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36 ギュウっと締めてみて

「お父さん余裕そうだけどさあ、みんなの分あるんだよ?セラフィチョイスのアーティファクト」

 横目で俺を見るユーリカ。


「うーん、俺は特別見られて恥ずかしいとか困るものはなかったと思うんだ。何回か引っ越ししてるから、その都度いろいろ処分してたしなあ」


 そう、家族に見つかってやばそうな物はちょこちょこ処分していたはずなのである!というのも、引っ越しの度に妻に見られたくないものを発見されるという惨事が起きたので。「あなた、これなあに?」と聞かれた時に変な汗が止まらなくなるような物は、持たないに限るのだ。


「スマホからとあるサイトに会員ログインをすると、動画の履歴が残っていらっしゃいませぬか?有料の動画はこっそりプリペイドのカードで課金していたようですがのう。くくく、お主も悪よのう……」

 背後から、可愛い声で恐ろしい囁きが聞こえてきた。


「えうっ!?」

 寝言じゃなく、エミル起きてるのか?えっ、カマかけられてるのか、知ってたのか?どう反応したらいいのコレ!後ろを振り返っても、エミルの顔が見えない。焦っている俺をユーリカが呆れて見ているが、さっきの囁きの内容は聞かれてないと思いたい。



 その時、前触れもなく警告音が響き渡った。

 ビーッ、ビーッ!と響く音は、前世の洋画なんかでよく聞いたことのある音だった。


 白い光だった壁全体が、赤く点滅しはじめた。


 クネクネ踊っていたサリーナが、耳を伏せてビックリしている。


「セラフィのやつ、まさか……」


「この建物は自動的に崩壊します。直ちに脱出して下さい。残り60秒」

 間違いなくセラフィの声だった。


「あああああ!やっぱりだよ!」

 ダッシュで戻ったって間に合わないぞこれ!他に出口あるのか!?


「壁破る!」

 ユーリカが言うが、


「この壁の先は安全なのか!?」

 地底湖の底だとかシャレにならない。トイレの件だって俺は止めてたんだ。


「すぐには調べられないよ!でもこのままじゃ」

 眉を下げたユーリカに、調べるのにどれくらいかかる?と聞くか、一か八か壁を壊してしまえ!と言おうか逡巡したその時、


「片道ならいける」

 背中からエミルが飛び降りた。


 短いままの杖で床にガリガリと円を描き始めたが、すぐ自動修復されてしまいそうだ。


 ユーリカがサリーナを掴んで抱き寄せる。それを俺、そしてエミルが抱きしめて、小さな消えかけの円に収まった。


「見えにくい丸だから、事故ったらゴメン。きんきゅうだっしゅつ〜〜」

 猫型ロボットっぽい発音で言い、転移魔法が発動した。





 光が消えると、俺たちは魔王城のあの散らかった部屋にいた。


「悪趣味だよね、セラフィは」

 疲れた表情でユーリカが呟いた。

 そして、あっくさい人だ!という顔で慌てて俺から距離をとった。


 転移での事故もなく無事に脱出できた。俺たちはエミルに礼を言ったが、エミルはぐったりした様子で


「ごめんちょっと横になる…………」

 と、壁にかかっていたハシゴを登って行った。どこで横になれるんだと思ったらロフトになってたんだな、ここ。



 首輪のテンションがすっかり落ち着いたサリーナが


「セラフィさんってどなたなのかしらぁ?ユーリカちゃんは嫌いみたいだけど、悪い人なのぉ?」

 と、困ったように聞いた。


 ユーリカの敵からの贈り物なら、首輪を処分したほうがいいと思ってるのだろうか。


「悪いというか、やなヤツ、かな。でもサリーナが嬉しそうだったし、私も無事ノートを回収できたら問題ないかな」

 大丈夫だよという風に笑いかけるユーリカ。


「ハルっち、この首輪ってアタシが貰ってもいいのかしらぁ?」

 問題ないならもう手放さない!という顔でサリーナが聞いてきた。


「俺はいいと思うけど、マズイことあるか?ユーリカ知ってる?」


「依頼者がいるわけじゃないし、基本的に拾った物は自分のものにして大丈夫だよ。それに、サリーナ用なんだよ、それは」

 ニコォ、とユーリカは歪な笑みを浮かべた。


「セラフィがサリーナ用に準備したからってことか?」


「今鑑定したらね、持ち主・サリーナって表示されてる。うふふ、ノートも鑑定されたら、持ち主・ユーリカって出ちゃうのかな?うふふふ、何が何でも探さないとねッ☆」


「お、おう。んじゃ、それはサリーナのもの」


 サリーナはゴワゴワすぎてバットのような尻尾をブンブン!と振りながら、

「ハルっち、お願い……」

 首輪を俺の方に差し出し、目を閉じて顔を上げた。

 太い首と喉仏がよく見えるな。


 じゃなくて、

「いやいや、サイズ的に無理だから」


「ギュウっと締めてみてぇ?」


「絞殺させる気か!小型犬用だから首には、マジで無理です。ほら」


 俺はサリーナの手首に、ちび太の首輪をはめてやった。


「これでアタシは、ハルっちのモノねぇ!」


「誤解を招く言い方やめてくれ!」


 とりあえず突っ込んでから、俺は咳払いをした。


「サリーナ、お前は俺たちの家族なんだ。所有物とかペットではない。俺たちを助けてくれるのは嬉しいんだが、もっと自分を大切にしてくれ。命をかけるなら俺じゃなくて好きな女のためとか、まあ男でも両性でいいけど、なんかとにかくそっち推奨」


 説教くさい気がして恥ずかしくなってしまった。

 最後までカッコよく言えない、それが俺クオリティ。


「ん〜、わかったわぁ。アタシが死なない範囲でみんなが助かればいいのよねぇ!」


 間違ってないけど、ちょっと違うって。

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