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大切なぬいぐるみ

 男の子は、小さいころパパにプレゼントされたぬいぐるみが大好きだ。


 家にいる時は、いつも一緒。


 大切に抱きかかえ、本を読んだりいつも一緒。


 夜に眠る時も布団で一緒に寝て、とてもかわいがりました。



 男の子は、学校に出かける時には、毎日ぬいぐるみに「行ってくるね。」と声をかけ、帰ってきた時には「ただいま。」と駆け寄り、抱きしめて可愛がりました。



 男の子は、学校の勉強も運動も得意ではありませんでした。そのため、学校ではいじめられたり悪口を言われたりして、学校はとてもつまらない毎日でした。


 男の子は、どうにもならない悔しい気持ちになり、時には怒ったり悲しんだりしました。しかし、怒り、悲しむほど他の子は更にいじめるようになっていきました。



 そんな男の子にとって、家のぬいぐるみに会うことだけが、ただ唯一の心の救いだったのです。




 そんなある日、学校の下校時に一人で歩いていると、すごいスピードで男の子に車が向かって来ました。


 男の子は、もう逃げられない。。。目をつぶって最期の時を覚悟しました。



 しかし、不思議なことに。。いつまでたっても車が来ません。



 男の子は恐る恐る目を開けると、なんと自分の家の前にいるではありませんか。



 なぜだろう?男の子は不思議に思い、再び車が来た場所を見に行くと、大切な男の子のぬいぐるみがボロボロになって落ちているではありませんか。


 男の子は、強い悲しみを抱えながら、ぬいぐるみを拾い、家に持ち帰りました。



 その日の夜、お父さんとお母さんに、今日の出来事を話しました。



お父さんは「そうか。。とても大切にしてたからな。ぬいぐるみが、身代わりになってくれたんだね。」と伝えました。


お母さん「守ってくれたんだね。こんなにボロボロになってまで。。もう直せないね。捨てることは出来ないわね。みんなで、お庭に埋めようか。大切な家族だからね。」


男の子「うん。」



 ぬいぐるみは家族みんなで大切に家のお庭に埋められました。



 その日の夜、男の子は不思議な夢を見ました。なんと、一度も声を出したことのないぬいぐるみが話をしています。


ぬいぐるみ「いつも可愛がってくれてありがとうね。」



男の子「うわー。初めてお話し出来てうれしいな。うん。大好きだからね。」



ぬいぐるみ「僕も君のことは大好きさ。こんなにも可愛がってもらったことは一度もなかったんだよ。。だから、僕は君を助けたんだ。」




男の子「えつ?」




ぬいぐるみ「君は車にぶつかり死んでいた。でも、それは僕には悲しいこと。だから、僕が代わりになったの。これしか君を助けられなかったんだ。」




男の子「そう。。ねえ。もう会えないの?」




ぬいぐるみ「僕は、君の近くに埋めてもらったから、いつでも会えるよ。いつも見守ってるからね。それに。。もう、そろそろお別れする時だったんだよ。」




男の子「えっ。。どうして?」



ぬいぐるみ「君は学校で、いじめられて悲しみに包まれている。家で僕を可愛がって、学校の嫌なことを忘れている。それではもうダメなんだ。みんなと仲良く出来ないといけないんだよ。」




男の子「そう。。僕、どうしたらいいのかな。」




ぬいぐるみ「君は優しい。けど自信を無くしている。いろんな人にひどい目にあわされ傷ついている。まず、いつもニコニコしていなさい。そして困ってる人を助けなさい。弱い人を助けなさい。人を大切に出来る人間になって。」


ぬいぐるみ「君はこの間、困っている子を助けようとした。だけど、勇気が出なくて何もしなかった。僕は、そんな君は見たくなかった。」



男の子「うん!分かった。僕やってみるよ!勇気を出して、困っている人を助け、弱い子を守る!」



 どうしたらいいのか思い悩み、決して楽しくなかった毎日。唯一のおともだちの言う事は信じられた。



ぬいぐるみ「君がそれを出来るなら、僕はずっと見守るよ。約束する。」


ぬいぐるみ「大事なのは形があるものではない。心なんだ。安心して。僕は今までと変わらず君のそばにいるよ。」


ぬいぐるみ「いいかい?もう一度言うよ。困っている人を助けるのは素晴らしいことなんだ。だけど、勇気が無くて見ているだでは、何もしていないのと同じ。いや、むしろひどいことをしているんだ。」


ぬいぐるみ「もちろん、困っている人を見て助けようとも思わず、馬鹿にしたりするのは最低なことさ。いままでありがとうね。僕、すごく幸せだったんだ。」



 男の子は目を覚ますといっぱい涙があふれていた。


 

 男の子はぬいぐるみとの約束を守り、いつもニコニコし、困っている人は一生懸命を助けた。

 すると次第に周りの人も変わっていった。みんなが人を助け、大切にするように教室が、学校全体が、身の回りの様子が変わっていった。




 ある日、ぬいぐるみか再び夢に現れた。


ぬいぐるみ「やあ。ずいぶん君が頑張ったから、みんな変わったね。勇気をもって助けることは難しいこと。でも君はやれた!困っている時に助け合えるようになったのは、君の笑顔と勇気のおかげなんだよ。」



一一一一一


 あれから10年。男の子はすっかり大人になり、人を助ける医師を目指して勉強している。



男の子「母さん。行ってくるよ。」



母親「気をつけてね。今日も無事帰ってくるんだよ。」



男の子「うん。。。行ってくるね。今日も見守ってね。」




 ぬいぐるみが埋められた場所には、1本の綺麗な花が咲き、楽しそうに風に揺れていた。



               〈おしまい〉

【お願い】小説家になろうは、なかなか人の目に触れる機会が与えられない環境で『読んで、何か心に残ったならば、「レビュー」をお願いしたい』です。

 「レビュー」は、人の目に触れる唯一の貴重な機会で、自分では出来ることではありません。

 もちろん「評価」をして頂けるのも作者としては、大変ありがたいことです。

 尚、レビュー頂けた場合は、2話目以降の投稿として、お返事をするつもりです。

 よろしくお願い致します。

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