好きと言う気持ち
***BL*** 僕の好きと君の好きは違うらしい、、、。 ハッピーエンド
僕は、他の人とちょっと違うのかも知れない、、、。
僕は「好き」が何か分からない
好きだからと言われた。
僕も好きだよ?
一緒にいたいと思うし、何かあった時、一番最初に頭に浮かぶのは君だ。
君の好きは、僕の好きとは違うらしい、、、
好きにも色々あるのかな?
僕の好きなもの、、、
一番は君
色なら白
果物は何でも好き
雨の日はちょっぴり好きで、春や秋の晴れた日は大好き
布団が好きで、寝るのも好き
僕が、「僕も君が好きだよ」と言った時、君は淋しそうな顔をして
「ちょっと違うんだ、、、」
と言った。
それから君は僕を避ける様になった。
僕が君の好きを分からないから、呆れちゃったのかも、、、。
どうして今まで通りじゃいけないんだろう。僕はどう答えたら正解だったの?
いつも一緒にいてくれた君が、僕以外の人の横にいる、、、何だか、変な気分になる。
高校2年生の秋に、君と上手く行かなくなった。
それから結局卒業するまで、元に戻る事は無かった。
僕も君を追い掛けるのを辞めて、一人でいる時間が多くなって、僕は大学受験の勉強に逃げた。
*****
大学生になっても、僕は彼を忘れられなかった。
バイトで遅くなった日、駅前の居酒屋の前を通った。何と無く、店内を見たら彼がいた。
「うわぁ、、、格好良い、、、」
頭には白いタオルを巻いて、腰にはエプロン。黒い半袖のTシャツが凄く似合っていた。
バイトの募集が出てたから、僕は思わず電話番号を控えて、面接をした。
「武田、、、何で、お前、、、」
嫌そうな顔をされ、あからさまに溜息を吐かれた。
「小野田、仕事教えてやって」
他人に任された。
久津和くんが教えてくれるんじゃ無いんだ、、、。
彼に仕事を教えて欲しかった。
でも、そんなの無理か、、、。
やっぱりね、、、。
駅近いこの店は繁盛店で、いつも混んでいた。
覚える事がいっぱいで、ずっと失敗ばかりだったけど、小野田くんは優しくて
「いいよ、いいよ。大丈夫、何とかなるよ」
と庇ってくれる。
でも、久津和くんは違った。僕の方は絶対見ない。僕が彼の方を見ても、視線は絶対合わない。
何週間経っても、彼は僕を無視した。
挨拶はしてくれるけど、それだけだった。
彼が試験中で、バイトが休みだと凄く淋しくてがっかりする。
逆に、何時もは一緒じゃ無い日に、誰かの代わりに彼がいる時は嬉しい。
勿論話し掛ける事は出来ないけど。
「新一っ!」
入店して来たお客さんが久津和くんを呼ぶ。
「今日も混んでるね」
と笑いながら、彼の後を着いて行く。知り合いなんだ。
可愛い女の子。ハキハキしていて、自分の意見をはっきり言う感じ。長いポニーテールがよく似合う。一緒に来た女の子に、美味しいものを勧めているから常連客みたいだ。
配膳をしながら、彼女に話し掛けられると笑いながら応対する彼。
僕にはもう、そんな顔を向けてくれない。
そんなの分かっているのに、彼の側にいたい。
*****
珍しく久津和くんの方が先に上がった。彼女も席を立ち会計をする。
僕もバイトの終わる時間、更衣室でエプロンを外す。彼はもういない。
僕は相変わらず、彼に無視をされ、挨拶さえして貰えなかった。
まだ仕事をしている人達に、頭を下げて店を出た。
久津和くんがいた。さっきの彼女と一緒だった。彼女の友達二人は駅の方に歩いて行く。
彼は彼女の腰に手を回し、キスをした。
うわ、、、、。
彼の大きな手が、彼女の小さな顔に触れ、彼女は彼の首に手を回す。
ああ、、、付き合ってるんだ、、、。
キスをする二人から目が離せない、、、。
久津和くんが初めて僕の方を見た。冷めた視線で、「何を見てるんだ」って顔だった。
そして、ワザと激しくキスをした。
僕はその時、初めて涙が出た。
久津和くんが好きだ、、、。そう思いながら、二人の横を通り過ぎた。
**********
高校の時、武田の事が好きだった。
武田に触れたいと思う程に、嫌がる彼を俺の物にしたいと思う程に、、、好きだった。
でも、武田の好きは俺のとは違った。
告白した時、「僕も君が好きだよ」と言ってくれたけど、何て言うか、、、軽かった。
そう、例えば「猫が好き」とか「ラーメンが好き」とかみたいな感じ。
俺の為に悩み、眠れなくなる程好き、、、と言う感じでは無い。
だから、俺は武田から離れた。
報われ無い気持ちから逃げたんだ。
いつか、このドス黒い感情が抑え切れなくなる前に、、、。
武田もすぐに俺を諦めた。俺が他の友達と一緒にいる様になると、最初こそ俺を視線で追ったり、話し掛けて来たけど、それもいつしか無くなった。その程度の好きだった。
それなのに、バイト先に現れた。しかも、客では無く店員として、、、。
正直、嫌だった。
俺はまだ、武田を忘れていない。アイツを見ると辛かった。だから、アイツを見ない様にした。
仕事を教えるのは俺の担当だけど、今回は小野田に任せた。彼だって、新人教育が出来る様になら無いといけない。良い機会だと思う。
そんながっかりした顔をしないでくれ、、、。
武田は分かりやすく落ち込んだ。
仕事中に視線を感じる事もある。
それでも俺は無視をした。あんな思いはもうごめんだった、、、。
俺にはセフレがいる。お互い、訳ありで気が合うと言えば気が合った。
店で知り合った女。名前は知らない。俺達はそれで充分だった。
彼女が店に来た日。武田より早く上がった。彼女も俺を追う様に店を出た。一緒に飲んでた友達を帰し、ホテルに行こうと誘われた。
久しぶりにそれも良いか、、、。と考えていたら、武田が店から出て来た。
俺は彼女の腰に手を回し、引き寄せた。キスをする。
武田に見える様に、ワザとした。彼女も俺に腕を回し、それに応えた。
武田、お前は俺とこんなキス、出来ないだろう?俺の「好き」は、こう言う好きだ。お前の「好き」とは違うだろう?
そう思いながら、アイツを睨んだ。一度アイツの顔を見たら、目が離せない。
俺の大好きなアイツの顔、、、。
武田は、無表情のまま、涙を流した。
そのまま静かに歩き出し、俺達の横を通り過ぎる
「お疲れ様でした、、、」
俺に挨拶をした。抑揚の無い、静かな声。
彼女の激しいキスに応えながら、彼を見た。
涙を拭いている、、、。ザマアミロ、、、。
*****
俺は、ホテルで彼女を抱いた。頭の中は、泣いた武田の事でいっぱいだった。アイツを忘れる為に彼女を抱く。
彼女も忘れたい何かがあるのか、俺の事は無視して行為に耽った、、、。
*****
明け方、家に帰り、自分の部屋に入ると虚しくてたまらなかった。
アイツさえ、俺の前に現れなければ、こんな気持ちにならなかったのに、、、。
何とも言えない気分になる。
本当は分かっていた。アイツを責めても仕方が無い。俺が勝手に好きなだけだから、、、。
それでも、この気持ちを持て余して、アイツを攻撃しそうになる。
だから、俺は出来るだけアイツから離れていたいんだ、、、。
**********
僕は、久津和くんと恋人のキスシーンを見て、悲しかった、、、。
久津和くんからしたキスは、凄く情熱的で、それに応える彼女の表情は綺麗だった。
愛し合ってるんだな、、、。
そう思ったら、涙が出た。
長い空白の時間で、彼に恋人が出来ても仕方が無い。僕はずっと彼が忘れられなかったけど、彼の時間は前に進んでいるんだ。
忘れないと、、、。
そう思ったら、また涙が出た。
一晩涙が止まらなかった。身体中の水分が涙になって出てしまう、、、。そんな風に思いながら疲れて眠ってしまった。
**********
「武田くん、大丈夫?」
「えっ、、、と、大丈夫です。ちょっと目が腫れてるだけです」
「ちょっと所じゃ無いけどね」
武田くんの目はパンパンに腫れていた。こんなに腫れるの?って程に腫れている。
まぁ、それでも店が稼働中は頑張って貰わないと、武田くんはいつもの様に淡々と頑張っていた。
*****
「昨日の武田はヤバかった」と開店前の更衣室で盛り上がっていた。久津和は、エプロンをしながら背中を向けて準備をする。
「めちゃくちゃ目が腫れてた!」
「あんなに、人間の目って腫れるんだな!」
「夜泣くと腫れるって、彼女が言ってたけど、夜泣いたのかな?」
「それにしても、夕方まで腫れが引かないなんて、相当じゃね?」
「冷やしたり、マッサージしなかったのかな?」
「女子じゃ無いから、そんなの知ら無いとか」
昨日武田と一緒にバイトに入っていた俺達とは対照的に、久津和は一言も話さなかった。
**********
あれから僕は、何も考えられなくなった。涙と一緒に色んな感情が流れ出たみたいに、彼の事を考えるのを辞めた。
考えようとすると、頭と心がブレーキを掛けるみたいだった。
ボーっとする時間が増えて、集中力が無くなった。授業中は大丈夫なんだけど、それ以外の時は無気力だった。
*****
仕事、辞めようかな、、、。
でも、そんなの無責任過ぎる、、、。まだ、みんなみたいに出来ないけど、ちょっと楽しくなって来たし、、、。
少し時間が空く度に、そんな事をずっと考えていた。
*****
いつもなら、久津和くんと一緒に仕事が出来る日は、楽しみだったのに、、、今日は憂鬱で仕方が無い。行きたく無いな、、、。そう思いながら、サボる訳にも行かず準備をする。
久津和くんはいつも通りだった。
「ねぇ!」
と呼び止められた。
「はい」
と振り向く。注文を取ろうと機械を取り出すと
「一緒に飲まない?」
と言われた。
「え?」
思わず固まった。仕事中にそんな事言われたのは初めてだった。
どう答えたら良いか分からない。
「あ、、、」
「良いじゃん、5分だけ!此処座りなよ」
と向かいの席を指差す。
困ったな、、、、。
「仕事中なので」
「じゃあ、仕事終わったら、どう?」
どう?とは?、、、
「取り敢えず、連絡先交換しようよ」
「仕事中はスマホ、持てないので、、、」
「じゃあ、俺の電話番号渡すよ」
ペンを取り出し、テーブルに常備してあるナフキンに書き出した。
「武田!ちょっと来てー!」
小野田さんに呼ばれた。
「すいません、呼ばれちゃったので行きますね」
僕は誤魔化す様に厨房に戻った。
「武田、大丈夫?」
「何とか、、、」
「何だったの?」
「一緒に飲まないかって、、、。連絡先交換しようって言われて、仕事中で持っていないって言ったら、携帯の番号書き出して、、、」
「ナンパされちゃったかぁ〜。こう言う店だから、偶にあるんだよね。今日は厨房の手伝い入って、久津和の指示だから」
「ぇ、、、」
「アイツが心配して、俺に呼ばせたの」
「そうなんですか、、、」
「今日、帰り気を付けて、もしかして、あの人武田が仕事終わるの待って、声掛けて来るかも」
「それは無いですよ」
「でも、気を付けるに越した事無いから」
「分かりました、気を付けます」
僕はその日、フロアに出る事なく厨房でセッセと働いた。生ビールをジョッキに注いだり、アルコール類を作り続けた。
いつもと違う仕事は、慌てる事も多いけど、何だかあっと言う間に時間が過ぎて楽しかった。
僕は時間が来て、先に上がらせて貰う。
「お先に失礼します」
と皆んなに声を掛け、更衣室でエプロンを外した。
僕は店内を邪魔にならない様に、通り抜け、レジ対応している人に頭を下げて店を出た。
「お疲れ様」
急に話し掛けられて振り向くと、さっきの人だった。忙し過ぎて、すっかり忘れていた。
どうしよう、店内に戻ろうか、、、。チラリと店の中を見る。みんな忙しそうだった。自分で何とかしなくっちゃ、、、。
「スマホ」
と言いながら、彼は自分のスマートフォンを振りながら
「連絡先交換しようよ」
嫌だな、、、知らない人と繋がりたく無い。
店の前だと迷惑になりそうで、歩き出す。彼も着いて来た。家まで着いて来たらどうしよう。小野田くんに気を付けてって言われたのに、、、。
ちゃんと断らないと、、、
「あの、知らない人と連絡先交換出来ません、、、」
「知らないから連絡先交換して、知り合えば良いんじゃない?」
「う、、、でも、、、」
「面倒臭いな、、、連絡先交換するくらい簡単だろ?勿体ぶるんじゃねーよ」
ドンッ!と肩を押された。
急に遠慮無く押された僕は、バランスを崩した。重たいリュックを支え切れず身体を捻って、転んだ。
「痛っ、、、」
道路の小石で、掌が擦りむけた。めちゃくちゃ痛い。
「対して可愛く無いのに!澄ましてんなよっ!」
悪態を突いて、彼は駅の方に歩いて行った。
助かった、、、。はぁ、、、。
掌を叩く、、、。散々な目に遭った、、、。
「久津和くん、、、」
いつからそこにいたんだろう、、、。
彼はプイッと顔を背けて、僕を避けて帰って行った。
知らない人にあんな事されるより、久津和くんの態度の方が傷付いた、、、。
バイト、、、辞めよう。僕が居たら、彼はきっと嫌な思いをする、、、。
**********
疲れた、、、。
武田が店でナンパされていた。
小野田に
「あれ」
と顎で示すと、小野田はすぐに気が付いて武田を呼ぶ。
賑やかな居酒屋で、酔っ払いにナンパされるバイトの女の子もいる。小野田も慣れたもので、直ぐに武田を呼んでフロアから撤退させる。
これで店内のトラブルは抑えられた。
武田が店を出て行ったのを見届けた時、ナンパした男が建物の影から出て来たのが見えた。俺は急いでバイトを上がった。
店を出た時には、二人は少し離れた場所でやり取りをしていた。スマートフォンを振りながら男が何か言っている。
何かあったら出て行こう、、、。そう思いながら、武田から見え無い位置で様子を伺う。
ナンパ男が武田の肩を押し、彼が倒れた時、思わず走り寄りそうになった。自分を抑える事が出来て良かった。
散々無視して、今更助けてどうするんだ、と思ったんだ。
**********
「え?武田くん、辞めちゃうの?」
「済みません、、、」
「イヤ、別に謝らなくてもいいんだよ?色々事情があるだろうし、、、。あ、やっぱりアレが原因?お店でナンパされたヤツ、、、。もし、それならフロアじゃ無くて、キッチンに入ったら?」
小野田さんが優しくて切ない、、、。
「有難う御座います。ちょっと、勉強の方が疎かになっちゃって、、、」
「そっかぁ、、、。残念。ね、送別会やろうよ。俺、企画するからさ」
きっと久津和くんは来てくれないんだろうな、、、。
**********
僕の送別会は、小野田くんと僕、あと二人の四人だった。年中無休の居酒屋だから、全員参加は難しい。当たり前か、、、。でも僕が退職してから三人で休みを合わせて、送別会を開いてくれるなんて嬉しかった。
あれ?送別会と言う飲み会になっている。しかも、バイト先の居酒屋、、、。
「店長がどうせやるなら、うちでやれって。そしたら、皆んな顔出せるからって」
「そんな事して良いの?」
「店長が良いって言うし、仕事中に酒飲む訳でも無いからね」
「そっか、、、」
やっぱり良い職場なんだよな、、、。
最後に久津和くんが仕事をしている所、ゆっくり見られて良かった。やっぱり彼は格好良い、、、。
小野田くんは、めちゃくちゃお酒を飲んだ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
と言いながら、笑った。
「ねぇ、武田と久津和は知り合いなの?」
「あ、、、中学と高校が一緒」
「そうなんだ。いつも久津和が武田の事気にしてるから、知り合いなのかな?とは思ってたんだ」
気にしてる?
「あ!ナンパの時も小野田に声掛けてた」
「あの日、バイト上がる時やけに慌ててたし」
「そっか、知り合いなんだね」
今では話しもしないけどね、、、。
*****
長い間飲んでいた。お会計をして、皆んなに挨拶をした。久津和くんは居ない。もう上がる時間かな?
「武田、帰り、どっち?」
「左、駅の方に行って、そのまま真っ直ぐ」
「送るよ」
小野田くんが言った。みんな方向がバラバラで、店の前で別れた。
小野田くんが急に話さなくなった。
「気分悪い?水、買って来ようか?」
駅前のロータリー、階段横のベンチに腰掛ける。
「ううん、大丈夫、、、あのさ、、、武田って、フリー?」
フリー?Free?自由? ん?
「あー、、、。付き合ってる人いるのかな?」
「いないよ?」
「好きな人は?」
「いる」
「うわ、即答かぁ、、、」
「うん、、、」
「俺、武田の事、良いなって思っててさ、、、」
え?、、、顔が近付いて、、、ちょっ!
僕は避ける様に、ズルズルとベンチを滑って行く。
「小野田、何やってんの?」
久津和くんの低い声だった。小野田くんの動きが止まって
「あー、、、!」
と俯く。
「ごめん、武田、、、。最後だと思ったら、調子に乗った、、、本当、ごめん。でも、俺、武田の事好きなんだ。もし、また機会があれば、一緒に遊んで?」
小野田くんが笑って言う。
「もし、機会があれば、、、」
彼は、ベンチに座り直した僕に
「ごめんね」
と言って、立ち上がった。
「久津和、武田の事、送って上げて、、、」
え?いいよ、、、僕、一人で帰れるし、、、。
久津和くんを見ると嫌そうだった。
小野田くんが座っていた場所に、久津和くんが人、一人分空けて座る。
「お前って本当、人を誑かすのが上手いな」
誑かす?
「対して好きでもないのに、好きなフリしたんだろ?面白かったか?」
何で?、、、何で、そんな風に言われないといけないんだ、、、。
僕は、ただ、君が好きなだけなのに、、、。
「久津和くんは、僕が嫌いだもんね、、、。僕はずっと君が好きだったよ。今でも好きだ。、、、君が僕から離れた高二の秋から今までずっと忘れた事なんか無かった。君がバイトしてるから、居酒屋でバイトしたし、君に嫌われてるって知っていたけど、一緒にいたかったんだ、、、」
「、、、」
「でも、君はいつまで経っても挨拶しかしてくれないし、一緒にいると迷惑だと思ったから、、、バイトを辞めたんだ。もう、君の前には現れないよ」
「そうしてくれ、、、」
「、、、うん。ごめん、、、でも、僕は君のこと好きだよ。君の好きとは違うって言われたけど、僕はやっぱり君が好きだよ。、、、君は彼女が出来て良かったね、、、。僕の事、嫌いになれたんでしょ?、、、僕も、早く君を忘れたいよ、、、」
「お前の好きは綺麗な好きだよ。俺のはドロドロしている、、、」
「ドロドロ?」
「高校生の時、、、すごく好きで告白した。お前を人に取られたく無かった。誰にも触れさせたく無くて、俺だけのモノにしたかった。お前に触れたいと思ったし、その為にお前を傷付けても良いとさえ思った。、、、でも、武田の好きはそうじゃ無い。もっと軽い好きだった。あのまま一緒にいても、、、俺の気持ちは伝わらないだろうし、いつかお前を傷付けそうだった、、、」
「だから、僕から離れたの?」
「お前も追い掛けて来なかった」
「、、、うん、、、僕と一緒にいたく無いみたいだったから、、、追い掛けられなかった」
「、、、」
「彼女、綺麗な人だね」
僕にもいつか可愛い彼女、出来るかな、、、。
「セフレ、、、」
「せふれ?、、、あ!」
意味が分かって、何だか恥ずかしくなる。
「大人だな、、、。僕にもそう言う相手出来るかな」
「武田には似合わない」
「似合う、似合わないってあるんだ」
「武田は今のままで良いよ、、、今のまま、綺麗でいて、、、」
「僕の事、嫌いなクセに、、、?」
自虐的に笑った、、、。
「別に嫌いじゃ無い、、、」
「嫌いじゃ無い、、、けど、好きでも無い」
「好き」
「好きなんだ、、、」
「お前に俺の好きは分からない」
「じゃあ、教えてよ、、、僕だって、君の事ずっと好きだったんだ。忘れられなくて辛いんだ、、、。中途半端は嫌だよ、、、」
「、、、来て」
手を握って、僕を立たせる。
「後悔するかもよ?」
「後悔?、、、どうせ、もう会えないなら、とことん嫌いになりたいよ、、、」
**********
俺はいつも使っているホテルに武田を連れて行く。もうどうなっても良い。アイツの言う通り、嫌われるなら徹底的に嫌われよう。
もう、二度と会えない位に傷付けば良い、、、。
部屋に入るなりキスをした。乱暴にした。いきなり濃厚で、嫌がる武田の顔を逃さない様に頬に触れる。
「待っ!」
苦しそうに眉間に皺に寄せる。嫌がれば良い、もっと嫌がれ、、、。こんな俺は嫌いだろ?
イヤイヤをする様に首を振る。
俺は、嫌がるお前を抱くのを想像した事があるんだ、、、。
「い、、、き、、、」
?
「息が、、、」
肩で息をする彼を見下ろす。
「息、、、出来ないよ、、、」
俺の胸に寄り掛かる。
「初めて?」
「、、、ずっと、久津和くんが好きだったんだもん。初めてに決まってるよ」
俺は武田を抱き締めた、、、
「鼻で息をするんだ」
「そ、そんなの分かるけど、鼻息が当たっちゃうよ?」
「、、、」
「恥ずかしいよ、、、」
「分かった、、、ゆっくりする、、、」
俺はベッドに武田を座らせる。
頬に触れると、ピクリと反応した。
少し、不安そうな上目遣い。
鼻が当たらない様に、顔の角度を変えてキスをする。
離れて彼を見る。
一度瞬きをして、俺を見つめる。
もう一度顔を寄せる。
薄く開いた唇が、俺を求めている様だった。
もっと見たい、、、武田が変わって行く姿を見ていたい。
シャツのボタンに手を掛けると、チラリと視線を下げる。ボタンを外しているのに気付いたんだ。
伏せた睫毛が綺麗に揃っていて不思議だった。
武田が俺の頬に触れて、そっとキスをした。
まさか、武田からキスをしてくるなんて、、、。
ぎこちないキスが愛らしかった。
キスが初めてなら、自分からするキスも初めてだ、、、。武田の初めてを貰えて嬉しかった。
何処まで触れて良いんだろう。
徹底的に嫌われたいなら、最後までしてしまおうか、、、。
彼を傷つける様に、犯す様に、乱暴に扱う筈が、この時間が愛しくて、勿体なくて、ゆっくり味わいたい、、、。
ああ、、、武田の事が好きだ、、、。
そう思った時、涙が出た。
彼はそれに気付いた。そっと俺の首に腕を回し、俺を引き寄せる。涙にキスをした。
「ごめん、、、武田、、、好きだ」
「僕も君が好きだよ、、、」
あの時と同じ返事だった。
でも、あの日とは違う。
高校生の時、武田から逃げなければ良かった。
彼の言葉を信じれば、こんな遠回りをしなくて良かったのに、、、。
長い長い時間を掛けて彼を愛した。
女とは違う身体なのに、女の様に綺麗だった。
膝をくっ付けて恥じらう仕草も、俺の身体に回した腕も、何も知らずに不安そうなのに、俺に全て任せて委ねてくれる、、、嫌いになんてなれない、、、。大切に扱って、もっともっとと強請らせたい、、、。
**********
温かい布団の中でウトウトとしていると、彼はいなかった、、、。
やっぱり彼は僕が嫌いなんだ、、、。
あんなに気持ち良かったのに、、、二人がお互い溶け合う様に感じたのに、、、ダメだったんだ、、、。
僕は泣いた。初めてのホテルで初めての体験をして、、、ホテルに置いて行かれた、、、。
「武田?風呂、満タンになったから入ろう?」
え?!
振り向くと、ガラス張りの浴室から久津和くんが顔を出す。
僕は、ベッドの上で泣いた。
久津和くんは、僕に近寄りそっと抱き締めてくれた。
「どうした?」
声が優しい、、、高校生の時の彼だ、、、
「久津和くんが一人で帰ったかと思って、、、」
「淋しかった?」
僕は頷いた。
「一緒に風呂に入ろうと思って。立てる?」
「 ? うん、、、」
、、、立てませんでした、、、何で?
僕が久津和くんを見上げると、抱き上げてくれた。
「うわっ!」
「武田、軽すぎ、、、」
と言って、額にキスをする。浴室前で降ろし、床で転ばない様に支えてくれた。
温かいお湯が気持ち良い。
「久津和くん、、、僕の事、好き?」
湯船の横に座る彼は、僕にキスをしながら
「大好き、、、」
と言ってくれた。
遠回りが必要な時もあるのです、、、




