閑話 逢魔ヶ時のエピローグ
僕は今、6才という若さで、人生の崖っぷちに立たされている。
前には結婚をせまる少女。
後ろには彼女との別離。
赤く輝く太陽が、僕を嘲笑うかのように、小さな公園をぎらぎらと照らしている。
僕は悩んだ末、言う。
「…結婚はまだ決められない。
でも、一つ『約束』しよう。
僕はここから離れないといけない。
それは仕方ないことだし、変えられない。
だけど、いつか僕は、必ず君に会いに行く。
もしかすると、成長して姿はぜんぜん違ってしまっているかもしれない。
だから、そしたら僕を見つけて欲しい。」
彼女は首を傾げた。
「みつけたらどうなるの?」
それは考えていなかった。
どうせこの契約は不可能なものだから、どうでも良いと言えばそれまでだが、しかし一方的な『契約』は成立しない。
それなら…。
「だったら、もし君が僕を見つけてくれたら、1つだけ君の願いを叶えてあげる。
だから待ってて。」
僕はそう言った。
彼女が目を輝かせる。
そんな時は永遠に来ないとも知らずに…。
「ホント!?
やくそくだよ、佐久間君。」
…よし、『承諾』も得た。
『契約』はこれで成立。
彼女には悪い気もするが、これもやむなしだろう。
どうせ彼女はこのことを思い出せやしないんだから。
「うん…。約束だよ。
多分果たされることはないけどね。」
「?」
僕は瞳に疑問符を浮かべる彼女の頭に手を載せると、彼女の記憶から僕に関するものを全部、封印した。
少女はしばらく焦点の合わない虚ろな目をしていた。
徐々に意識がはっきりしてきたのか、目の前に立つ少年に気が付いて、口を開く。
「あれ?きみはだれ?」
少年は優しく微笑んだ。
「…ただの通りすがりだよ。
それより君、早く帰った方が良いよ。
『逢魔ヶ時』になっちゃったからね。」
「おうまがどき?」
言葉の意味が分からなかったのか、少女が鸚鵡返しに尋ねる。
少年が苦笑する。
「化け物が出る時間のことだよ。」
「おばけっ!?」
少年の答えに、少女は過剰なくらい、びくっと背筋を震わせる。
本人は至って真面目なのだろうが、どこか愛嬌のあるその仕草は大人の微笑をさそう類のものだった。
少年も、小さく口の端を上げる。
「たまきかえる。ばいばい!」
少女は手を振りながら、慌てて走り去った。
きっとお化けが怖いのだろう。
やがて少女が見えなくなると、少年も、笑みを浮かべて、夕日を背に浴びて歩き出す。
彼女とは逆の方向に。
赤い光が、誰もいなくなった公園を照らしている。
これで、全部の情報を出し終えました。
黒幕は、誰なのでしょうか。
そして、佐久間君の正体とは?
作者からの挑戦(笑)です。
動機は考えても多分意味ないと思うので、こいつ明らか怪しいだろ、というキャラの行動を分析してみて下さい。
次の話から6章に入るのですが、もしかしたら作者からの挑戦(笑)を受けて、推理してみたいという読者の方もいらっしゃるかもしれないので、次の更新まではすこし日をあけようと思います。
日曜日に1話、更新するつもりです。
月曜は用事があるためあけて、火曜日にもう一度更新しようと思います。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
おそらくあと7話程度で終わると思うのですが、あとすこし、お付き合い願います。




