1章 1話
___ここは……どこ……?
私は気がつくと真っ赤な空間にいた。空も地面も、まるで夕方の空の空のように、いや、それよりも深い紅に包まれている。
どこまでも続いていそうで、それでいて閉塞感があり、広さを読み取ることはできない。
とにかく、まずは情報の把握が不可欠だ。周囲を見回してみる。
すると、何か鉄くさい臭いが鼻につく。臭いの出所を探ると、その赤の中に異物があるのが目についた。
あるいは初めから私の目には映っていたのかもしれない。
しかし私には認識できなかった。いや、したくなかったのだろう。
なぜなら、“それ”は、私の精神が許容できる範囲を軽く飛び超えている物体だったのだから。
そこに鎮座している異物の正体は、知人四人の無惨な姿だった。
今時流行らないような黒縁眼鏡の女が、その目を驚愕に見開いて、胸から血を流している。
他にも、青くなった顔を苦悶の表情のままに歪めて転がっている、体格の良い男。
派手な印象の容姿の、長く伸びた爪を、紐のかかった自らの首に食い込ませる女。
そして、何か私に違和感を感じさせる、穏やかな微笑みを浮かべながら、力なく横たわっている青年。
「あ………うぇ……。」
私は無意識のうちに声をもらしていた。なぜだかわからないが、私には確信があった。
彼らは他の誰でもない、私のせいで死んだ。いや、殺されたのだ。
濡れた泥土のように重くまとわりつく絶望の中、しかしそれでも、罪悪感と悲しみは、私に目を逸らすことを許さない。
もう何も考えたくないと、ついに思考を放棄した私がそこで棒立ちになっていると…。
「なあに~?一丁前にアンタ、傷ついちゃってる?あははっ、そうだよ。それは全部アンタのせいだ。」
場違いなほど明るくハイテンションで、しかし悪意がこれでもかとまぶされた声がその場に響く。
声を辿ると、私の目の前に折り重なった骸のずっと先に、ぼんやりと靄を纏った人影のようなモノが揺らめいている。
そちらに気を取られていると、突然後頭部に衝撃を感じ、そして私は___
最後に声が聞こえた。
「ねえ、アンタは真実にたどり着けるかな?」




