客の熱が上がる
俺も今のは上手いもんだと感心してしまった
会場に残ったままのミツバの前へミンミが歩いていく
ミンミはミツバの目の前まで行くと綺麗なお辞儀をした
「ミツバさん、私には勝たなければならない理由が出来てしまいました。貴方が先日私に話した件は1度承諾した事のため撤回はしません」
「はい。僕としてもその方が嬉しいです」
中央で向き合った2人の声が聞こえる
どうやら何かあったらしい
それに気づいた観客も静かに会話に耳を傾けた
「勝たなければならない理由があると………それをお聞かせ願いたいのですが?」
ミツバは問いかけた
ミンミは1度映像魔道具へと視線を移し、瞳を閉じた
ミツバへと向き直り静かに開いたその瞳は、何かを決意したような強い光を灯していた
「先日貴方に結婚を申し込まれた時、私は貴方に負けるようであれば受けても良いと思いました」
結婚の部分で観客が1度騒いだが、直ぐに静まり、ミンミの次の言葉を待っていた
「私はある御方にお会いしたいが為に自らを鍛えて参りました。ですが私が思っていたよりも遥かに遠く…私が思っていたよりも現実は厳しかったのです。
あの御方の側には既に寄り添う女性がいました。
その方は私等では敵わぬ程強く、美しく………私は1度諦めようとしたのです」
「………その時に僕が声をかけてしまったと」
「はい。私は私が決めた目標に妥協点を作ってしまいました。こんな言い方は貴方に失礼だと分かっています。ですが私の…本当の私は貴方が思っているよりも酷く醜いのです」
「そんな事は「あります!」………何故それ程自分を否定するのですか?」
既に観客は静まりかえり話に耳を傾けている
ミンミの真剣な話を此処にいる全ての人が聞いていた
「生きる意味を勝手に押し付け、叶わぬと知り裏切られたと思い込み、あの御方の側にいる人を妬み恨み…
こんな私が美しいと本気でお思いですか?」
「それは………ですが人間である限りその様な感情が生まれるのも仕方ありません」
「そう…かもしれませんね。こんな言い訳はもう止めます。貴方に失礼ですし、何よりあの人を待たせる訳にはいきませんから。私の勝手な都合に付き合わせてしまい申し訳ありません。さぁ始めましょう。私は私の望みを。貴方は貴方の望みを叶えるために」
「えぇそうですね」
ソフィがミンミをずっと見ていた
だがソフィのミンミを見る目は真剣だ
試合は始まった
「シルフィード『風刃乱舞』」
そう呟いたミンミの背後に数千を超える風の刃が生まれる
「そんな…」
「私はこんな所で立ち止まる訳にはいきませんから」
数千もの風の刃が舞う様にミツバを斬り刻んでいく
手加減したのであろう
小さい傷が無数につけられたミツバは地面へと倒れ伏す
「私はもう逃げません。ソフィさん…私は貴女を倒します!」
映像魔道具の奥、ソフィだけに言われた言葉
ミンミはそれだけ言い残すと会場を後にした
「夢は叶わないから夢。貴女が見るは夢。貴女の望みは叶わない夢ですわ。どれ程望もうと…どれ程手を伸ばそうと…絶対に届かないものはあるんですわ」
静かに…静かに…そう…とても静かに笑っていた




