12 胃が痛くなるタイプです
「いやいや、まずは試験受けて腕試ししようってなるじゃろ?」
「確実に取得できる方を先に申請しちゃう方が効率良くないですかね?気持ちに余裕を持って試験を受けたいです」
「あれぇ、若さって無鉄砲なイメージあったんじゃがなあ…冒険者試験って響きワクワクせんか?」
「試験って聞くと胃が痛くなるタイプです」
「そうか…」
面談室に通されて、間も無く入ってきたのは好々爺然としたご老人だった。定年はないんだよね、この世界。受付も推定50代のクリスチーナだし、けっこう高齢そうなギルド長、若さに夢を見ているんじゃないだろうか。
父と、姉の旦那さんからの推薦状があったので、ギルド長的には本人確認の軽い面談ができれば良かったらしい。第2種免許は、腕っ節は強くないが特殊技能があるとか、学者として各国に専門的な調査に赴く事が多い人がメインで取得するものだ。
「転生してる妻と娘に会いに行くんです」
なんて言えないので、建前では
「若いうちから他国を見て色々学びたいので推薦してもらいました!」
となっている。全くの嘘でもなく少しは、異世界ワクワクすっぞ!とは思ってますよ?
第2種免許は、Fランクから上がらない。ランクが上がるのは第1種の方だけ。んでAランクくらいになると偉い人から「他国でちょっと面倒なおつかいヨロシク!」なんてクエストが来る事があるがちゃんと依頼書に出国許可証とか入国許可証とか付いているもんだ。普通は必要ないのが第2種免許。
ランク上がらなくていいなら第2種だけでもいい。しかしFランク単独で受けられるクエストは賃金も安いし、冒険者でやってくつもりがあるなら第1種免許は必須だ。
「さて、このカードに指を押し付けて、誓いの言葉を言うんじゃ」
黒っぽい石板の上に置いてある、金属プレートのようなカードが冒険者証らしい。
名前と、嘘をついていませんと言う事を宣誓するとカードが一瞬光り、文字が浮かび上がってきた。
ランクF
冒険者ギルド ムルシウ支部発行
第2種に限る
「ギルドや関所の魔法鉱石版の上に置きながらカードに触れれば本人確認できるんじゃよ。依頼受領や達成の際はカードに記録してくれるからの、無くさんようにな」
成りすましは難しそうだ、盗難の心配は少ないかな?
「無くしたら?」
「そうじゃのう…うちなら下働き半年くらいしてもらいたいのう。クリスチーナの肩たたき1年間でもええぞ」
再発行は大変面倒そうだ。
あとクリスチーナは肩こり酷いのかな。後でストレッチを教えてあげよう。スリッパ情報と交換で!
「もちろん、第1種も受けるんじゃろ?あとはクリスチーナから聞いてくれ。死なないように頑張るんじゃよ!」
「ありがとうございました」
礼をして面談室を後にした。
これで一応魔王領には行ける。でも先立つものが欲しいしとりあえず冒険者で生計を立てる予定なので、試験は嫌いだが受けるしかないか…。チートがあれば、Fランクの依頼だけでも驚くほどの成果が出て暮らしていけたりするんだろうか。それいいなあ。