3.私が欲しいのは……
フェイスブックで、いとこによく似た同級生と20年ぶりに話をした。
私のつらい話を聞き、優しく諭してくれた。
同級生が最初に見せた好意的に思えたその態度は、次第にくずれていった。
私の欲しい言葉とは真逆な言葉を浴びせられ、そこでようやく同級生といとこの彼は違うんだということに気づいた。
今、話したいのはあなたじゃない。いとこの彼だ。
いとこに会いたい。
私の中で彼の存在はいつしか特別なものになっていた。
いとこの彼にLINEを送った。
既読はつかない。
私は会いたい気持ちが押さえきれなくなって家を飛び出した。
彼の家に行こうと階段を下りると、後ろから声をかけられた。
「ゆり?どこ行くの?」
振り返らなくても彼の声だとわかった。
「会いたかったの」
会いたい気持ちが見せた幻かもしれない彼に、私は飛び付いた。
「俺とおんなじだな」
彼は優しく微笑むと、私にキスをしようと顔を寄せてきた。
ここは外。
誰かに見られてしまうかもしれないのに、私は拒むことを忘れてそのまま彼の唇を受け入れた。
「部屋、行ってもいい?」
そう言われて、私は小さくうなずき彼を部屋に招き入れた。
二人きりの状況に、私はいつもより、ドキドキしていた。
今、そういう雰囲気になったらどうしようと思った。
「ゆり、ちょっとここに座って」
先に地べたに座っていた彼に膝の上にくるように手招きされ、私は戸惑いながらも彼にまたがるように座った。
「顔」
彼は私の片方のほっぺたを優しくつねった。
「そんな顔しなくても、ゆりの気持ちが、俺にまっすぐ向くまでちゃんと待つから」
つねっていた彼の指が離れ、頬を優しく撫でる。
「どんな結末になっても、俺とゆりの関係は永遠に変わらないから」
「好き」
私は彼の唇を奪い、首筋まで這うように唇を当てがうと、彼を少しずつ床に押し倒し彼のシャツのボタンを外した。
「ゆり……?」
彼と同じように自分の服を脱ごうとボタンに手をかけた私を彼が止めた。
「脱がないで」
「どうして?なんでいつもそんなに冷静なの?私のこと本当は好きじゃないの?」
首を横に振ると、彼ははだけた自分の胸にそっと私を抱き寄せた。
ドクドクとちょっと早い彼の鼓動が聞こえた。
「聞こえる?」
私は小さくうなずいた。
「俺、まだ怖いんだ」
「怖い?」
「うん。ゆりを壊しちゃう気がして」
彼が私の服の上から胸のあたりにそっと触れた。
「これ平気?」
彼の質問に、私はきょとんとしながら、頷いた。
「でも、この手をこのままゆりの服の中に入れたら、多分、怖がって俺を拒絶するだろ?」
「しないよ」
「そうだね。しなかったとしても、途中で嫌だと思っても気持ちを押さえて、きっとゆりは最後まで我慢するでしょ?」
うつむいて何も答えられなくなった私の顔を彼が覗き込む。
「ならない。本当に好きだもん」
私は口を尖らせた。
「うん、ありがと。俺もゆりが大好きだよ。でも、もう少しだけ待ちたいんだ。ゆりの心があともう少し癒されるまで」
「治らないよ。そんなの、いっ……いつになるかわからない!」
私は少しだけ声を張り上げた。
「治るよ。俺が証明するから。ずっと変わらな気持ちがあること」
私は服を脱ごうとした。
「やだ、今してよ!」
でも、彼は私をしっかりと抱き締め、けして離してくれなかった。
「俺はゆりに後悔してほしくないから」
「やだよ。このままだと……みんな、浮気するじゃんっ!私、頑張るから……お願い!……失いたくないの」
「ゆっくりいこう」
彼は乱れた私の服を丁寧になおした。
「俺も、ゆりを失いたくないんだ」
私はその時初めて気がついた。
彼の手が少し震えていたことに……。






