5章 3話
更新遅くなってすいません。
夕の部屋を後にして寮の1階に降りた私は、エントランスの椅子に座り、考える。
今回の事件の全貌は分かった。
しかし、どう収集をつけよう。
慎重にならなければ。私がベットしているのは、自分の命だけではない。現実にサレンダーはないのだ。
いつの間にか俯いて思考に沈んでいた私の視界に、ふと影がさす。
顔を上げると、そこには白石先生が微笑んでいた。
「あ…。こんにちは。
白石先生、どうなさったんですか?」
白石先生は、いつもとまったく変わりない、柔らかい声で言う。
「いや、何か君が困っているようだったからね。
僕の手助けは必要かな?」
私は逡巡する。
しかし、現状では私に返せる返事はYESだけだった。
「…はい。それでは、皆を部室に呼び集めてくれませんか?
…犯人が、分かりました。」
それを聞いて、先生の表情が変わる。
驚きと、これは…悲しみか。
「…そう。遂に、分かったんだね。
良いよ、僕が皆を呼んでくる。
集めるのは、九重君、篠宮君、千秋さん、笹野さんで全員かな?」
先生は、儚く微笑う。
思えばこの人も、悲しい人だろう。
だからこそ、この役は先生に任せるべきなのだ。
私は黙って頷いた。
そこで先生と別れて、気分を落ち着けるため一度部屋に戻った。
もしかしたら私は、自暴自棄になった犯人に殺されてしまう可能性だってあるのだ。
部屋の真ん中で立ちすくむ。
突然、何かの気配を感じた。
目線を下げると、クロがすりすりと、足に纏わり付いている。
「にゃー。うにゃあ?」
彼の暖かな体温が、生きている証が、凍ったような私の心を溶かしていく。
行くのか?
彼はそう目線で問いかけてきた。
大きな茶色い瞳が、私を見据える。
私はそれに応え、一つ頷く。
「うん。行ってくる。」
私は粛々と準備を整え、部室に向かった。
◆◇◆◇◆
私は部室に一人、向かった。
不思議と心は凪いでいる。
部室の前で深呼吸をしてから扉を開けると、案の定、まだ誰も来ていない。
…ここには、たくさんの思い出が詰まっている。
私は目を細めた。
思い出すのは、ユカ先輩が生きていた頃の、あの日のこと。
明るい光に包まれた、優しい記憶。
私は目を閉じた。
___
椅子に座って机の上で書き物をしている先輩を、身を乗り出して、隣の机に座った私が見下ろしている。
先輩、今度の創作絵本、凄い力作ですね
どうしたんです?
どこかのコンペにでも応募するとか?
いや、そういうわけじゃないよ
…これはね、私の大事な人にあげるものなんだ
え〜、恋人とかですか?
幸せ者ですねぇ〜
…なんだい、その目は
残念ながら違うよ
私がこれをあげるのは…
先輩は微笑んだ。
…やっぱり教えない
知りたいのなら、推理してみるんだね
…環はそういうの、好きだろう?
んー、そうですけど
先輩のいけずぅ
___
もう一度目を開いた時には、もうその幻は消えていた。
扉を閉めて、私は窓際まで歩み寄り、窓の外を眺める。
私を見ていて、夕…。
…それに、ユカ先輩。
そう、祈る。
窓からは、長雨に耐えて花を咲かせる桜並木が見えた。
ほどなくして、白石先生に連れられ、関係者がやって来る。
白石先生、九重先輩、逸樹、千秋さん、紗枝。
これで役者は揃った。
白石先生から事前に説明を受けているためか、彼らは一様に静かだった。
私は口を開く。
舞台の幕を引くために。
「皆さんにお忙しい中来ていただいたのは、今回の事件の真相が分かったためです。
サークルの皆を殺したのは、あなたですね__」
多分、犯人は皆さんの予想を裏切ってないと思います。
でも、動機と登場人物全員の人間関係までわかったら凄い。




