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9 いってきます

「んじゃ、行ってきまーす」


「おう、がんばれよ!」


 15歳になった朝、父との別れはあっさりしたものだった。ゆうしゃやあさですよと起こされて王様に挨拶に行く必要もなし。家の前で、短い言葉を交わすのみだった。

 広くもない村を、のんびりと歩き乗合馬車の乗車場へ向かう。今日を逃すと次は1ヶ月後になるので、タイミングが良かった。節目の日に出発したかったんだよね!


 冒険者になっても無謀な事をするようには見えなかったんだろう。お前は普通のガキと違うといわれ、一度も反対はされなかった。ただ色々と心配はされたが……俺を信じて送り出してくれる父の愛情が有難い。



 まっすぐ魔王領に行くのが近いんだが、ある種の身分証を持たずに彼の国へ入国することは難しい。俺の場合は一旦隣町で冒険者登録をして、それから魔王領を目指す予定だ。


 最果ての村といわれているこの村ウォスタラプは、大昔魔族と戦争があった時の名残でそう呼ばれている。すっかり平和になった今もまだ、魔族に対する偏見が残っているせいで、魔王領に近いこの辺は観光にも移住にも人気がなくあまり栄えていない。


 魔王領には魔族や亜人が多く住む。亜人に対しての偏見は、魔族に対するそれほどではないのだが、国によっては歓迎されない事もあり人間の街に住む者は少ない。定住しないタイプの冒険者や旅人としてそれなりに見かける事がある程度だ。魔族に関しては、人間が治める領地ではほとんど見かけない。


 魔族の方は特別人間に偏見があるわけではないようで、魔王領に移住する人間は意外と多いんだそうだ。


 父も母と駆け落ちした際に、いざとなったら魔王領に移住するつもりで準備はしていたらしい。結局はじーさん達が手を回して、母の元婚約者側から追っ手が来ないようにしてくれたらしいが……。



「隣町行き出発します!」

 ガコン、と音がして揺れる。乗合馬車が動き出す。

 乗車賃で、コツコツ貯めた小銭が4分の1なくなった。金額が大きい硬貨はサイズも大きいので大貨と呼ばれる。俺の持っているお金は小額硬貨ばかりなので、小銭という感じ。


 冒険者登録をしたら、まずは資金を貯めないとダメかもな。


 初めて乗った馬車ではいきなり酔った。出発して即青い顔をした俺に周囲の目が生暖かかった……。





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