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エイプリル・フール  作者: いちい
紫の嘲笑
17/45

3章 1話



ついに3章突入です!


実は、概ね1章=1日になってるんです。例外もありますけどね。


 




 救助が来るまで、あと3日。



 ◆◇◆◇◆




 私は飛び起きた。

 またあの胸糞悪い夢を見てしまった。

 荒い息を整えて、ベッドサイドに置いた腕時計で時間を確認すると、午前6時。

 随分と早く起きてしまったものだ。


 それにしても、今度の夢は確かに不愉快だったが、今までにはない成果があった。

 幸いにも、時間という手掛かりを得ることができたのだ。

 今度こそ被害者を助けられるかもしれない。


 一筋の希望が、私の心にさしこむ。


 しかし…。

 私だけでは万が一の場合、対処できるだろうか。

 やはり誰かの協力が欲しい。


 そう、誰か…。


 ___逸樹なら信用できる。


 それなら彼に相談してみようか。


 それでも…私は思い直す。

 夢のことは、今しばらくは私一人の胸にしまっておこう。まだアレが予知夢だという確信があるわけでもない。

 決断するのは、部長の発見現場で確認をとってからでも遅くはないはずだ。

 なにより___


 いくら親しくても、いや、親しいからこそ、信じてもらえなかったらと考えてしまう自分がいる。

 客観的に見て、そんなことを言い出す人間は、狂人と認識されても仕方ないだろう。


 ああ、こうして暗くなってばかりいられない。

 今日は皆で集まるんだった。


 私は暗澹とした思考をここで打ち切り、身支度もそこそこに、寮の食堂へ行った。

 一人で席につき食事をとっていると、紗枝を見つける。

 紗枝は私の存在にまだ気付いていない。


 こうして見た感じでは、やはり少なからずショックを受けているようだ。

 それも当然か。なにせ、私たちよりは格段に短い関係だったとはいえ、自分が一昨日話していた人物が、その次の日には殺されてしまったのだから。

 精神的に何もないはずはない。


 心配だ。

 私は紗枝に声をかけることにした。


 人波を掻き分け、食事の載ったトレー片手に、紗枝の座る席に移動する。


「紗枝、おはよう。

 やっぱりまいってるみたいだね…。」


 紗枝はゆるゆると、首を横に振る。


「いえ、紗枝よりも、大変なのはセンパイでしょう。付き合いが長くていらっしゃるようでしたし。

 大丈夫ですか?」


「…そうだね。やっぱり信じたくないよ。

 でもホントなんだよね。」


 やりきれない、というのが私の本音だ。


 紗枝は彼女なりに私の複雑な心境を汲み取ってくれたのか、そのまま私と部室へ移動することとなったが、話しかけずにただ私と一緒にいてくれた。




 紗枝を連れて淡々とキャンパスを歩く。

 満開の桜も、ここ最近の雨でだいぶ散ってしまった。

 しかし、私はその光景に心動かされることはなかった。


 なんだかぼんやりとしてしまって、実感がない。

 今も、ひょっこりと部長が出てきて、また私にいつも通りの挨拶をしてくれるような気がしている。

『おはようございます、小塚さん。

 何故(なにゆえ)そんな、しみったれた顔をしているのですか。

 話を聞くだけなら、聞いてあげなくもありませんけれど?』、なんて。


 そんなことは。


 もうないというのに。



 なるべく急いで来たのだが、部室の前に着いた頃にはそれでも、もう9時になっていた。

 少し考え事に時間を取られすぎてしまったかのしれない。


 まあ、そう遅い時間というわけでもないし、考えてみれば昨日の連絡時点で集合時間を決めていたわけでもないのだ。

 皆、思い思いの都合の良い時間に集まって来るだろう。


 私は、がらっとドアを開いた。





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