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 とある日、俺たちはまだ街を目指して移動していた。

 数日前にようやくあの忌々しい荒野を抜けだし、今は森の中を移動中だ。


 森の中を歩いて思ったが、あの荒野とは対照にじめじめしている。

 木が生えすぎていて空を見る事も出来ない。

 何だか気分もイライラしてくるような場所だ。


 今は神殿の中で休んでいる。

 すると……


 ピピッ


 機械音と共に目の前に画面の様な物が出てきた。


 「ん?なんだ?『侵入者』……侵入者ッ!?ちょちょちょちょッ、まて!まさか人か!!」


 動物とかが入ってきた時はこんなメッセージ出てこなかったし、人である可能性が高い。


 ドガンッ!!!!


 「ご無事ですか主様ッ!!」


 俺が大声を上げた瞬間、部屋のドアを蹴破る勢いでバアルが入ってきた。


 「あ……うん、大丈夫だよ。いや、そんな事より、侵入者!侵入者だってよ!!」

 「これは接触して街の場所を聞き出すチャンス!!」

 「即刻見つけ出し排除しなければ……」

 「「え?」」


 今俺と同時にとんでもない事を言わなかったか?


 「バ、バアル?どうしてそういう答えが出ちゃったのかな?」

 「ここは主様を崇める神殿にして、主様の城……許可なく侵入した不敬な輩は、即刻始末しなければ。と考えました」

 「……いや、うん。まぁここは俺の家でもあるし、相手は不法侵入者でもあるんだけどさ。ほら、今は緊急事態じゃない?接触して、街のある場所を聞くのがベストだと思うんだよ、うん」

 「……はい、主様の仰る通りです」


 なんて顔してるんだ。

 どんだけ侵入者を始末したいんだよ……


 「まぁその、今回は特例って事で」


 ちょっと怖くなってきたのでこの話はここで斬る事にする。


 「じゃあ、会いに行ってみようか」

 「ッ!?お待ちください!まさか主様自らお迎えに!?」

 「え?そうだけど……」

 「なりません!それだけはなりません!!」


 バアルは泣きそうなくらい必死だ。


 「わ、分かったよ。じゃあこの部屋にいるから……」

 「玉座の間に居てください!!」

 「……玉座の間にいるから迎えに行ってくれるかい?」

 「仰せのままに」


 言わされたんだよ。


 結局、俺は玉座の間に待機することになった。


 ちなみに、俺は玉座の間にある玉座が結構好きだ。

 材質は硬いはずなのに、実際に座ってみると、なんとも言えない心地よさを感じるのだ。

 こう、身体と心が癒されるような、そんな感じだ。


 実際、俺だけが見る事の出来る神殿の取扱説明書の様な物で調べてみると、あの椅子には俺を癒し保護する力があるらしい。

 あの玉座にはバリアもあるとかなんとか……

 そして、俺以外が触れると、それだけでいろいろ吸い取られて死にかけるみたいだ。

 バアルが触って大変なことになった。


 多分、この神殿内で一番安全なのはあの玉座なのだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~



 <side.???>


 俺たちは森の中で見つけた巨大な建物の中に入った。


 「いままでこんな建造物、この森になかったよな?」


 俺はパーティーメンバーに向かって言う。

 その問いに、仲間の剣士の男が答える。


 「そうですね、仮に僕たちが知らないだけだとしても、噂にすらなっていないなんておかしいですよ。魔法で隠されていたとか?」


 仲間の剣士もまた問う、その視線は、仲間の魔法使いに向いている。


 「この森にそんなものがあったら気付くわよ。神代級の物だったら分からないけど……」

 「これだけの物が、果たして神代の物じゃないと言えますかねぇ?」


 魔法使いの言葉に対し、そういったのはメンバーの神官。

 ちょっとおっとりした奴だ。


 「それにこれ、多分神殿だと思うんですよねぇ。造りが何となくそんな感じがしますぅ」

 「随分曖昧ね」

 「いやぁ、私は神官であって、学者ではありませんのでぇ」


 曖昧な答えではあったが、彼女の目を見るに、ここが神殿であると確信しているようだ。


 「ここが神殿であると分かっていながら、よくもまぁここまで来ましたね。異教徒よ」

 「「「「!?」」」」


 気付かなかったッ……!!

 目の前に現れたのに、いつここに来たのかすら分からねぇッ……!!


 「ごめんなさい、索敵を怠った訳じゃなのよ?」

 「それぐらい俺だって分かってる。あの女、あらゆる能力がダンチだッ」

 「そうだね、しかも体がビリビリする。とんでもない覇気だ……」

 「……貴女が、この神殿の管理者ですかぁ?」

 「お、おい」


 仲間の神官、マリテが、あろうことか現れた女に話しかけた。

 だが、足がかなり震えている。

 気付かなかったが、俺も体が強張っている。


 「……違います。本来ならば、こうしておしゃべりなどせず、即刻始末するところですが……主様がお待ちです。私についてきて下さい。……ここで下手な事をすれば、直ぐに殺します」


 一人残っていればいい。


 女は最後に小さく、しかし間違いなく、そう言った。

 その言葉を聞いたとたん、体温が急激に下がり、まるで氷にでもなってしまったかのような、そんな感覚にとらわれる。


 現れた女は、それだけを言うと直ぐに歩き始めてしまった。


 そして、自然と体が女に合わせて歩き出す。

 従わなければ死ぬ、身体が本能的にそう理解しているのだろう。

 ここでモタモタしていたら、間違いなく殺される。


 ……それにしても、後ろから見ても分かるくらいの、まさに絶世の美女だ。

 街でかわいい子を見たら、ホルトと一緒に今の子スゲーかわいいな!とか話してるんだろうが、今はそんな気分にならない。


 頭の中でぐるぐると考え事をしていると、女が止まった。


 「この中で、主様がお待ちです。決して、失礼のないように」


 この中?……


 「嘘だろ?」


 思わず声に出てしまった。

 焦って女の方を見たが、特に気にしている様子はない。

 良かった……


 俺たちの目の前、壁だと思っていたそれは、バカでかい扉だった。

 この中に、この化け物女を従える奴が……


 俺たちは顔を見合わせる。

 みんな緊張というか、怯えというか、そんな感じの者が入り混じった顔をしている。

 ただ一人を除いて……


 「(……マリテ?)」


 神官のマリテだけが、みんなとは違う顔をしていた。

 困惑、が最も近いだろうか?

 一体何に対して……


 女が扉に触れる。

 そして……


 「序列第一位『バアル』。入場を申請します」

 『……許可する』


 扉から若い男の声が聞こえた。


 ていうか序列だと!?

 つまり他にもこんな化け物が居んのか!?※まだいません。


 第一位、つまりここの最強って事か……


 扉が開き、『バアル』と名乗った女は、まっすく進んでいく。

 俺たちも俺について行く。


 スゲェ、まずそう思った。

 それ以外に感想が見つからなかった。


 奥にあったのは玉座だ。

 結構高い位置だ。

 十段以上ある階段を上らないと、座れない位置にある。


 次にこの場所だ。

 純白に煌めく空間、汚れの存在を許さないというような、そんな場所だ。


 俺たちは仕事柄、何度か王城の謁見の間に入ったことがある。

 が、ここまで凄いのは見たことが無い。

 比べる事が間違っているというほどだ。


 そして、玉座には……


 優しそうな雰囲気の青年が座っていた。


 「バアル、ご苦労様」

 「はっ」


 強そうには見えないが、間違いなくこの女を従えているようだ。

 こんな化け物を従えているんだから、てっきりそれ以上のが来ると思っていたのだが、まさか普通の青年とは。

 拍子抜けだな。


 「ところで……何で彼らはこんなに怯えてるんだ?」

 「主様のお力に恐れをなしているのでしょう」


 あんただよ!!

 あんたにいつ殺されんのかビビってんだよ!!


 「…………」

 「ん?おい、マリテ?」


 マリテが、意を決したように立ち上がった。

 殺されるぞ!?どうしたんだよ!?


 「貴方様は、神……ですか?」


 そこにはいつものおっとりした、気の抜けた喋り方をするマリテは居なかった。


 「バアルッ!!!!」


 殺されたッ、そう思った。

 だが……


 「……寸止め?」


 まさか……


 「止めた、のか?」


 俺は玉座に座っている男を見る。

 あの男は、バアルと名乗った女が、マリテを殺そうとしてたのを止めた。

 俺たちは、全く、殺そうとしたその動きにも気付けなかったのに……

 それなのに、あの男はそれに気づき、そして止めた。


 間違いない。

 ここで一番の化け物は、バアルとかいう女じゃねぇ。

 あの『玉座の男』だ。


 「えっと、どうしてそう思ったの?」

 「ここに、入った時、何となく、ここが神殿だと、わかりました。そして、そこの方が、現れた時、私に異教徒と、言いました。ここで、この場所が神殿である、という確信と共に、この方が何かを崇めていると、わかりました」


 マリテは途切れ途切れに言葉を続ける。


 「そして、最後に、『主様』という、言葉です。神を崇める者にとって、『主』は『神』以外に、ありえません」


 そんなこと考えてたのか。

 全然気にしてなかったぞ……


 「なるほど……バアル、後でちょっと話がある」

 「ッ……わかり、ました」


 バアルとかいう女が消え入りそうな声で返事をする。

 意気消沈、というか絶望、といった感じだ。

 やっぱあの男の方が強いんだ。


 今更ながら、ヤベェとこに来ちまった……

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