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エイプリル・フール  作者: いちい
藍色の愛を胸に抱いて
32/45

5章 4話



作者、解決編に入るから超がんばって早めに投稿しました。



 





「サークルの皆を殺したのは、あなたですね___千秋さん。」


 千秋さんは、首をこてん、と傾げて、いつもよりおどおどと言う。


「え、えええ!?ち、違いますよ。

 な、なな、何をおっしゃっているのですか。

 先輩、ひどいですよ。

 そ、それに、私がどうやって殺したとおっしゃるのですか。

 噂によると、最初の河野部長はともかく他の二人の先輩方は、密室だったのでしょう?

 動機も、ありませんし…。」


 彼女は否定する。

 しかし、それも予想の範囲内だ。


「順番に説明します。

 まず部長の時は、あなたは都馬に予め接触して、初日までは通じていたメールで、部長を運動場に呼び出させた。

 何かサークル関連でききたいことがある、とでも都馬にメールで言わせておいたんでしょう。」


「そんなこと言ったって、なんで二人とも素直に動いたんだ?」


 逸樹が口を挟む。


「それは後で話す。動機と深く関わるから。

 ともかく、部長があんな場所にいたのはそのせいです。

 メールで時間をぎりぎりに指定しておけば、真面目な部長は犯人の待ち受けているあの道を通って、間に合わせようとする。

 あそこは運動場への近道だからね。」


「………。」


 彼女は何も言わず、ただ値踏みするような目で私を見ていた。


「都馬の時は、前日に部長を呼び出してもらった後の首尾を報告する、なんかの名目で呼び出しておいた都馬に、ここでペットボトルに毒を入れておいただけ。

 蓋が開いていなくても、こっそり隙を見て注射器を使うなりすれば済む。

 鍵は、部長から奪えば良い。

 そのフェミニンなゆったりした格好も、フリルや服の隙間に凶器を隠すためでしょう?」


「でで、でも、そ、それだと誰にでも出来ますよね?部員なら。」


 千秋さんはまだ認めない。


「最初の2件はそうかもしれない。

 でも、次の夕が決定的だった。

 あなたは昼間のうちに、私たちと別れたあと、夕の部屋に忍び込むための細工をした。

 本当はそんなことする予定はなかったんだろうけど、あの日は私が夕に張り付いてたから、やむなく急ごしらえのトリックを使ったんでしょう?

 だから粗が出てしまった。

 夕の部屋より数メートル上には、体育館の窓がある。

 そこに細いテグスを通して、窓の外に輪にしたそれを長くたらしておく。

 後は、夜になったら自分の部屋を窓から抜け出して、テグスの輪を切り、代わりに両端にロープを結びつけて回せば、上までロープがかかる。

 そしたら今度はテグスを取り外し、渡ったロープをよれば良い。

 それからそこに掴まって崖を登り、夕の部屋の窓を空き巣方式で割って侵入する。

 音もテグスも、雨が隠してくれる。

 道具は多分、毒薬なんかも使ってるし、ネットで入手、かな?

 死体を動かしたのは、ある不自然さを紛らわせるためと、夕の部屋から離すことでトリックを分かりにくくして、外部の人間や男性にも容疑をかけるため。」


「そそ、それがどうしたと言うのですか…?

 わ、私と特定する理由には、よ、弱いと思うのですけれど。」


 彼女はまだ、抗っている。

 証拠を突きつけられるまでは、認めるつもりはないのだろう。


「夕の部屋の上は、体育館の女子更衣室。

 男性が入るにはリスクが高すぎる。

 そして、もう一人の女性容疑者である紗枝は、その日はずっと談話室に篭っていた。

 あそこは人通りが多いから、募れば目撃証言なんていくらでも集まる。

 残ったのはあなただけだよ。

 それにね、証拠がある。」


「証拠…?」


 千秋さんはとぼけているが、顔には焦りが滲んでいる。

 自分でも思い当たったのだろう、あのことに。


「千秋さん、服の袖を捲ってくれませんか?

 上までしっかりと。」


「……っ!」


「夕の死体には、真っ赤なマニキュアが塗られたままだった。

 でも、夕が殺されたのは、夜、しかも就寝中。

 そして、夕の首に残る引っ掻き傷。

 犯人はおそらく、夕を殺す際に、腕に傷をおった。

 マニキュアをつけるような、長くて鋭い爪で。

 犯人は焦ったんだろうね、まだ私が残っていたから、気取られるわけにはいかない。

 そこで、自分はフェミニンな服をもともと着ていたから、袖の長い服で傷を隠して、夕の死体には、爪に夕がよく使ってた赤いマニキュアを塗ってごまかした。

 爪の隙間にまで入り込んだ血の汚れは、水では落としきれなかったから。

 外に放置したのも、その違和感をまぎらわせる意味が込みだった。

 …さあ、千秋さん。

 無罪を主張するなら、あなたの腕を見せて下さい…。」


 千秋さんは一度観念したように目を瞑ると、敵意に満ちた視線で私を睨みつける。

 そこには、おどおどした仮面をかぶった千秋さんの姿はなかった。

 あれは演技だったのだろう。


「動機は?」


 私は彼女視線を真っ向から受け止める。


「あなたの姉である、七海 悠夏(ユカ)のため、でしょう。

 そもそも死因に拘って、先輩の作品をなぞったりしているんだから。

 違いますか、千秋 奈々美、いいえ。


 七海 千秋さん。


 もっともあれはただの事故だから、逆恨みだけど。」







千秋 奈々美→七海 千秋

七海 ユカ先輩→七海 悠夏


が分かれば、3章の時点でほぼ犯人が決まってしまうという。

2人のフルネームは作中一度ずつしか出ないので、動機を詰めるのはめんどくさかったかなぁ?


なんでこんなに微妙な偽名かというと、万一知り合いに会った場合、不審に思われるからです。

例えば田中 花子という知人が別の場所で、

「美香ちゃ〜ん!」とか呼ばれてたら、

「えっ!?」て思いますよね。


あと、今回は解決編がちょっと長いので、分けました。

まだ推理は続きます。




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