13 マジックバッグ欲しいなあ
クリスチーナから、冒険者試験を受ける部署はムルシウ中央支部にあると教えてもらい向かうことにする。
「腹減ったな……」
時刻は昼を回った頃だった。ギルドも、昼過ぎから夕方にかけては多少混雑して来るのだと聞いた。それにしたってムルシウ支部はこじんまりとしていたし、さびれている感があったな。
数分歩くと広場になっていた。噴水やベンチがあり、露店が並んでいたので飯にする。
「トード串3本下さい」
「あいよ!まいどあり!」
カエル肉と予想される串を齧る。塩とハーブのシンプルな味だがうまいうまい。ど田舎に住んでいると虫とかも食うからね、カエルとかヘビはちゃんと肉っぽいから抵抗は少ないかな。
噴水の横に、自由に汲める井戸水があったので水袋に補充しておいた。仕方ないのだが、荷物が重くなる。
「マジックバッグ欲しいなあ……」
ユーリカはかなりの容量のを持っていたみたいだし、正直羨ましい。父も流石にそれは持っていなかった。
あれは上級のマジックアイテムとのこと。一部の魔法道具職人しか作れないし、素材がえらい高価だから持ってると羨望の的らしいです。
ユーリカ一体何者なんだ?娘だけど。
まあそれも魔王領にいけばハッキリするはず!
まずは小銭稼ぎ……じゃなくて冒険者試験っと。
ムルシウ中央支部は立派な石造りの建物だった。
入り口を入ってすぐに、活気溢れるロビー、若くて美人揃いの受付カウンターがある。
冒険者試験の受付カウンターに並び、申し込み手続きを完了した。
「試験は明日の1回目の時間です。遅れないようにお願いしますね!」
美人の受付嬢に念を押された。遅れるやつが多いのか、俺がいかにも遅刻しそうな顔に見えたのか……。
後ろの人に急かされるようにして受付を離れた。
中央支部を出て、とりあえずの宿に向かう。
明日の試験までまず一泊、そこからは収入次第で、最悪路銀が尽きてきたらギルドホールの片隅で寝かせてもらうしかない。
今日の宿はクリスチーナおすすめの宿「おどるビートル亭」だ。
スリッパ情報もオススメの宿も、親切に教えてくれた。初心者はムルシウ支部の方が良さそうだなぁ。中央支部は混みすぎてるせいか、お役所仕事って感じがすごい。
「おどるビートル亭」は一階が酒場兼食堂で、二階が宿になっていた。
「いらっしゃいませ!」
「一泊お願いします、夜と朝の食事付きで」
「アタシも一泊でお願いするわ!一緒の部屋にしちゃう?」
受付していると、後ろからいきなりサリーナが割り込んできた。
「べ、別々の部屋で!」
「あらぁ、宿泊代奢るわよぉ?」
「一緒でお願いします」
節約って大事だよね。
ニコニコ邪気のない笑顔で笑いかけて来るサリーナ、まさか中身元妻じゃないよな…?
転生したら元妻がオネェでした。ってなったらどうしようかね。




