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エイプリル・フール  作者: いちい
緑青に錆びゆく縁
24/45

4章 1話




すいません。

昨日は忙しくて、うっかり更新忘れてました。

本当にすいません。






助けが来るまで、あと2日。






私は翌朝目を覚ますと、手早く身支度を済ませ、すぐさま危険を警告するために、夕の部屋に向かった。

それにしても、どういう風に話をきりだそうか。

早朝の冷たい空気が身を切るような中、悩みつつ歩いていくと、早くももう夕の部屋の前だ。


私は深呼吸して、ドアを叩く。


「夕、いる?朝早くごめん。

環だけど、開けてくれる?」


「んー?環ぃ?

待ってー、今開けるから。」


一拍後に間延びした返事があった。

こんな早い時間では当然かもしれないが、夕は在室中だった。

しばらくの間、着替えでもしているようで、ばたばたとした音が漏れ聞こえてくる。


3分後、扉が開いた。


「環、おはよー。まあ入ってよー。」


まだ寝癖のついた頭で服だけ着替えた夕が、扉を開いて私を招く。

私は部屋の中に足を踏み入れた。


夕の部屋には以前にも入ったことがあるのだが、相変わらず意外にも片付いており、物は少ない。

私は夕に勧められて、入ってすぐの居間のテーブルにつく。

夕も向かいに座った。


「で、こんな早くに何があったのー?」


私は夢のことを話すか、情けないことにまだ躊躇していた。

しかし、仮に親友に狂人扱いされたとしても、それでも私は夕に死んで欲しくない。

昨晩、私は心の中で誓ったのだ。


自分の命を犠牲にしても構わない。

それでも夕を助けたいのだと。


私は夕に、知っていることを包み隠さず話した。


拙い言葉ではあったし、何度もつまってしまったが、夕はそれでも黙って聞いてくれた。


私がすべてを語り終えると、夕はやっと口を開いた。


私は身構える。

その口からでるのは、果たして拒絶の言葉か、それとも理解の言葉なのか。

夕が次の言葉を言うまでの一瞬が、永遠にも思われた。


「それでぇ、アタシは何をすればイイのー?」


夕は、あっさりとそう言った。


私はうろたえる。


「え、夕、ちゃんと聞いてたの?

だって私は、予知夢なんて得体のしれないものを根拠に、夕が殺されるって言ったんだよ。

どうしてそんなあっさり信じられるの?

変なこと言ったっていう自覚は、一応私にもあるんだよ?」


夕は、魅力的な笑みを浮かべて、答えた。


「そんなの、決まってるー。」


一度言葉を切ると、口元をいたずらっぽく歪める。




「だって、親友じゃん。」




私の頬を、熱いものが伝っていくのを感じる。


ああ、これだから…。

どんなにゆるく見えたって、私は夕にはかなわないのだ。


この愛すべき友人を、私は決して死なせたくない。

そんなことは許さない。


今回はあまりヒントになりそうな物が映らなかったが、分かっている範囲で、助言しておくことにした。


「夕、紐に気をつけて。

紫色っぽい紐。」


「んぅー。紐ってことは、絞殺かなぁ。

うん、分かったー。気をつけるー。」


夕も今回ばかりは真面目な表情をして、頷いている。

そして、思い出したように続けた。


「あっ、環ー。

アタシこの前、去年の会誌借りてたじゃん?

気になることが書いてあってさあ。

ちょっとこの、ユカ先輩の話、見てみてー。」


そう言って、夕は去年の会誌を机の上から取り上げて、あるページを開いて私に渡した。

そのページの物語を読んで、私は愕然とする。

そこに書いてあった先輩の話は、童話の白雪姫を現代風にアレンジしたサスペンスものだったのだが、流し読みしていくと登場人物の死因が、発見された順に、刺殺、毒殺、絞殺、撲殺。

心当たりがありすぎる並びだ。


「コレって、環がさっき言ってた夢のと一緒じゃないー?」


そう、まさにその通りだったのだ。


「これは…。うん。

とにかく、今回の事件の、犯人の動機ははっきりしたね。

他に思い当たることも、特にないし。」


「今日はじゃあ、どうするー?」


夕が言う。


「私はなるべく夕と一緒に行動するつもり。

あと、夕はどうしたい?」


う〜ん、と夕は唸っている。


「そういえばさぁ、今までの二つの事件のとき、皆ってなにしてたんだろー?」


「本当に動機がユカ先輩なら、部員かその関係者があやしいよね。

あるいは、先輩の私的な友人とか。

でもそっちはあんまりわかんないしなあ。」


言われてみれば気になる。


夕は、よしっ、と言って手を打つ。


「折角だし、皆のトコまわって訊いてみよっかー。

犯人がもしわかったら、捕まえちゃって、アタシも安全!ってなるかもー。」


確かにそれができれば苦労しない。

しかし、そう上手くいくだろうか。


「でも、犯人が動いたら…。

藪蛇になっちゃうよ。」


「そしたら逆にボロを出すかもしれないし、チャンスだよー。

やっぱ、女は攻めてかなきゃ!」


夕はシャドウボクシングのつもりか、自分の口で、しゅっ、しゅっ、と言いながら、拳を(くう)に振り抜いている。


それはそうかもしれないが、やはりもしものことがあるかもしれないし、心配だ。

せめてもう一人くらい同行してくれれば…。


そうだ。


私の頭に名案が浮かぶ。


「それじゃあ、逸樹も連れていこう。

用心棒になるかも。」


「えぇー。

…まぁ肉の盾くらいにはなるかなぁ。」


夕は少し嫌そうな顔で渋ったものの、妥協はするようだ。

それでも、相変わらずのゆるい口調で、さりげなくひどいことを言っておくのを忘れない。

さすが夕。

いついかなる場合でも安定だ。


「夕ぅ…。」


そうして私たちの今日の予定は、着々と埋まっていったのだった。









明日も更新します。



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