メアリス、墓守になる
新作です、よろしくお願いします。
「ここが貴女の職場になります」
馬車を降ろされ私はとある場所に来ていた。
「ここって……、墓地ですよね?」
「えぇ、無縁墓地です、ここの管理を貴女にしていただきたいのです」
マジですか……。
「かしこまりました、シスターとして務めさせていただきます」
私がお辞儀をすると馬車に乗っていた方は心苦しそうにしていた。
「聖女メアリス、こんな事になって申し訳ありません……」
「私はもう聖女ではありません、教会のシスターの1人です」
「しかし、貴女がこれまで国の為に務めていた事を教会関係者は承知しております! それが王族の我儘のせいで墓守をやらせるとは……っ!!」
「墓守も大事な仕事ですから」
私がそう言ってニッコリ笑うと使者は涙ぐんでいた。
「様子は定期的に見に来ますので……、我々は聖女メアリスの味方です」
「ありがとうございます」
馬車は去っていった。
一気に静けさが漂わせている。
「どうしてこんな事になったのかなぁ……」
私はそう呟いてため息を吐いた。
私、メアリスは元々は男爵令嬢だった。
それがある時教会から『聖女の素質あり』と判定されてから人生が一変した。
実家から教会に住む事になり聖女としての教育を受けた。
結界の張り方とか神々への祈りのやり方とか色々勉強した。
更に王太子の婚約者にもなり王妃教育も受ける事になり忙しい日々を過ごしていた。
しかし、ある日もう一人聖女が現れた、という報告が来てから更に一変した。
その聖女は公爵令嬢で私よりも聖女としての力が強いらしい、更に見た目も美しい。
私なんて黒髪黒目の地味な顔立ちなのでそりゃあ見た目が良い方が聖女として相応しいですよね?
一気に私の地位は陥落してしまい当然王太子との婚約も無しに。
そして行き場の無くなった私は王都から離れた無縁墓地の管理を任せられる事になった。
「……まぁ堅苦しい王家よりもマシよね、そもそも王太子の顔も見た事無い訳だし」
結局、王太子とは一回も顔を合わせる事も無かった。
なんでも現在の聖女とはほぼ毎日会っているらしい。
……うん、どう思われていたかなんて言われなくてもわかった。
絶対に王家が何か言ってきた筈だ。
まぁ過ぎた事を言っても仕方が無い、墓守としてこの無縁墓地の管理をやりますか。