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27 ペッペッ!

「エミルはそのままでいいのか?」

 エミルの装備は、フード付きのだぼだぼローブのままだった。足はショートブーツ、脚は昨日の感じだとタイツも何もなしの生足。


「あーうん、だいじょぶじょぶ。大魔王様ですからね!」

 えっへんと胸を張る。やっぱりなかなかデカい……普段猫背気味なのと、ローブがゆったりだから目立たないけど。俺的にはつるぺたよりグラマラスな方が大好きなので良し。


「ババ様だもんな」


 バシーンと後頭部をはたかれた。


「ハルはもう安全丸に入れてあげないんだからね!」


 円が書いてある敷物だけがある、部屋の隅っこのスペース。俺たちが移動してきた際に出現したのもこの場所で、モノで溢れた部屋の中で異質な空間になっていた(ここだけスッキリしているので)。


 ここからまた移動する予定なのだが、エミルが俺を円からぐいぐい押し出そうとする。この円が安全丸か?


「やだよ、はみ出たら俺の体、半分になるかもしれないんだろ!?」

 ぎゅうぎゅう。

 そんなに大きくはない円なので、サリーナとエミルまとめて抱きついて安全を確保しようとする俺。


「抱きつくなら眼鏡くらい装備してからにしてよね! くっさいし! ペッペッ!」

「はぁっ、ぎゅーってされてる! ご主人とおかーさんに密着してる! あぁーん、ペロッとしたいぃ〜」

 唾を吐くな、舌を出すな!


 ごちゃごちゃしたまま、光が俺たちを包む。エミルの魔法が無事発動したようだった。さすが大魔王ですぜ!





 埃っぽい部屋の空気から、むせかえるような濃い緑の匂いがする空気に変化した。

 森だ。

 背の高い木々が繁り、ずいぶんと薄暗いがまだ昼前のはずだ。

 暑いというほどでもない気温なのだが、湿度が高くジメジメむわっとする感じだ。


「迷宮近くの森だよ。目の前まで飛べるルートがなくって、ここが直近〜あとは歩きね」


「ありがとな、転移魔法マジ助かるよ。でもどこでも飛べるわけじゃないんだな?」


「うん、魔法石使って、セーブポイントみたく記録した場所じゃないとダメなんだよ。キクリータイヤムも関所近くからがんばったんだから!」


「あぁ、それで夜中に宿に着いたのか……」


「転移魔法だってね、ほんとはこんなに連続では使えないんだよ。もう魔力ストックしてある分使い切っちゃったから、ユーリカ連れて帰る時までに魔力貯めとかないとなの」


「戦闘になっても大丈夫なのか?」


「そのくらいは大丈夫だよー、そこら辺に漂ってる魔力を使うだけでもじゅうぶんだから」


 そんな事を話しながら数分歩いたあたりで、ぐぅ、と俺の腹が鳴った。


「そういや腹減ったな、朝飯食ってないんだけど」


「みんな食べてないじゃん。サリーナ、お腹減ったよう」


「アタシのマジックバッグは元々ほぼ水だし、補充してないから何もないのよぉ〜。エミル様、マジックバッグに食べ物とか持ってらっしゃるのではぁ?」


「えっ」


「えっ?」


 俺たちは顔を見合わせた。


 食料、持たないで来ちゃったの? 迷宮に?


「戻る……のは厳しいんだよな、魔力が」


「ウン。魔力、たまる、時間、かかる」

 エミルがプルプルしながらカタコトで話している。しっかりしろ。


「戻れないなら、進むしかないだろう」


「そ、そうよねぇ、進みましょう、ね? エミル様」


「ウ、ウン」


「迷宮のあたりには魔王城から誰か行ってるんじゃないのか? それに、ユーリカなら色々持ってるんじゃないかな。昔、俺の村に大量に荷物を置いていったほどのマジックバッグ持ちだろ」


「そうね! そうよぉ、エミル様大丈夫よ! どうにかなるから、まずは頑張って進みましょうねぇ?」


「うん、わかった。確認しないで転移してごめんね」

 ぐすっ、と鼻水をすする音。

 ポン、とエミルの頭に手を置いて、俺は言った。

「気にすんなよ。早くユーリカに会って食い物たかろうぜ!」


 サリーナがそうじゃないと首を振り、エミルは「口くっさい!」と俺の手を振り払ってきた。

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