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大切なぬいぐるみ3

 男の子が医師になり数年が経ち、今年も春がやってきた。若くて元気な人達が病院内を歩いている。



 新しい医師、看護師、事務員か。。若いっていいな。



 友人との約束を守って一生懸命やってきた。気づいたら、若さがうらやましい年齢になってきた男の子だった。



男の子「部長。おはようございます。」


部長「ああ、おはよう!やっぱり若いのは元気あるな〜。君もいよいよベテランになってきたな!あのな、まだ内緒だぞ?親の調子があまり良くなくてな。。実家に帰って開業医になろうか考えているんだよ。」



男の子「えっ。。部長、給料すごく高いのではないですか?」



部長「まあー、確かにそうだがな。。子供も今年就職してな。お金の心配は減った。親にはずいぶん苦労かけたし、なるべく近くにいたくてな。。」



男の子「そうですか。。そのような、ご事情が。」



部長「あとな、この歳になると大学病院の部長は体力的にキツいんだよなー。それにな、私はやっぱり管理職やるより君のように患者と向き合いたいね。医師になった初心に戻りたくなったんだ。管理職は本当は大嫌いさ。まあ私は、根っからの職人みたいなものだよ。」



男の子「そうですか。。僕が言う資格はありませんので。そうですね。。関わってくれた人は幸せになってほしい。それだけですね。」


部長「まだ、考えているところだ。内緒で頼むよ。」




 そうなんだ。。今はいつまでも続かないんだな。




 男の子の働く外科にも新人看護師が入ってきた。なかなか活発で明るい女の看護師さんのようだ。



 だんだん変わっていくんだな。。僕は部長を尊敬している。尊敬している人の元で働けて、すごく幸せなんだけどな。。



 だんだん自分が先輩になっていく。尊敬している人の元で働きたいだけでは、いずれは限界が来るのかな。。



新人「ねえ、先生。彼女いるんですか?」


男の子「ん?。。いや〜、医師として頑張ることしか考えてなかったからなー。。」


新人「それはダメですね〜。先生の幸せはどこにいっちゃったんですか?」


男の子「今でも幸せなんだけど。。ただ、いろいろ見つめ直す時期なのかも知れないな。」



看護師「先生。診察を開始してもよろしいですか?」


男の子「えっ?ああ、お願いします。」



 男の子の仕事が始まった。



看護師「ちょっと新人さん。仕事中に誘惑したらダメだよ?でも若いっていいわね〜。あなた先生狙っているの?なかなかいいセンスだわね!」


新人「いえ。彼がいますから。」


看護師「なによ。。乗り換えるの?まあ先生はいい男だからね。」


新人「ちょっと訳ありでしてね。。彼女がいるのか知りたかっただけなんです。私は彼とラブラブですから。あの〜先輩。なんか思っていたほど忙しくないですね。」


看護師「ああ、最近は紹介状がないと高いお金取られるようになったから昔みたいに混まないよ。前はこんな話をする余裕はなかった。ねえ、先生にいい人いないかな?私が独身だったら絶対に狙うんだけどな。」



新人「先生って。。患者さんを助けることしか考えてないですよね。。あれで先生の彼女は幸せになれるのかな?」


看護師「裏の顔が無ければ。。最高に幸せになれると思う。」


新人「えっ!どんな裏の顔があるんですか!ねえ、教えて下さいよ!」


看護師「いや、知らないわよ。人間って何があるか分からないでしょう?まあ、先生に裏の顔があると思えないけどね。」


新人「びっくりするじゃないですか。。あっ!こんにちは!診察ですね。。」




 仕事を終えると新人看護師は同期の内科に配属された看護師と夕食に出かけた。


外科の新人「ねえ。先生に聞いてみたけど。。彼女がいるとは思えなかったわ。全く頭に無さそうだった。でも、本当にいい人よね。」


内科の新人は「そ、そう!」と微笑む。



外科の新人「ねえ。。好きなの?」


内科の新人「えっ。。う、うん。」


外科の新人「関わりがないのになんで?一目惚れ?」


内科の新人「。。。」


外科の新人「まあいいわ。食べましょう。」


内科の新人「そ、そうね!」



★★★


 男の子は帰宅すると、考え事をしていました。


ぬいぐるみ「珍しいね。勉強しないで考え事かい?」


男の子「ん?ああ、尊敬する人の元で働きたいって思って働いてきたんだけど。。いつまでも、それではダメなのかなって。。」


ぬいぐるみ「確かにな。。いつまでも新人ではないからな。後輩も出来る。やがては、もしかしたら君が一番先輩になるかも知れない。」



男の子「やっぱり。。その考えでは、いつかはダメになるね。。ねえ、どうしたらいいのかな?」


ぬいぐるみ「んー。。自分で答えを見つけるべきだね。いろんな人と話をして、考え方を聞いてみたら?けど、案外みんな何も考えていないと思うけどな。」


男の子「しかし。。良く見たらホコリだらけだな。週末に風呂に入るか!洗って乾かすよ。」


ぬいぐるみ「まあ。。洗濯機に入れられるよりマシだな。それにともだち同士で風呂か。悪くないね!」


男の子「決まり!じゃあ、今日は寝ようか。」



 疲れていたのもあり、早めに就寝する男の子でした。

 

※※※



外科の新人「えーっ!。。。ちょっと、あなた本気なの!まだ、親しくもないのに?良く知らないのに?本当に大丈夫なの?」


内科の新人「うん!。。私。。私、本気よ。」


外科の新人「しかし。。それは、なかなか難しいなー。ちょっと考えてみるわ。」



★★★


 男の子は週末になると、予定通りぬいぐるみと一緒にお風呂に入り、ぬいぐるみをキレイにしました。


ぬいぐるみ「お風呂って楽しいね!気に入ったよ。洗濯機とは大違いだよ。」


男の子「だろう?でも考えてみたら、僕は洗濯機には入ったことないからな。。もしかしたら洗濯機のほうがいいのかも知れないね。」


ぬいぐるみ「そんなはずがないことぐらい分かるでしょう。」


男の子「はは。明日は天気がいいみたいだから、しっかり乾かそうね。」


ぬいぐるみ「うん!」



 翌朝、温かい日差しの中で乾燥させるためにぬいぐるみは窓際に置かれました。




 かつての自分が埋められている庭を見ながら縁側にたたずむ、ぬいぐるみだった。


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