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腹違いの弟
明末清初の中国
広東のとある街
老婆が杖をついて歩いていた。
やがて老婆は通行人に「英風武館はどちらですか?」と聞いた。
「英風武館はこの先です。案内しましょう」と通行人は言った。
「ありがとうございます」と言って老婆は通行人について行った。
英風武館の看板。
「待っていて下さい。今、先生を呼んできます」と言い、通行人は武館の奥に入って行った。
李英風は机に向かって書き物をしていた。
ドアがノックされると席を立ち、ドアを開けた。
「先生。客人です」と通行人は言った。
「分かった。お会いしよう」と李は言い、入り口に向かった。
入り口では老婆がたたずんでいた。
「どちら様でしょうか」李が聞くと「乳母です」と老婆は答えた。
李は三歳まで乳母に育てられた事を思い出した。
「それは遥々と中に入って下さい」と李が言うと老婆は首を振り「先生には腹違いの弟がいます」
「弟?」李が言うと老婆は「弟さんは街でヤクザな仕事をしてます。改心させて下さい」と言い李に手紙を渡した。
李が手紙を受け取ると老婆は崩れるように倒れた。