2章 6話
その日は結局、皆混乱していたため、翌日改めて部室に集まることを関係者の全員に伝えるだけ伝えて、解散となった。
私も今は一人、自室のベッドに寝転んでいる。
今日は夕もいないので、なんとなく寂しくなって窓の外を眺める。
まだ雨足は強く、当分止むことはなさそうだ。
ざあざあと降り続ける雨の音を聞きながら、私は物思いにふけっていた。
一体、私を悩ませる、あの赤い夢は何なのだろうか。
もしもアレが、現実に起きるはずのことを本当になぞっているのなら、アレの正体は、いわゆる予知夢というやつなのだろうか。
しかし、いくら記憶を浚ってみても、そんなものを見る心当たりなどない。
だが現に、私夢で見た光景と現実の事件には、偶然にしてはありえないくらいの符号があるのだ。
考えれば考えただけ混乱してくるような気がしてきた。
これ以上うじうじ悩んでも、得るものはないだろう。
頭の中がごちゃごちゃして、考えなんてまとまらない。
「やっぱり、部長が見つかったところに明日行ってみよう。怖いけど…。」
それでも確認せずにはいられない。
それに、犯人について、手がかりが残っている可能性もある。
もしアレが現実に起きることなら、まだ3人も犠牲者がでることになるのだ。放っておくことなどできない。
夢の通りなら、危ないのは多分___都馬、夕、逸樹だ。
「いや…それならもう1人いるのかな。
背後から殴られて殺される___私が。」
再び窓の外を眺める。
どうやら私は、自分が思っていたよりずっと長く考え込んでいたらしい。
あたりは日が落ちて、分厚い雲がわずかに赤味がかってきてしまっていた。
赤…。嫌でもあの夢を彷彿させる、今の私にとっては忌々しい色だ。
特別な理由があるわけではないが、小さいころから赤は好きな色だったのに。
私は溜息とともに、悪い想像を胸から吐き出すと、立ち上がり、闇に包まれていた部屋の電気をつけた。
「にゃー。」
いつの間に部屋に入り込んだのか、クロが心配そうに鳴いた。
まあ賢い彼のことだ、おそらく私が部屋に入る時に、一緒にドアをくぐるなり、どこかの開けっ放しの窓を通るなりしたのだろう。
「私は大丈夫だよ。」
果たして私はそれを、クロに言ったのか、あるいは私自身に言ったのか。
私にも分からなかった。
雨音はまだ止まらない。
ごうごうと唸る風を伴って、いっそう強さを増して、窓に吹き付けている。
私は黙って、クリーム色のカーテンを閉める。
今日はなんだかもう、疲れてしまった。
相変わらず気分は優れないが、なんとか食堂へ赴き、最低限の食事だけをとって、糸が切れたようにベッドに倒れこんだ。