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「サリーナ!」

 思ったより声が響いた。自分の大声に驚いて、次いで周囲の違和感に気がついた。

 広い広い場所に、果てしなく長い長机が置かれている。

 この場所には見覚えがあった。


「あっ!?俺また仮死状態なのか?」


「どういう事?お父さん何か知ってるの?」


「なんか、やだなここー」


「うぇっ?なんでユーリカとエミルもここに居るんだよ!」


 俺の後ろに、不機嫌そうに腕を組んで仁王立ちしたユーリカと、猫背でふにゃふにゃ眠そうに揺れているエミルがいた。

前は自分だけだったので意識しなかったが、ちゃんと全員が〈そのまま〉の格好である。精神世界で真っ裸の表現をされているマンガを見た事があるが、ここでは違って良かった。口臭いどころではない糾弾を受けること間違いなしだからな。



「それは私がご招待したからですよ。3人揃ってないと説明面倒なので、待ってたんですよね。なかなか揃ってくれないので困っちゃいましたよ、困ったちゃん達ですね」


 案の定、光る上司が現れた。


「あんた、えーっと名前がわからん、俺たちをあの状況で仮死状態にしたのか?サリーナはどうなった!?」


「私の名前は高貴すぎて発音できないと思いますので、高貴なお方とか好きなようにお呼びいただいて構わないですよ。サリーナさんは、まだ無事ですよ。あちらと時間の流れが違う空間へご招待しましたからご安心くださいね、私の気遣いに感謝してくれてもいいですよ?あと仮死状態じゃなくて、強制幽体離脱です。魂一本釣り得意なんですよね、私」


「勝手に連れてきて感謝とかおかしいんじゃないですか?電球人。サリーナが無事じゃなかったら木っ端微塵にしてやる!」

 ユーリカが電球のように光る上司を睨みつけている。ナイス表現だぞ、ユーリカ。


「何が目的ですか、クソ高貴なお方」

 俺も少し苛立っている。()()()()()()呼んでやった。


「クソ高貴なお方って長いから、略してうんこでいいかな?」

 エミル、正しくは略されてないぞ。


「…………私のことはとりあえずセラフィとお呼びください。皆さん、なかなかお仕事してくれないので私が上司に怒られちゃいましたよ、困りますよー。契約書にも書いてありますよね?」


「契約書?」

 ユーリカとエミルが眉をひそめた。俺は何となく察した。


「こちらに転生する際に、サインしてもらったやつですよ、やだなあ」


「え、転生に同意しますか?って紙にしかサインしてないけど?」

 ユーリカは詐欺師を見るような目でセラフィを睨んでいる。


「ちゃんと裏も読みましたよね?当たり前にご存知でしょうがサインするっていうのはそういう事ですもんね」

 光る上司が嗤った気がした。俺たちはうぐ、と言葉に詰まった。確かにサインをした記憶はあったから、半ば騙されたようなものだが、自分にも非があると思ってしまうと強く出られないのである。詐欺師にカモられやすい気質の一家であった。


「あなたたち三人には、この世界で魂の転生に関わるデータ収集サンプル課としていくつか活動していただきます。ハルトルットさんがこのチームの代表ですので、課長ですね。私は部長ですかね!」


「セラフィさんよ、あんたこないだは、一年に一回は業務連絡を確認しろとだけ言ってなかったか?」

 さすがに俺もイライラしてきた。こいつのいう事はよくわからないし、俺たち一家を見下しているように感じるのだ。


「私そんな事言いましたか?さてはハルトルットさんじゃタブレットを使いこなせなかったんですね?責任転嫁しようとしてもダメですよ〜」

 こいつの言動は本当に信用ならないな!


「ああ、使いこなせないな。幽体離脱か仮死状態って言うのは俺には簡単にできる事じゃないんでね」


「なるほど、そういうことはちゃんと早めに言わないとダメですよ!社会人は報連相が大事ですからね。覚えておいて下さいね」

 嫌味で言ったつもりが通じなかった…………もうやだ、この上司。チェンジしてください。なんなら俺たちを退職させて下さい。神様いないですかね?

 両手で顔を覆った俺の肩を、ユーリカが慰めるようにポンと叩いた。


「特別にハルトルットさんには、寝てる時に任意でタブレットにアクセスできる指輪をあげましょう。業務に支障が出ちゃうので、今回だけ特別ですよ!」


「はじめから寄越してくれ!」


「はじめから楽しようとするのは、新入社員としてはバツですよ。もっとやる気を見せてくれないと」

指と指をバツの形にして見せてきた。イラつく。


「ヤル気はありますが?」

 煉獄のユーリカが殺気立っている。


「あはは、楽しいチームですね!そうそう、私からのサプライズは見てくれましたか?素敵な上司に恵まれて楽しく勤務できています!という喜びの声はいつでも受け付けていますから、恥ずかしがらずに伝えて下さいね。それでは、私は多忙なのでこの辺で。良い人生を!」


「ちょっと!」


「おい、詳細が全然伝わってないぞ!?」


「うんこまたねー」


 セラフィが消える瞬間、俺の指にパイナップル型の模様が入った指輪が出現した。まさかタブレットにもパイナップルマークが入ってるんじゃないだろうな?

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