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たいせつな ぬいぐるみ  作者: ぴい


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大切なぬいぐるみ2

 男の子は目標としていた医者の試験に合格し、大学病院で外科医として働くようになりました。


 男の子は、患者にも看護師にも一生懸命。いつも笑顔で接し、親身になって話に耳を傾けました。



 疲れて帰宅するとすぐに眠りにつく男の子でした。


ぬいぐるみ「ずいぶん頑張ってるね。」


男の子「みんなを幸せに。ともだちとの約束だからね。すごく疲れたよ。」


 すごく頑張ってるんだな。。ぬいぐるみは男の子の眠る姿を見つめながら思ったのでした。



※※※


 そんなある日。夕方に、男の子は急いで家に連絡を入れる。


男の子「あ、もしもし。母さん。急患だから今日は家に帰れないんだ。。うん。。。分かったよ。帰る時にまた連絡するよ。」




 患者が運ばれてくると、状況は決して良くなかった。かなり深刻な状態だ。

 もはや、一刻の猶予もない状況だった。



 患者は、まだ幼い小学校の高学年くらいの女の子だった。

 娘のお母さんは、娘の命をなんとか助けてもらうために、必死で男の子にすがるしか出来ることはなかった。



 男の子は、お母さんの肩にそっと手を乗せると、手術室に入っていく。



 男の子は、絶対に女の子を救わなければならないと強く決意し、気を引き締める。



 命を繋ぎ止めるため、男の子は夜遅くまで全力で懸命な治療をやり切った。


 男の子が出来ることは全てやった。


 男の子は、あの時の大切なぬいぐるみを治す気持ちで全ての力を出し切ったのだった。



 眠っている女の子を見つめる男の子は心の中で呟いた。


 お嬢ちゃん。あとは自分の力だよ。頑張るんだよ。




 お母さんに説明を終えると、男の子は外科部長に声をかけられた。



外科部長「君の全員をまとめる力はすごいな。全員の力を全て引き出したから助かったんだ。。その歳で。。いや〜、驚いたよ。」



男の子「部長の技術があったから、何とか乗り切れたんですよ。私の力ではとても無理でした。心から尊敬しています。」



外科部長「んー。。私は長く医師をしてきた。だから分かる。私の力だけでは、あの子は助けられなかった。みんなの力をあれほどまで。。あれは君がいたから助かった命だよ。」



男の子「そうですか。。そうでしたら嬉しいですね。。1人の高い能力も重要ですが、みんなで力を合わせるとすごい力になります。僕はその協力が出来ただけです。」


男の子「部長。。昔。。命を懸けて僕を救ってくれた友人に教わったんですよ。みんなで力を合わせることを。」



外科部長「そうか。。。良き友だったのだな。君は、いい医者になるな。とてもいい勉強になったよ。ありがとう。」



★★★


 男の子はすっかり疲れ果てて、病院の仮眠室で横になると、あっと言う間に眠りにつきました。


ぬいぐるみ「やあ。君、すごいねー。人の命を救ったんだ!あの時、身代わりになって本当に良かったよ。」


男の子「君との約束を守ったから今があるんだ。君が教えてくれた。感謝してるよ。いつも見守ってくれてありがとう。。ねえ、また会いたいな。」


ぬいぐるみ「んー。難しいこと言うな。。今日、僕はすごく誇らしいんだよ。これからも見守るからね。」


男の子「うん。いつもありがとうね。」



 男の子は目覚め、お母さんに連絡して帰宅しました。


 部屋に座り、庭を眺める男の子。



 庭では花が揺れています。



男の子「やっぱり。。会いたいな。。」



※※※ 一ヶ月後 ※※※


 女の子は危険な状況を脱し、退院に向け頑張っているようだ。


女の子のお母さん「先生。何とお礼を言ったらいいのか。。」


男の子「ああ、あと少しですね。。お礼なんて要らないですよ。あの子が幸せになってくれたら嬉しいですね。」



 男の子は女の子に近づくとしゃがんで、女の子としっかり目線を合わせて伝える。


男の子「ねえ、お嬢ちゃん。助かったのだから、みんなを幸せにするんだよ。いつも笑顔で、みんなを助けるんだよ。」



女の子「うん!先生ありがとう。」



 

 女の子は完治し、ついに退院の日を迎えることが出来た。


 男の子が見送る中で、両親と女の子は病院の玄関に到着する。


男の子「みんなを幸せにだよ。約束だからね!」



女の子「うん!ねえ先生。わたし、先生のお嫁さんになる!」


女の子のお父さん「みんなを幸せにして、もっと綺麗にならないと先生のお嫁さんにはなれないぞ。」


女の子「わたし、頑張るもん!」


女の子のお母さん「あらあら。。先生、本当にありがとうございました。」



 別れ際に女の子が何か袋を渡す。


女の子「ねえ、先生。あげる。」


男の子「えっ。。いいの?大切なものじゃないの?何かな?」


女の子「なんかね、先生にあげたくなったの。おうちで見てね。約束だよ?」


男の子「分かった。ありがとうね。」


女の子のお母さん「ごめんなさいね。こんなプレゼントで。娘がどうしてもって聞かないから。。」



男の子「すごく嬉しいですよ!ありがとうね。」



 男の子は、仲良く帰っていく3人を見送った。


 やり切れたこと、一人の命を救えたことが誇らしかった。



★★★


 男の子は家に帰ると、早速女の子にもらったプレゼントの袋を開けました。


男の子「えっ!。。ぬいぐるみ。。全く同じぬいぐるみじゃないか!」



 女の子のプレゼントは、少し汚れているようでしたが、男の子が持っていたぬいぐるみだったのです。



 突然、男の子に心の声が届きました。


ぬいぐるみ「君が無理を言うから。。女の子に頼んだんだよ。もう売ってないんだ。お母さんが子供の時に買ってもらったんだって。」


男の子「えっ!。。会いたかったよ。すごく話がしたかった。。すごい!夢の中じゃなくても話せるんだね!」


ぬいぐるみ「本当に立派になって。。僕は嬉しいよ。だけどね、汚れてるってさー。。君はよだれやお菓子のついた手で触ってたよね?お母さんに洗濯機でぐるぐるされて大変だったんだからね。」


男の子「はは、ごめんごめん。ねえ、これからはお話し出来るの?」


ぬいぐるみ「そうだね。。君は僕に頼らず生きられるようになったからね。。それにすごく大切にしてくれている。だから、これからはいつでもお話しは出来るよ。」


男の子「そうか。嬉しいな。。あっ!ねえねえ、僕の机の上に飾るね。」


ぬいぐるみ「それはいいね!一番君が良く見える。すごくいい場所だよ。」



 女の子がくれたプレゼントは、男の子にとって最高のプレゼントになりました。



 もっともっと多くの人を助けるため、夜遅くまで一生懸命勉強する男の子を優しく見つめるぬいぐるみだった。


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