大切なぬいぐるみ6
結婚の約束をした2人は、翌日土曜日の朝を迎えた。
2人は待ち合わせをして女の子の実家に向かう。
女の子「先生。ここです。」
男の子「うわー。すごい豪邸だなー。お嬢さんだっだんだね。」
女の子「そんなことないですよ〜。ねえねえ、お母さーん。」
女の子のお母さん「なんだい。おや?先生ですよね。間違いない。先生だ!いや〜お久しぶりです。その節はお世話になりまして。さあさあ、あがって下さいよ。」
女の子のお父さんはテーブルで読書をしている。
女の子のお母さん「ちょっと、お父さん!ちょっと!ちょっと!」
女の子のお父さん「なんだよ。。。おや?先生じゃないですか!さあ、どうぞこちらにお座り下さい。」
4人でテーブルを囲んだ。緊張する男の子。
男の子「あの、娘さんと。娘さんとの結婚を認めて下さい!」
女の子のお父さん「おお、そうか!お前、ついにやったな!」
女の子のお母さん「まー。本当なの!良かったわ〜。」
男の子「えっ?」
女の子のお父さん「ずっと先生と結婚するって努力してたんですよ。ついにやったな!おめでとう!」
男の子「えー。あの、結婚を認めていただけたのでしょうか?」
女の子のお母さん「認めるも何も。娘の夢を叶えてくれて感謝していますよ。命を救ってもらって、幸せにまで。本当に感謝しています。どうか、娘をよろしくお願いしますね。」
あまりにもあっさりで拍子抜けする男の子の隣で涙を流す女の子を優しく抱きしめる男の子だった。
女の子とお母さんが作る料理を4人で食べ、会話も弾んだ。いかに女の子が努力したのか、これまでの話を聞き十分過ぎるくらい男の子は理解した。
僕は「はい」って即答しなかった。部長に助けてもらったんだ。こんなに自分のことを想ってくれてたなんて。絶対に幸せにしないと。
男の子「ん!これすごく美味しいですね!」
女の子のお母さん「何年も腕磨いたからねー。先生気に入ってくれるかな。って毎日毎日だったのよ?」
女の子のお父さん「私は毎日美味しい食事で嬉しかったけどな。ああ、もちろん母さんのも美味しいぞ。娘のは先生への愛情が入ってたからな!」
女の子「もー言わないでよ〜。じゃあ緊張するけど、先生のご両親に報告に行ってきます。」
女の子のお父さん「必ず認めてもらってこいよ!無事認めてもらったら改めて私達もご挨拶に伺います。」
女の子のお母さん「2人とも気をつけてね。」
男の子「幸せになれるように努力しますので、これからもよろしくお願い致します。」
両親に見送られて男の子の家に向かう。しばらく歩くと男の子の家に到着した。
女の子「あれ?先生の家ってここだったんだ!壁の色がいいって前から思ってたの。そうか。ここ、先生の家だったんだ。」
男の子「知ってたんだ!さあ入って。ただいまー。」
お母さん「おかえ。。おやおや。すごく綺麗な方ね。」
男の子「ウチの病院の看護師さんなんだ。」
お母さん「うわー。本当に綺麗ねー。今日は、お仕事ですか?いつも息子がお世話になっています。さあさあ。あがって下さいな。」
男の子「お父さんは?」
お母さん「ああ。2階だよ。。お父さーん。ちょっと!」
お父さん「なんだよ。大声。。な、なに。。女優さん?むちゃくちゃ綺麗じゃないか!誰?有名な方?」
お母さん「病院の看護師さんですって。お仕事みたいなの。」
興味津々の両親に促され、再び男の子の家でもテーブルを囲む。
女の子「あ、あの。どうか、先生との結婚をお認め下さい。」
お父さん「えっ?結婚?。。。。おいおいウソだろう。。そんなことあり得ないだろう!こんな美人と?」
お母さん「本当なの!夢じゃないよね?いったいこんな若くて綺麗な子とどうやって仲良くなったの!」
女の子「あの、実は私がずっと好きで。昨日初めて話をしました。」
お父さん「ん?よく分からないな。昨日初めて話?それで結婚って。」
男の子「ああ、相談があるって言われてね。聞いたら結婚して下さいって。」
お母さん「えーっ。そんなことある?何でよ!ねえ、ウチの子なんかで本当に大丈夫なの?」
女の子「実は、私は小学生の時に事故で助からないはずの命を先生に救ってもらったんです。その時からずっと先生と結婚するって頑張って。看護師になって病院に就職しました。友人の助けもあって、昨日結婚を申し込みました。」
お父さん「そんなことがあったのか。それにしても、こんな素敵な女性がウチの子に?信じられない。」
お母さん「あのこちらは大歓迎なんだけど。いやね。果たして、そちらのご両親が認めてくれるのかねえ。」
女の子「はい!やっとか。ついにやったな。って祝福してくれました。」
お父さん「何?もう既に認められているのか!いや〜。生きているとこんなことあるんだな!おい、母さん。夜は寿司頼むぞ!」
お母さん「そうね。頼んでくるわ。」
お父さん「なあ部屋でも案内してきたらどうだ?」
男の子「そうだね。行こうか!」
女の子「うん。」
★★★
2人は先生の部屋に入りました。
女の子「先生の部屋。本がいっぱい。あっ!」
女の子「久しぶり〜。」
ぬいぐるみ「おや?10年振りかな?すごく綺麗になったねー。どうしたの?急に。」
女の子「あのね。私、先生と結婚するの!」
ぬいぐるみ「えーっ!ウソじゃないよね?信じられない。」
男の子「ちょっと待って。話が出来るの!」
女の子「そうなの。事故の後に夢に出てきて、お母さんに病院に持ってきてもらったら話せるようになってたの。もしかして先生も?」
男の子「ああ。ともだちだからね。プレゼントされる前は夢の中だけで話せたんだ。」
ぬいぐるみ「お母さんについて行ったら、女の子の家にぬいぐるみがあったんだ。だから、中に入ったんだよ。」
女の子「病院でいっぱい話が出来て嬉しかったな。ぬいぐるみさんがね、先生にプレゼントしてくれないかって。だから先生にプレゼントしたの。」
男の子「そうだったの!」
ぬいぐるみ「君が、また会いたいって言うからさあ。でも家に同じぬいぐるみがあったのは驚いたよ。」
女の子「これからは、3人で一緒に話せるんだね。」
ぬいぐるみ「いや〜夢みたいだ。けどさー。どう見ても、すごく綺麗だよね。もったいなくない?」
女の子「あーっ!私、先生としか結婚したくないもん。」
男の子「もったいないんじゃないかって僕も思うよ。」
突然、女の子は先生にキスをしました。
女の子「もー。。私には先生しかいないの。」
男の子「分かったよ。ごめん。幸せになろうね。」
ぬいぐるみ「あのさー。見せつけないでくれないかな。僕を後ろ向きにしてからにしてよ〜。だけど、すごく幸せそうだな。おめでとう。」
男の子「ありがとう。でもね、みんなで幸せになろうね。」
女の子「じゃあ。お互いみんなを幸せにする!約束でゆびきりしましょう!」
男の子「ああいいよ。」
2人はゆびきりをして、必ず幸せにすると誓いました。
※※※
食事の用意が出来たと呼ばれる2人は、食卓に向かいながら話す。
女の子「あのね、私は『先生』って呼びたいな。」
男の子「いいよ。じゃあ僕は『お嬢ちゃん』んー。もう大人だから『お嬢さん』がいいかな。」
女の子「うん。ぬいぐるみさんにも教えないといけないね。」
男の子「後で話しをするよ。さあ、食べようか!」
家族で楽しそうに夕食を食べる声が聞こえてくる。
すごいなー。2人とも頑張ったんだな。
ぬいぐるみには、あまりに予想外な出来事だったが、聞こえてくる笑い声に幸せな気持ちになった。