メアリス、墓地に来て1週間になる
「ふぅ……、だいぶ整備が進んだわね」
無縁墓地に来てから1週間が経過、私は毎日死者の話を聞いていた。
墓を掘り起こして骨を拾い呼びかけ話を聞き、台帳に書いていた。
中でも事件性がありそうな物は別の紙に書き憲兵の詰所に匿名で送っていた。
「しかし……、誰も来ないわね。やっぱり薄気味悪いからかしら?」
この1週間、訪問者は誰もいない。
流石に寂しいので毎日死者達に祈りを捧げていた。
そのせいか1週間前とは違いかなり空気が爽やかになっていた。
この状態だったらきっと訪問者が来るはず、……無縁墓地だから来ないか。
1週間、死者の話を聞いているとここに埋められてる者達には共通点がある。
それは『厄介事に巻き込まれた』という事だ。
エリーさんの様に殺人事件の被害者だったり、兵士として徴兵されて戦死したり、事故にあったりと事情は様々。
厄介というのは『その死が表沙汰にされていない』という事だ。
つまりは表沙汰には出来ない理由があるから。
エリーさんの様に隠蔽された、という事だろう。
「死者よりも人が怖いわね……」
ここに眠る方々は言ってみれば人の欲の犠牲者なのだ。
「まぁ、そんな事しても女神様が見てますからいずれはバレるんですけどね」
そんな事を思いながら墓地の草刈りをしていると馬車の音が聞こえてきた。
そういえば週に一回は食料や備品を持ってきてくれる決まりになっている。
馬車は墓地の入り口に止まったので私も入り口へと向かった。
「お待たせしました、聖女メアリス様、こちら1週間分の食料です」
「ありがとうございます、お変わりは無いですか?」
「特に変わりはないですね、そういえばこの街の領主が殺人の罪で捕まったそうですよ」
「まぁ、そうですか」
「なんでも匿名の有力な情報があって憲兵隊が調査をした結果、領主に頼まれて殺したという男が現れましたね、街は大騒ぎみたいですよ」
「悪事は必ず暴かれる物ですからね」
「全くです」
内心ガッツポーズをしたのは内緒です、エリーさん敵は討ちましたよ。