メアリス、活動を開始する
「とりあえず荷物を小屋に入れますか」
私は荷物を持って墓地の近くにある小屋に入った。
小屋は木造で至る所がボロボロで屋根とか壁は穴が空いている。
置いてあるのは木の机と椅子、それとこれまた古いベッドのみ。
「コレ、乗ったら壊れるんじゃないかしら……」
怖くて寝れそうもないので床にマットと毛布を引いた。
椅子に座ってみたけどこっちは大丈夫そう、ただ座り心地は悪い。
「色々やる事は山積みねぇ、ていうか墓守って何をやれば良いのかしら?」
具体的な説明を受けずに馬車に乗せられて来たもんだから何をやれば良いのかわからない。
とりあえず小屋を出て墓地の方に向かった。
「これまた酷い……、長年放置されてきたのね」
墓地は雑草が生え、墓石ではなく木の十字架が刺さっているのみ。
これじゃあ死んでも死にきれない。
「無縁墓地だから死者の名前はわからないみたいだけど……、流石に管理が甘すぎやしないかしら?」
これが貴族だったら全然違う。
立派な墓石があり定期的に祈りを捧げて清掃もするし、誰がいつ死んだか、というリストが作られている。
残された遺族がこんな状態を知ったら怒るだろう。
「まずは整備からね、『浄化』」
私は手を組み祈ると墓地内の淀んだ空気が一気に消えた。
「この木の杭は新しくして……、後身元はやっぱりわかりやすくしたいわね、その為には……、やっぱり掘り起こさないといけないわね」
どんな形で埋葬されているのか確認しないといけない。
本当は掘り起こしたくはないけど仕方が無い。
心の中でお詫びして物置にあったスコップを手に私は1つの墓を掘り始めた。
掘り始めて数分後、すぐに骨に当たった。
「棺に入られずにそのまま埋められたのね……」
丁寧に骨を取り出し集めた。
既に年が経っていてボロボロになっている。
私は骨に手を当てた。
(私の声が聞こえますか? 聞こえたらあなたの名前を教えてください)
(……私はエリー、花屋で働いていたの)
これが私の力、死者の声が聞こえるのだ。
ただ、これは聖女の力ではない、元々持っていた力だ。
この力の事は教会の人達は知らない、知ってるのは家族のみだ。