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『ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる』シリーズ

らいふ ゐず ちょこれゐと

 憂慮に憂慮を重ね、熟慮をあんまり重ねていない毎日が続き、僕が再び気付いたのは今日がどこかの国の「せんとなんたら」さんの為の記念日だという事である。家柄的に銭湯は好きだけれども、他国の「せんとなんたら」さんについての知識には疎い為、僕の家ではこの日が意識されることは無い。


 でも僕は学生時代の記憶から、この日がうら若き女性にとって並々ならぬ関心を持つに相応しい日であるという事実を確信している。特に「ちょこれいと」を愛する僕は、その女性たちから一定の関心を持たれるとただで「ちょこれいと」をご馳走になれる日だという部分的な情報を持っているので、今日も会社に出勤する前から涎が出そうになっている。去年は同僚の女性が困った表情をしながら、



「はい…義理のような、そうじゃないような…どうぞ」


と綺麗な洋紙に包まれた箱入りの「ちょこれいと」を僕にくれたので、僕はそれだけでその人を好きになりそうだった。ついうっかり、


「僕、あなたの事が好きになりそうです」


と洩らしたら、



「え…!!そ、そんな、やったー!!」


と大層喜ばれた。けれど調子に乗って次の日も「ちょこれいと」をねだったら、


「は?」


といきなり冷たくされたので、好意的な感情が曖昧になってしまった。勿論「ちょこれいと」をただでくれた女性を嫌いになどなるわけがないが、人間一度甘い味を知ると図々しくなるものである。



 さて、今日はどんな日になるだろうと思って出社すると、やはり社内の女性たちが色めき立っているように感じられた。あちらこちらで、「ともちょこ」だとか言い合いながら「ちょこれいと」を交換し合っている。「ちょこれいと」の新作であろうか?何でもいいから僕にもくれと思った。しかし、そういう気配はまだなさそうである。僕は同い年くらいの同性の同僚に愚痴をこぼす。


「いいよねー。「ちょこれいと」。僕も今日買ってこようかな」



「…お前、そこまでアレなの?」



「アレって?」



「いや…大人になっても、やっぱり今日くらいはデリケートだろそこは」



「「でりけいと」って言っても、「ちょこれいと」は欲しいじゃん」



 僕は正論を言ったつもりなのだが、彼は何かに呆れて変な顔をしている。そうしている間に午前の仕事が始まる。やる事が多かったので集中していたらあっという間にお昼になっていた。僕は弁当を取り出し、黙々と食べ始める。その時、ついに一人の女性に動きがあった。



「あの…これ去年喜んでくれたから今年も…義理のような、もうちょっとのような…」


「もしかしてこれって「ともちょこ」ってやつですか!!嬉しいな!!」



 僕は最新の知識を披露したつもりだったのだが何故か相手は唖然としている。



「は?なんで「友チョコ」なんですか?意味わかんない」


「「ともちょこ」じゃないんですか…じゃあこれなんの「ちょこれいと」なんですか?」


「だからさっき言ったじゃない。義理のような、そうじゃないようなって…」



義理とかそういうのはよく分からなかったけど、響き的に義理は何だか美味しくなさそうだから、そうじゃないほうが良かったので僕は問い詰めた。



「義理なんですか、義理じゃないんですか、はっきりしてください!!そんなんじゃ僕は喜びにくいです」


すると彼女は相当困った表情を浮かべて辺りをきょろきょろ見回している。



「そんな…ここで言わなきゃ駄目ですか?」



 気のせいか、周囲の人達も僕らに注目し始めているような気がする。気がするが、そんなことより、これがどんな「ちょこれいと」なのか僕は知りたかった。主にどんな味がするのかが。



「もう…恥ずかしい…。ぎ、義理じゃないですよ、それ。これで満足ですか?」


「ほぅほぅ…成程。」


僕が満足していると予想外の一言が加わる。



「あたし言ったんだから、あなたもあたしの事好きかどうか訊いても良いですか?」



「好きに決まっているじゃないですか」



だって、美味しい「ちょこれいと」をくれるんだから。僕が言うと相手は顔を真っ赤にして、走ってどこかに行ってしまった。周囲からは拍手が起こっている。同僚が笑顔で語りかけてくる。



「よお!!やるじゃねーか。おめでとう」


「ありがとう。やっぱり「ちょこれいと」は最高だ!!」



 何となく、今後の事について気になる事があるものの、今日はこの「ちょこれいと」を食べて至福の一時を味わわせてもらう事にしよう。まさに、「らいふ ゐず ちょこれゐと」である。

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