#3【充実のトイレ】
学校に馴染み始めた頃にボクは…変と言うか不可思議な話をクラスメイトの大声の噂話で勝手に耳にしてしまった
なんかクラスメイトの話し方が下手くそでいまいち盛り上がりに欠けるトイレに関する噂話だったけど
要約すると授業中にトイレに行き中に誰も居ないのを確認して更に個室も全部誰も居ないのを確認したのにも関わらず用をたし始めるとノックされるとか(誰も居ないのを確認し過ぎな気がするけどトラウマでもあるんだろうか?)
後はドアの下側に3~4センチ開いてる隙間から覗かれたとか、とんでもなくド近眼で便器を舐めちゃいそうなくらいの距離でひたすら掃除してる清掃員のおばちゃんとか、女子トイレに入ると耳鳴りがするとか
ふとし「ぶふぅ…なんだか怖い話をしてるねぇ…たかし君はオカルトって信じてるぅ?」
ボク「信じてる…っていうかオカルト現象があったり居た方が人生とか世界が面白くなりそうだし、オカルトは無い!って切り捨てられるような恨み辛み妬み嫉みの経験は無いからね」
ふとし「つまりぃ怖くないから居ても良いってことぉ?」
ボク「いや、怖い!怖いもんは怖い!けどまだ怪我も病気も呪いも受けてないしまだ生きてるからね!」
ふとし「強いねぇ!僕は怖いのは無ければ無いほど良いなぁ」
ちなみにボクがこの学校に決めた理由の一つにトイレが最新で清潔で充実してるってのでも選んでる、全部の階に男女のトイレがあり全室個室で洋式で温水ウォシュレットが付いてて換気も強めで臭い対策も充分だ
どうしてここまでトイレを気にしてるかって?ボクはお腹がとても弱いんだよ…そう…小さい頃からとても苦労した…汚い話になるから語らないけど…だからこそトイレの設備が完璧と言えるほど整ってるこの学校に決めたんだ!
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カタカタカタカタカ
チャカチャカチャカチャカチャカチャ
タァン!!
ギュルるるるる…グルルルルルルル…!?!?!?
ヤバい!?PCの授業中なのに来てしまった…そう!便意がっ!!
周りを見てみる…みんな静かにモニターを見ている…良かった…ボクの特大ギュルギュル音は気付かれてないかスルーされたようだ…そもそもこの2ヶ月間で授業中に何回トイレ行ったか分かんないからみんなもボクのトイレ事情に慣れたんだろう…それでもギュルギュル音を聞かれるのは恥ずかしい
ボクは静かに手を上げた…そして宣言する!
ボク「先生!トイレ行ってきます!!」
情報授業の先生「あいよぉ…行っトイレ」
静かにそして迅速に刺激を最小限に歩き出す…大丈夫…まだ余裕はある…各階にトイレがあるから階段の心配はない…PC教室を右に出て次を左へ行けば直ぐに男子トイレだ!
スッスッスッスッ サッ キョロキョロ
振動を起こさないように静かに歩くのももうお手の物だ、幸いトイレには誰も居ないっぽいな…心置き無く踏ん張れる!
スルスル カチャカチャ スル フゥ ズルズル ズルズル
ちょっとアブナカッタ…急に来るランキングでも上位に入る便意だった、まだ奥底に控えてそうだからこそもう一踏ん張りするけどね!
ズルズルズルズル
コンコン…
誰だ!?臭かったか?うるさかったか?いや…掃除のおばちゃんが掃除したいのかな?
コンコン…コンコン…
けど…トイレ内に誰も居ないの確認したし、トイレに入ってきた気配もしなかったぞ…
コンコン…コンコン…コンコン…
これはもしかしてクラスメイト達が話してた噂話のやつか!対処法を聞いとけば良かった…返事したらヤバそうだな…ノックの回数も増えてきたじゃん…
コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…
けど掃除おばちゃんだったら返事しないと個室の中で倒れてるって思われて大事にでもなったら大変だし返事だけなら平気だよな?良いよね?常識的に行こう!
ボク「入ってま~す!」
コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…
ボク「あ…あの~入ってますよ~急を要してるなら空いてる個室もありますよ~」
なんかヤバい方だったかも…ノックしかしてこないじゃん
コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…コンコン…
ボク「だから入ってますよ~」
ホントウニハイッテイルノカシラァ…
ナニか気配を感じる…下の方から視線を感じる…
目が合った…眉間に皺を寄せて細めた両目でしっかりと
ボク「すいません…もう出ます!掃除の邪魔しちゃってゴメンナサイ!」
ド近眼掃除のおばちゃんだ!掃除が進まないからイライラしてるんだ!
ガチャガチャバタンジャーーガチャバタン
ボクは怒られないように視線も合わせず足早に手を洗いに行った
ボク「すいませんゴメンナサイどうぞ」
アラァ…ソンナニアセラナイデ…ユックリシテイッテイイノニ…
いや!あんなにノックされたら焦りますが!そんでトイレはゆっくりする所じゃない!!
ジャバジャバジャバジャバ
急いででも手はしっかり洗うけどね
アァ…カミガナイワァ…アカイカミトアオイカミドッチヲホジュウシヨウカシラネェ…
掃除おばちゃん独り言スゴいな…鏡越しにおばちゃんを見てみるととんでもなく屈んでる…やっぱりド近眼なんだ…
アッ…ココニモヨゴレガアルワァ…ゴシゴシペロペロ…キュッキュッベチャベチャ…
ボク「お疲れ様です~」
ボクは足早にトイレを出た…PC教室に戻る…
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休み時間
ボク「ふとし君…会ったよ…ド近眼の掃除おばちゃんに…」
ふとし「あのおばちゃんとっても不気味だよねぇ」
ボク「不気味なんてもんじゃなかったよ!足音も気配しないし!ブツブツ独り言を言ってて怖いし!ノックの回数多いし!」
ふとし「あのおばちゃんも可哀想なおばちゃんなんだよぉ…孫が生まれたと思ったらぁ孫を産んだ娘を病気で亡くしてぇ、夫は事故にあって半身不随でぇ友人や親戚はもう殆ど交流無くてぇ、赤ちゃんの孫も身体弱くて入院中でぇ」
ふとし君詳しすぎないか?ゴシップ好きの近所の奥様方と交流でもあるのか?
ふとし「不気味だけどぉ良い人だから普通に接してあげようねぇ」
ボク「情報通のふとし君や…もしかして掃除のおばちゃんの名前も知ってたりする?」
ふとし「知ってるよぉ」
もしかして…もしかすると…ひょっとして…勘違いであってほしいけど…たぶんそうだよなぁ…
ふとし「這刷花子さんだよぉ」
おぉっふぅ…もう名前からしてトイレの不可思議詰め合わせって感じだ…なるべくして成ってしまった人なのかも知れない…今度からは怖がらずに挨拶しよう…
ふとし「ちなみにトレードマークは左右で違う赤と青のゴム手袋だよぉお洒落さんだよねぇ」