11 翻訳してくれる機能はありません
ムルシウの町は、田舎町って感じだった。もちろん俺の村に比べたらかなりデカイけど。食料品店もたくさんあるしね!
「まずは冒険者登録かな」
馬車の降車場は街はずれだったので、のんびり観光がてら中心部へと歩き進んだ。それっぽい建物に視線を向けると、西部劇に出てくる感じの木の看板に「冒険者ギルドムルシウ支部」と書いてあった。父に字も習ったので、看板も読めるぜぇ〜(はじめから読めるとか翻訳してくれる機能とかありませんでした)。
俺はまず入り口を睨みつけた。次に周囲を見渡した。お前みたいな坊主の来るところじゃないぜガハハ!とか絡んで来る輩に出会うんじゃないかと思ったんだが、杞憂だったようだ。
少し離れた場所で何かもめているような声が聞こえた気がしたが、すぐ静かになった。どうやら思った以上の小心者らしい、自分。いや、俺は慎重な男なのだ。そう言ったほうがカッコいいよな。
「すみません、登録希望なのですが」
何事もなく入り口をくぐり、誰もいない受付に声をかける。
「はいはーい」
パタパタと、奥の方から熟女が出てきた。柏餅の葉っぱみたいな髪型で、エプロンをしている。胸にはクリスチーナと名札が付いている。
スリッパまたはサンダルっぽい足音がしたが気のせいだろうか……?
ちなみに俺は革のブーツを履いている。父のお下がりだが、魔法で加工がしてあるとかで中古でも傷んでいない良いものだ。
大多数の人は革の靴だと思うんだけど……スリッパだったら室内用にちょっと欲しい。
「お待たせしました、っと。登録ね、登録……やだわ、マニュアルどこだったかしらね?」
冒険者になるには二つのパターンがある。
冒険者試験を受けて、合格して免許をもらうパターン。こちらは第1種免許になり、Fランクから始まる。主に国内の活動で使うものだ。王道だね!
俺が今回欲しいのは第2種の免許で、住民票的なものと、Aランク以上の冒険者または領主以上の地位の人間の推薦状があれば発行される(ただし面接あり)。これは国際免許扱いとなり、パスポートとしても使えるものだ。
第1種の免許を取得して、自分がAランクの冒険者になってから自分を推薦しても第2種を取得できるが、正直何年かかるかわからない(いろいろ普通なんで!)。
その点第2種免許ならすぐ行けちゃう。そうだ、魔王領、行こう。ってできちゃう。
「あらあら、これ初めて見るわー、ボクすごいのね。えーっと、推薦状並べてね、ここに血判押してね。こっちはサインしてちょうだいな。あら、やだわ、最後はギルド長のサインもいるのね。あらー」
「面接があると伺ったのですが」
「あら、そうねそうね、書いてるわ。じゃあサインと面接とだわね、ギルド長に会ってもらうわね。案内するわ、そっちから中に入ってちょうだいね」
クリスチーナの案内で受付カウンターの脇にある扉から奥に進むと、2階に上がる階段があった。階段の脇のスペースに椅子と小さなテーブル、食べかけの果物と飲み物がある……ここで休憩してたんだな。そしてやはりクリスチーナはスリッパを履いていた!
村では見たことなかったけど、お高いのかしら。
後で聞いてみよう……。




