29 漏らしてない
「あ、ユーリカ」
「ユーリカ!?」
「ユーリカちゃん!無事だったのねぇ!」
俺たちは大穴を通り抜けてユーリカに駆け寄った。後ろで壁が自動的に修復したようで、塞がってしまったが気にしない。
感動の再会シーン。
「この辺に物陰ない!?漏れちゃう!」
「個室とか!窪みなかったか!?」
「えっ!?なんか臭いんだけどまさか漏れ……」
感動の再会シーンなんてなかった。
あと漏らしてない。口が臭い呪いなんだよ!
ユーリカに良さそうな場所をいくつか教えてもらい、俺もエミルも尊厳は保たれた。
「わたしも、我慢できなくなって壁ぶち壊してこっち側にきてたんだよね!」
あはは、と笑いながらユーリカが言う。
俺の記憶にある、13年近く前の姿と変わっていないようだ。いや、少し装備が豪華になっているか?
ゆるくウェーブのかかった長い髪は生え際から編み込みをカチューシャのようにして、サイドでまとめてポニーテールにしている。相変わらずキツく見えそうな目だが、瞳は優しいアメジスト色だ。
長い耳がいつかのようにぴこぴこと動いている。
やはりユーリカは美少女である。年齢不詳だが、見た目はまだ10代のようだ。エミルより背も高いし、年上に見える。しかし色気は全然ない。むしろ不要である。ずっと子供でいいくらいだ!
変な虫がつかないようにしなけりゃいけない、娘と付き合いたければ俺を倒して……って俺、一般人レベルだったよ、ダメだダメだ。
俺が脳内でどこかの馬の骨にフルボッコにされてる間に、サリーナとエミルがここにきた経緯を話してくれていた。
「追いかけてきてくれるなんて、ビックリ!でも調査団の人達が殲滅しながら進んでるせいで、全然戦闘してないんだよ」
「かなり強い方達なのねぇ〜、ほんと無事に合流できて良かったわ!ユーリカちゃんの目的の品は見つかったのかしらぁ?」
「ううん、まだだよ。一応この辺も探索したけど、こっちは違うみたいだったから。もう一回壁を壊して向こうに戻るところだったんだよ」
「違う、っていうのは?」
「お父さん、口臭いから向こう向いて喋ってよ。わたしの目的の物は、多分濃い魔力溜まりにあると思うんだよね。そこからSランク魔物が湧いてると仮定して、さっきの一本道の先に高ランクっぽい魔物の反応があるんだ。お父さんにはわかんないだろうけど」
「ハルこっち向かないで!じゃあムカつく白通路に戻って進めばいい感じ?」
「うん。また壁壊していこうよ」
エミルには素直に答えるユーリカ。
「おけおけ、今度はサリーナが殴り壊してみたらいいじゃん?崩れてこないっぽいしね」
「え、えぇ。やってみるわねぇ」
ひとり後ろを向いた俺は少し泣きそうだった。もちろん家族が再会した喜びじゃない、呪いだとわかってても臭い臭い言われりゃ傷つくんだよ!あとユーリカが冷たい……。いや、前世でも反抗期でこんな感じだったか。
サリーナだけが心配そうにしている。ありがとうな、お前だけはどんな臭い俺でも気遣ってくれるんだな。
あとでナデナデしてやる事にしよう。




