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4 転生します

「あなた……」

 俺の仏壇の前に妻が座っている。

 もともと小柄だったのに、その背中はさらに小さく見える。表情は見えない。


「本社の方が来てね。残業と休日出勤が多すぎたのと、あと内部告発で上司のパワハラがあったようなので調査していますだって。今さらだよね……ぐすっ……なんで死んじゃったの?」


 泣くなよ、いきなり死んで悪かったよ。こんなつもりじゃなかったんだよ。


 上司がわざと俺を

「事務所待機で連絡を待て」

 と言いつけたまま自分は帰宅して音信不通とかいう嫌がらせを何度もして来たり、

「成績が上がっていない営業所なんだからお前くらい休日出勤しろ」

 とか命令して来たりが内部告発で明らかになったんだろうか?

 まあそれ以外にもパワハラまみれだったが。


 社内に、味方が全くいなかったわけではなかった事を思い出した。



「私、何もできなかったんだね……」


 そんな事ないぞ!

  俺の声は届かない。


「家族の為にって無理して……結局死んじゃったんだよ……私のせいなんだね……」


 違う、お前のせいなんかじゃない!

 くそっ、伝えたい言葉が伝わらない。どうすれば……?



「うっ……うぅぅ……ひどいよ、私を置いて行くなんて……もうこのまま生きていけない……」

 とうとう妻が泣き出した。


 お前、俺が早死にしたら家事しないでゲーム三昧で過ごすって言ってたじゃないか! こんなに思い詰めるなんて……おい、後追いなんて考えるなよ。娘の優香もいるんだから、頼む、頑張って生きてくれ!


 届かなくても、叫ばずにいられなかった。

 俺の家族。守りたかった家族。こんな思いをさせたかったわけじゃない。



 うずくまって泣いていた妻の体が小刻みに揺れ出す。


「許せない……私なんか……役立たずでっ」


「許せない……私を置いて逝くなんてっ」


「許せない……許さない……雅治さんを殺した会社を許さない……この世界を許さない……」


 妻の様子がおかしい。これ大丈夫なのか?

 優香、どこだ?

 母さんのそばにいてやってくれ!

 俺が周囲を見渡すと、



「お父さんを殺してお母さんをこんなに悲しませるこの世界なんかいらない……いっそ我が滅ぼして……今こそ封印されし魔眼を解放する時」

 優香が昏い瞳で呟いていた。


 おいぃぃ、お前もか! そして厨ニ病!?

 誰か、誰かヘルプ! プリーズ、へールプ!



 そうしている間に、二人の体は黒い影のようなものに包まれ、大きく膨らみ裂けていく。


 なんなんだこれは、やめてくれ!

 俺は絶叫した。








 悪夢を見ていたようだ。俺は自分の絶叫で目が覚めた。


「うぇぁぁ、うぇぁぁぁ!」


 赤ん坊の泣き声だコレ!


 俺は、本当に異世界に転生していた。


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