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\(^o^)/オワタ

 「バ……、…………い……ら……三………、俺の事……………ごめんな」


 生まれたばかりで、途切れ途切れにしか聞こえなかった。

 でもそれが、自分の主の声であることは理解できた。


 完全に目が覚めたのは、主が倒れる直前だった。


 私は主を急いで受け止める。


 近くに一枚の紙が落ちていた。

 そこには、『ペナルティ 三十日間強制睡眠』とだけ書かれていた。

 詳しい事は分からないが、主はこのペナルティを課せられてしまったのだろう。


 「……私が、守らなくては」


 それが主の命とあらば、私は何時までだろうと守ってみせる。


 主の命であれば、どんな事でもこなしてみせる。

 それが私の存在意義であり、私にとっての幸福だから。


 「お慕いしております。名も知らぬ主様……」



~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「うっ……ここは……」


 知らない部屋だ。

 多分神殿の中だと思うんだけど……


 「寝室?随分寝心地の良いベッドだな。……おおぅ、服が寝たときと違うな」


 いつの間に着替えた?

 いや、着替えさせられた、が正しいのだろうか?


 「……知らない天井だってやれば良かったな」


 今更どうでもいい後悔。

 意味はない。


 「さて……俺は本当に三十日も寝たのかね?身体はなんともないみたいだけど」


 一先ずこの部屋から出よう。

 この部屋が神殿のどこにあるのか調べないといけないし。


 そう思いベッドから出ようとした瞬間、誰かが勢いよく部屋に入ってきた。


 銀髪に青い目、大き目の胸に肩より少し長いくらいの髪。

 うん、素晴らしい。

 バアルだな、間違いない。


 「主様!!あぁ良かったお目覚めになられたのですね!!今日で丁度主様が眠って三十日目になりますあぁ申し遅れました私主様にお造り頂きましたバアルで御座います誠に勝手ながら主様が眠っておられる間は私めがお着換えさせて頂いたりお身体をふかせて頂いたりお身体をぬぐわせて頂いたりまさぐらせて頂いたり」

 「はわわ」


 はわわ


 この娘大丈夫か……?

 可笑しいな、バアルはこんな風に作ったつもりじゃないんだけどな。


 こう、当初の予定では、いつも俺の横に居て、静かで、頼りになって、気が利いて……どうしてこうなった?

 一体どこで間違えたというのだろう……


 まだ喋ってるし……


 「えっと、バアル?」

 「……大変失礼いたしました主様。何なりとご命令ください」

 「…………」


 ちょっと性格変わりすぎじゃない?

 いや、この感じが当初の予定だったからいいんだけど……言っちゃあれだけど、こう……不純物でも混ざってんのかな?


 いや、間違いなく俺の欲望という不純物の塊なんだけど……いや違う!!俺は純粋な思い(欲望)でこの娘を作ったんだ。決して不純物などではない!!※汚物です。


 「まぁいいや。聞きたい事がある。君はどこまで現状を理解している?」

 「勝手ながら、主様がお眠りにつかれている間、この建物、そしてこの周辺を探索させて頂きました。まず、周辺ですが、近くに人の生活圏は存在せず、魔物のみが生息しています。そして、この建物の中ですが、私はこの建物を神殿ではないかと推測します。私が生まれた時に理解していた事は、主様が私をお造りになった事、主様が何らかの原因でペナルティを負い、そのペナルティが強制睡眠で合った事……現状で理解出来たのはここまでです」

 「すごいね、ここが神殿だって推測したのには驚いたよ。それで正解だ。ここは俺の神殿だ。正確には、俺の能力によって作り出された物で、君はこの神殿の機能の一つを使って作ったんだ」


 俺の身体の世話だけでなく、この建物の事や、周囲の探索までやってくれていたのは本当に助かる。


 「お褒めにあずかり光栄でございます。まさかこの神殿が主様によって生み出されている物だったとは。さすがです主様」


 「さすある」である。

 何だかこれからも言われそうな予感。


 「その……主様、私如きが主様に質を問う事は大変不敬な事であると理解しているのですが……」


 おっと~?その考え方は矯正が必要だなぁ。

 それは俺が望んでいる物じゃないんだよねぇ。


 「その考え方は今すぐやめてくれ。気になった事があればいくらでも聞いてくれて構わないから。むしろ、君には常に俺のサポートしてもらおうと思っているんだ。意見でも指摘でもドンドン言ってくれ」

 「主様……」


 何だろう……バアルがとても熱っぽい視線をこちらに向けている。

 一体何が彼女の琴線きんせんに触れたのだろうか?


 「大変申し訳ございませんでした。私の理解が足らないばかりに、主様に余計な手間をかけさせてしまう所でした。私の使命、確かに聞き届けました。これからは、私が主様の補佐として務めさせて頂きます。早速ですが、一つ、気になる事があります」

 「なんだい?」

 「主様に課せられたペナルティとは何ですか?」


 ふーむ。


 「あのペナルティはね。さっき言った、君を作った際に使ったこの神殿の機能を使うと、作った者の性能に合わせてペナルティが課せられるんだ。まぁ実は軽減することも可能なんだけどね」

 「そんな……私を作るために、主様が……」


 ……この娘は常時こんな感じなのかな?

 いや、いいんだけどね?


 「でだ、そんな事はどうでもいい。実は、俺にはある目的がある」

 「その目的とは?」

 「俺はこんな大自然が広がる場所に自分の意思で来たわけじゃない。ここに俺を送り込んだ奴がいるんだ。俺は……そいつに仕返しをしたい」


 そう、あのクソ女に仕返しがしたいのだ。

 俺はバアルに何があったのかを話した。

 異世界から来た事以外すべてだ。


 「そのような事が……ッ」

 「ここに来て死にかけた時に思ったんだ。絶対に仕返ししてやるってね。殺しはしない。後悔させたいんだ。ぶっちゃけ他にやりたい事も無いし、とりあえずこれだけはやっておこうと思ってね」

 「わかりました。必ずや成し遂げてみせましょう。主様の復讐を、その愚か者に制裁を与えてやりましょう」


 怖い怖い怖いッ!!

 怖いよ!!結構目がマジなのもまた怖いよ!!


 正直言ってそこまで何持っている訳じゃないから気が済むまで何かしらやってやろうと思っただけなんだけど……まぁいいか。


 「それじゃあ今日はこれからの事をいろいろ話し合おう。情報交換みたいなものだ。明日から移動するよ」

 「かしこまりました」


 その後、俺はバアルの案内の元、この神殿内を探索し、ある程度なにがあるのか覚え、そのついでに歩きながら今後の話をした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~



 次の日の朝。


 「それじゃあ出発しよう」

 「お供します」


 俺とバアルは神殿を出て街を目指す事にする。

 と言っても、どこにあるのかも分かっていないが。

 つまり当てなんてない。


 あて~もなぁく さまよぉっていたぁ~♪

 手がかりもなく 探しぃつづけぇたぁ~♪


 「フンフ~ン♪」


 一人じゃないのが何だか嬉しくて鼻歌を歌ってしまった。

 まぁいいか。


 「さすがです主様」


 ……???

 まって、普通に理解するのに時間かかったわ。


 「さすがって……鼻歌が?」

 「はい。とてもお綺麗でした」

 「無理に褒めなくてもいいんだよ?」

 「無理だなんてとんでもないです!!主様のお声はとてもお綺麗でまるで心が洗われるようです!いついかなる時も主様のお声は素晴らしいのです!!」


 なんだろうこの気持ち。


 ……あれだ。

 服屋とかで試着をして、たいして似合ってないのに店員に「凄くお似合いですぅ」とか言われてメッチャ買わせようとして無駄に褒めてくる時と同じ感覚だわ。


 もしかしたら本気で言っているのかもしれないが、俺はまだそれが分かるほどバアルと一緒にいるわけじゃないからね。

 自分で造ったとは言え、まだ会ったばかりの様なもの。

 いずれ分かるようになる時が来ればいいのだが……


 ……あぁ、後、「さすある」頂きましたぁ。


 「……今度、一緒に歌でも歌おうか」

 「!?そ、そんな恐れ多い…私は主様のお声を聞くことが出来ればそれで…」

 「まぁまぁ、歌うのって楽しいよ?よし決まり!!いつかやろう!!」

 「あ、主様……」


 別に嫌がっている訳じゃないと思う……多分。

 まぁ俺がやりたいだけだからいつか出来ればいいや。


 ちなみに、神殿は消しました。

 いつでも召喚出来るからね。



~~~~街を求めて・4日目~~~~



 「…………」

 「…………」


 ……アカン、全然見つからん。

 まだ4日目だけど、ここまで何もなさ過ぎていろいろと辛い。

 ずっとサバンナが続いている。


 同じ景色が何日も続いている。

 辛すぎてバアルとも会話も最低限の意思疎通しか出来ていない。

 ごめんよバアル。


 寝るときだけは神殿を召喚してベッドで寝ている。

 もはやコレだけが唯一の癒し。


 表情どころか視線さえ動かす余裕もなく歩いていると、横でバアルが歩みを止めた。


 「主様」

 「……何か見つけた?」

 「魔物の様です。始末しますか?」

 「……いや、俺がやるよ」


 まだ使っていない能力があるし。


 「かしこまりました。魔物は3時の方角から迫っています」

 「わかった。ありがとう」


 俺は言われた方向を見る。

 数秒すると、魔物が小さく見え始めた。


 流石だな。

 この距離で索敵が出来るなんてすごすぎる。


 「バアルは凄いな。あんなに遠くの魔物が分かるなんて」

 「お褒めいただきありがとうございます。主様であれば、どれだけ離れていようとも居場所がわかりますよ?」

 「……お、おう」


 なんだそのストーカーの極みみたいな能力……


 「……そんな能力つけた覚えないんだけどなぁ」


 これを呟いた瞬間の俺は、多分今までで最も遠い目をしていたと思う。

 バアルはそろそろヤバいと思う。


 まぁいい。

 そんなことをやっている内に、魔物が近くなってきた。


 「バッファローモドキの大群と比べたら迫力不足だな」


 何となくそう思った。


 それでも魔物はニ十匹近くいる様だ。

 見た目はモ〇ハンのラ〇ポスみたいな感じ。

 色は違うけど。

 後トサカもない。


 「ファ〇オに歯向かう愚か者めが!!!」


 俺がそのセリフを言った途端に、俺の頭上から極太レーザービームが撃ち出され、魔物たちは消し炭になった。


 やった!リアルオ〇マンだ!!

 これメッチャやりたかったんだよね。


 「主様、フ〇ラオとは何でしょうか?」

 「〇ァラオはね、人であり王であり、そして神である偉大な方の称号のような物かな?」


 後その位置を伏せるのは辞めなさい。


 「……主様は神だったッ!?」

 「あっ!!いや、違うからね!?言ってみたかっただけだから!!特に意味はないから!!」

 「……はい、理解しました。最重要の秘匿事項として記憶しておきます」


 \(^o^)/オワタ


 ……もういいや、どうにでもなぁれ♪


 ちゃんとレーザービームの能力の確認も出来たから良しとしよう。

 ……そうしておこう。

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