まさぐる
今日の黒楓は花粉で頭がボーっとして抑えが効きません(^^;)
幼馴染と言うには歳が離れ過ぎている孝也に引越しを手伝わせている。
ヤバそうなものは事前に片付けて置いた筈なのだが、ベッドをずらすと……だらしない元カレが落っことした物たちが……私が忌み嫌うダンゴムシの如くゾロゾロと出て来た。
爪楊枝や薬のカプセルなど、どれも眉をしかめる物ばかりで、ブチ切れた私は段ボールの梱包を解いて掃除機を引っ張り出し、それらをゴウゴウと吸い込んだ。
「お姉!そんなのはオレがやるから、早く片付けちまいなよ! でないと、オレ、部活行っちまうぜ!」
「何をナマ言ってんの! アンタは力仕事要員なんだから、私の言う通りにしてればいいのよ!」
「だったら時給寄こせよ!」
「時給??!! アンタが赤ん坊の時、下の世話までしてあげたのに、ふざけた事言ってんじゃないわよ!」
「また、その話か?! オレの蒙古斑を見たって話だろ?!」
「それだけじゃないよ! 黄色い塊だって……って!何、人に下品を言わせてんのよ!」
「バカか?! 独りでノリツッコミしやがって!」
「ホント!憎ったらしい!! 昔はあんなに素直だったのに!!」
「当たり前だろ?! ガキの頃からひねてたらお先真っ暗じゃんか!」
なんて言葉を返し、孝也は両手を腰に当てて意見してる私の横をひらりと抜けて掃除機を奪取し、ガアガアやり出した。
「無茶な事しないでよ!」
「お姉と変わんねえよ」と掃除機のヘッドブラシを外した孝也はジャージまで脱ぎだした。
「ちょっと!何やってんのよ!」
「エアコン止めてるから暑いんだよ!」
部活のチームTシャツ一枚になった孝也はカーペットに伏せてベッドの奥の方へ掃除機のパイプを突っ込んでゴウゴウやっている。
その動作で、孝也の首や肩、背中の筋肉が動いているのがここからでも分かる。
孝也って、こんなに逞しかったっけ……
「アンタ、高校生だっけ?」って聞くと
孝也は
「オレ、まだ受験生なんだけど」
こちらを見もしないで言葉を返す。
やっぱり憎たらしい!!
と、
「ズム!ズゴゴゴゴゴ!」と掃除機が唸り出す。
「ああ!! 何やってんのよ!」
「オレのせいじゃねえよ! 掃除機が何か吸い寄せたんだ!」
「じゃあ、そのまま抜いてみなさいよ!」
「言われなくても!」
と孝也が勢いよく掃除機を抜いたら、周りの布が引っ張られた。
「ホラッ!言わんこっちゃない!」
「絶対違うよ!」
と言い返して
孝也はベッド下に半身を潜り込ませてゴゾゴゾまさぐり始めた。
「あっ!掴んだ!!」と引っ張り出したのは
多分、元カレが忍ばせておいた……使いかけの1ダース入りのゴムの箱だった。
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孝也がひと言も話さないのは……私がゴミ箱に投げ捨てたアレが何なのか知っているからだろう。
「どうせ、引っ越し屋が来るのは明日だし、今日はもう止め!アンタも部活行ったら!」
「……うん」
「どうしたの? まだバイト代、欲しがってんの?」
「そうじゃなくて、このベッド壊すんだろ?! お姉一人じゃ無理だ!」
「そうねえ~男手が要るか……それともベッド壊す事自体を止めるか」
「ベッドは場所取るから新居には置かないって言ってたじゃん!」
私はベッドに腰を下ろした。
「今日はこのまま寝て……明日、元カレを呼ぶよ!『お前もあのベッド使ったんだろ!』って」
「やめろよ!!!」
その言葉と共に私は孝也に物凄い力で押し倒されていた。
孝也の血潮のうねりが彼の手のひらを通して私の肩に伝わって来る。
どうしよう??
このまま行ったら……
責任を取るのはやっぱり私の方だよね……
彼の家族と私の家族の顔が頭に浮かぶ。
まあ、それもありかな……
私がそっと目を閉じると孝也は私にキスの雨を降らせ、まさぐり始めたので……目を閉じたまま私は彼の耳元へ囁いた。
「ダメ!その前にゴミ箱の中をまさぐって見つけて来て! そしてちゃんと手を洗って!」
おしまい
なので、こんなの書いてしまいました<m(__)m>
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