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45 スケサンカクサン

「アルル・カゲット教会?」


 特別俺が無知なわけじゃないと思うが、主要な教会はだいたいスコープーン教会〇〇支部とかで、同じ神様=スコープーン神を信仰しているはず。


「新興宗教的なものなのか?」


「いいえ、有名じゃないけどちゃんとした神様よぉ。アタシの知る限りでは、大きな教会ではなかったはずなのよね」

 俺の疑問に、サリーナが答えてくれた。


「少し前まではその通り、少数派の教会でした」

 ザギィルは頷きつつ懐から折りたたまれた紙を取り出した。


「彼らの声明文です……勇者の奇跡といわれる全ては、実際にはアルル神が降臨なさって起こした事象である。よって、神が敵とみなした魔王がいたこの国は神に仇なす存在であるから正さなければならない」

 すでに読んだ後なのだろう、すらすらと音読してくれる。

 彼はまた、はあーと大きなため息をついて、

「要は魔王領は信仰する神様の敵国だから、自分たちが信仰心で正してやるよという大義名分で攻めてきてるんです。その実は利権を取りたい権力者たちが手を貸して煽っているという事ですね」

 心底面倒臭そうな顔で言った。


「冒険者ギルド上層部やら富裕層の商人やら、下級貴族やら……彼らが教会を急成長させたのです」


 ザギィルの話に、俺たちは顔を見合わせた。

「面倒な感じのやつ?」

 少なくとも本物の信者にとっては信仰心ゆえの行動だから、うかつな対応をすると炎上するんじゃなかろうか。


「面倒な感じのやつなんです」

 ザギィルが遠い目をしている。


「アルルが降臨したんじゃなくって、勇者に強い加護を与えたのが正解じゃん、間違ってるよー」

 と、さっきまでウトウトしていたエミルが、プンプンしながら発言した。


 全員の注目がエミルに集まる。


「おかーさん何かご存知なのねぇ?」


「うんー、だってあの時、アルル神の加護を受けし勇者・ゴンダハルト参上って名乗ってたし」


「ゴンダハルト」

 なんか響きが日本的なのだが。そして。


「勇者ゴンダハルト……俺と父さんの名前に似ているんだけど」

 父ゴンダロット、俺ハルトルット。そんなに多い名前じゃないのにこの符号。合体! 二人合わせてゴンダハルト! ってか?


「子孫なんじゃない?」

 ユーリカが俺を見つめながら言った。

「先祖代々由緒ある響き的なさぁ」

 でもギャグっぽいよね、とその表情は笑っている。


「ゴンダもしくはハルトを含む名前だと縁起がいい的な感じかしらね?」

 サリーナは頰に片手を当てて小首を傾げている。


「どちらかを含むと検索エンジンで上位にくる的な」

 エミルがウンウンと頷きながら言ったがさっぱり意味不明だ。


「えーっと、お母さんは昔その勇者に封じられたってこと?」

 ユーリカが仕切り直した。


「まあそんな感じ? 詳細は秘密なんだけどね」

 エミルは、片目にゴミが入ったのかと勘違いするようなウインクを寄越した。口笛もウインクも下手なのな……。


「でもさあ、アルル・カゲット教の信者が間違ってるのはダメだと思う。アルルがかわいそうじゃん?」

 言いながら、両手をグーにしてブンブン上下に振っている。どうやら怒ってますのポーズらしいが、顔は眠そうにボーッとしているとしか見えない。


「知り合いかよ」


「知り合いだよ? 勇者が頑張って今の魔王領があるのはアルルの意向なのに! むうー、嘘ついて煽ってるヤツらは悪いよね」

 エミルの赤い瞳が紅く輝きだした。


「よーし、スケサンカクサンオギンチャン懲らしめてやりなさい!」


「まさにご隠居さま……」

 ユーリカとサリーナは何のことかとポカンとしているじゃないか。


「ババ様、その、穏便に」

 エミルの謎の発言に、ザギィルが慌てている。


「だいじょぶ、信者は殺さないよ、アルルにとって貴重な人材だもんね!」

 ザギィルの心配はきっとそこじゃない。


「どうするんだよ?」


「えっとね」


 それから、朝まで生討論になった。もとい、朝まで作戦会議は続いたのだった。



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