14 見合いか!
「ハルっちは冒険者試験を受けるのよねェ?アタシが手取り足取りアドバイスしてア・ゲ・ルわよん?」
一緒に宿内で夕食をとっていると、向かいに座ったサリーナがバチンと音がしそうなウインクを寄越しつつそう言うが丁重にお断りした。
父に色々教えてもらってるし、手取り足取りついでに腰も取られそうなので……。
まあ本気で何かされるとは思っていないのだが、時折俺を見る視線に何かよくわからない悪寒がするのだ。
まるで母親かと思うような世話の焼き方をしてくれるし、いい人だなーと思う。だから同室を決めたのだ、お金のために自分の身を差し出してもいいとかは微塵も思っていない!まだ新品なんだからっ。
とはいえ、万が一中身が元妻だったら……どうしようかな、どうなるのかなというのは少し不安である。
なにかの縁または因縁を感じるのだ。ユーリカの時は確信めいていたその勘は、今は曖昧ではあるが。
ユーリカは、俺と同じようにあの時何か確信したのだろうか。それとも、チート転生者の必須(?)スキル【鑑定】とかで他人のステータスや称号が見えるとか?
俺は自分自身のステータスすら見えない。いや、それは普通なんだけどね。
スキルとは要は特技だ。ヒヨコ鑑定士がオスメスを見分けるごとく、熟練の技もしくは天性の才能でできるような特殊技能。多くは自分の種族や素質に左右されるので、誰でも努力すれば使えるというわけではない。
超絶体技だったり究極魔法だったり、一般人に使えなさそうな技能があればそれをスキルと呼ぶわけだ。
簡単な低級魔法だって使えれば、魔法スキル持ちとなるのだが……。
俺には今のところ何もスキルがない。と思う。
「まあ、何とかなると思うので大丈夫ですよ」
世間話程度の会話をしながら、夕食のジャイアントスネークのソテーをつつき、サリーナの素性を探ろうと画策する。
「ええと、サリーナさんご趣味は……」
見合いか!という質問しか出てこなかった。
「!今はハルっちを見守ることよ!」
パアッと目を輝かせて、サリーナが即答した。
「それ趣味かな?じゃあ俺と会う前は?」
「や、ヤダぁ……それは秘密よぅ〜〜」
クネクネ。
サリーナが嬉しそうに大きな体をくねらせている……。茶色のクセ毛がフワッフワッと揺れる。俺から話しかけたのがそんなに嬉しいのかな。
「昔どこかで会ったことありましたっけ?」
「ヤダヤダ、それも秘密なんだから!急に積極的になってくれてアタシ嬉しいいいい〜〜!」
クネクネクネクネ。
周りのテーブルからの視線が痛い。
しかし俺は、その動きで前世の記憶を刺激された。確認したいが、変に注目されているしここで話すことじゃないかな……。
そそくさと食事を終わらせて、部屋に戻ることにした。
給仕の女の子が、その恋応援してる!っていうポーズで見送ってくれた。
違うから。




