表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/47

8 旅立ちが近いよ

 ユーリカに会ったあの日以降、村や我が家が特別ピンチになることもなく、質素で平和な12年が過ぎた。


 俺はもうすぐ15歳になる。この辺では15歳が一人前とみなされるので、成人するという感じだ。


 あれっきり会いに来ないんだが……あの娘……。


 おかしいな、絶対優香だと思うんだが。俺だけ、

「前世の娘だと確信した(ドヤァ)」

 とか思ってたんだったら恥ずかしすぎるよね!

 自信を失いつつも、あの時の「待ち合わせの時期を間違えた」「魔王領へ向かう」「子供達が無事育つのが嬉しい」というような発言は俺へのメッセージだと思ってもいる。


 無事成長したら、魔王領で会おうぜ! という約束だと解釈して、俺はとりあえず冒険者を目指している。父が楽しそうに色々教えて鍛えてくれるので、もしユーリカに会えなくてもなんとか生活できるだろう。

 ちなみに成長チートとかそういうのは行方不明みたいです。おっすオラ一般人。



「ハルが出て行ったら久しぶりに一人だなぁ、オレも冒険者に復帰しちゃうか〜?」

 父が笑いながら言う。


「ミーシャさん置いてくんだ?最近いい感じだと思ったんだけどな!」


「うっ…知ってたのか。まあ、うん。老後に向けての人生も考えてるぞ」

 ミーシャさんは近所の40後半の未亡人だ。父と年齢が近く、気があうようだ。


 今は、俺と父さんの二人暮らしだ。

 兄は7年ほど前に貴族の祖父母の家に引き取られた。

 亡くなった母が貴族の出身で、父とは駆け落ちしてきたのだが、よくある後継がいなくなってしまった問題でウチにたどり着いたらしい。

 兄は勉強するのが好きだったので学校に行かせてもらえると喜んで「おじいさま・おばあさま」の所へ行った。

 引き取られたけど苦労して……という事もなく、楽しく過ごしている。ロレンツォって名前で良かったね!名前でいじめられることはなさそうだ。


 そこら辺は円満に解決したし、俺たちも会っちゃいけないって事もないんだがじーさん家は遠いので手紙での近況報告のみだ。そのうち会いに行くよとは言ってある。



 姉は5年前にこの辺りを治める領主の家に嫁いで行った。どんなオッサンかと思ったら、最近跡を継いだやり手の25歳独身堅物だった。

 訳あり物件の領主様は、村に視察に来た時に姉に一目惚れしたらしく、秘密裏にラブストーリーが展開されていたらしい。無理やりではなく、幸せな結婚になったので良かった良かった。

 詳しく聞くと口と耳と鼻から砂を吐きそうになる気がしたのでそこはスルーしたが、前世の妻が喜んで読んでいた感じのじれじれすれ違い→あまあま溺愛恋愛小説が一本書けそうな気配があった。


 父は父で、王都の辺りで活躍していたやり手の冒険者だった過去がある。貴族の母と出会い、いくつかの冒険を経て駆け落ちをして来たという……。


 俺以外、山あり谷あり人に歴史ありな感じです。


 さて、ど平凡な俺はまだ元妻に会えないでいる。妻が会いにきてくれなかったと言うべきか。

 マジでなんか炊飯ジャー的なモノに封印されてるんじゃなかろうか……。

 村から出られないガキで待つ身だったが、これからは探しに行く気でいる。


 ユーリカは魔王の器とかの設定はどこ吹く風で、世間にはまるで勇者のような扱いをされているし。(噂だけ聞こえる)


 ちなみに、特に勇者様が魔王を討伐とかは必要ない世界です。



 未だに俺だけ取り残されて、一般人として生きている転生譚。平和が一番なのかもしれないがどうなってんの?


 そんな俺にも旅立ちの時が迫っていた(お好きな効果音で盛り上げて下さい)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ