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崇めよぉおお!!!!!!

 「うっ……なんだ?俺は……」


 すごく頭が痛い。

 目がチカチカするし、耳は締め付けられるように痛い。


 「……これは、期待できるかもしれませんね」


 何だ?今の声は誰だ?

 一体どういう意味だ?


 俺は何とか身体を起こす。


 「初めまして勇者様。私の呼び声に応えて下さり、ありがとうございます」

 「……は?」


 何だこいつは?

 豪華な装飾が付いたドレスを着ている女性が俺に話しかけてきた。

 後ろには数人の全身鎧が立っている。


 何だこのコスプレ集団は?そもそもここは何処だ?


 「あの……勇者とは一体?」

 「困惑するのも無理はありません。貴方は、異世界からこの世界へと勇者として召喚されたのです」


 勇者?俺が?

 なんで?

 ちょっと頭が追いつかないよ?


 召喚とか勇者とか、そういうのがまず分からない。

 そんな事言われてどないせぇっちゅうねん。


 「まずは勇者様のお力を確かめましょう。こちらの板にお触れ下さい」

 「えぇ……」


 詳しい説明もなくいきなり触れと言われて困惑するが、とりあえず言われた通りそれに触れる。


 「……『レーザービーム』と『神殿召喚』?」

 「な、なんですかこれは!?」


 俺が振れたことで現れた文字を見てドレスを着た女性が驚愕の声を上げた。


 「レーザービーム?それに……神殿召喚?神殿なんて召喚して何になると言うのですか……期待していたのに……これは役立たずですね」

 「は?」


 何かいきなり役立たず判定されたんですけど?

 シンジラレナーイ!!!


 ……例のポーズはしてないよ?


 見ると、女性の優しそうな目が冷たい物に変わっていた。


 「役に立たぬ奴め! この世界の何処へでも 行くがいい!!」

 「そ そんな! それだけは かんべんを!」

 「黙れ!」


 『ラムホール』


 勇者は謎の穴に吸い込まれた


 「あーれー!!」


 どうしてこうなった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「うっ……本日二度目の感覚だ……」


 展開が怒涛で追いつけない。


 「はぁ……ココどこ……お家かえして……」


 周囲を見渡してもサバンナみたいな景色しか見えない。


 「くっそ、マジでここどこだよ……」


 周囲には誰も存在せず、どこで無くしたのか鞄もない。

 とてつもなく心細い。

 寂しすぎて死んじゃいそう。


 「……ん?あれは……視界がぼやけてる……という訳じゃないみたいだけど」


 遠くの方で、何かが揺らめいている。


 「あれは、砂煙?あそこに何かあるのか?」


 誰もいない、持ち物は今着ている服だけ。

 何かを見つけたかった俺はその煙の方へ歩いていく。


 「……近づくの早くないか?俺歩いてるよね?」


 思わず立ち止まって足元を確認してしまうほど、砂煙の元に近づくスピードが早い。


 「ちょっと待て……砂煙、近づいてきてね?俺歩いてないよ?」


 まさか砂嵐だったのか?

 だとしたらヤバい。

 でもそれとは違うような……


 「大地が……ガイアが泣いている……って、ボケかましてる場合じゃねえ!!地面が小刻みに揺れてるんですけど!?」


 その揺れは段々大きくなってきている。

 そして見えた。


 「やばいよやばいよ!!何で近づいてきちゃったんだよ!!あれ『動物の群れ』じゃねぇか!!」


 迫りくる砂煙は、謎の動物たちの群れがとんでもない速度で走った事でまった砂だった。

 すっごーい!!はやーい!!


 「逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!!頑張れ俺の大殿筋だいでんきん大腿二頭筋だいたいにとうきん腓腹筋ひふくきん大腿直筋だいたいちょっきん前脛骨筋ぜんけいこつきんよ!!!!!!」


 ※大殿筋・・・足を伸ばす時、足を開く時、座って立ち上がる時、階段を上る時に働く。

        お尻の所にある筋肉。


 ※大腿二頭筋・・・膝を曲げる時に働く。

          骨盤からひざ下まで伸びている筋肉。


 ※腓腹筋・・・伸びている足を持ち上げる時に働く。かかと上げる時、歩く時に働く。地面をける時に働く。

        脹脛のの筋肉。


 ※大腿直筋・・・股関節を曲げる時に働く。

         腰から膝の前面に付いている。


 ※前脛骨筋・・・歩く時に足首を上げ、特に体が前傾姿勢になる時、歩く時に働く足の負担大い時は、ここの筋肉がかたくなる。

         脛に付いている筋肉。


 注・・・ここであげられているのは、あくまで、走る際に使われている筋肉の例です。


 「もっと……もっと加速はやく!!……やっぱむり!!死ぬ!!このままだと間違いなく死ぬぞぉ!!!」


 どんなに頑張って走っても後ろにいる動物共の方がめちゃくちゃ速い。

 しかも近くになったから分かったけどバッファローみたいな動物が走っているのだ。


 なぜこっちに向かっているのか、重要なのはそこじゃない。


 「うっ、くそっ!!このスピードが保てても、後二十秒くらいしかもたねぇぞ」


 どうやってこの状況から生き残るか、である。


 「これで死んだら、最後はウボァ―とか言って死んでやる!!いや、うごごご!の方がいいか?……どっちでもいいよそんなもん!!!『レーザービーム』でも『神殿』でもいいからなんか出ろ―――!!!!」


 俺は決死の覚悟で振り返り、大声で叫んだ。

 すると……


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!


 「うわわわっ!!」


 地面が大きく揺れ始めた。


 ドゴォォオオオン!!!!


 そして……


 「……ぅえ?」


 大きな音と共に、バッファローモドキの群れの中心に巨大な何かが現れた。

 それの出現と共にバッファローモドキは下から突き上げられる形で宙を舞った。


 「……城?いや、神殿?」


 真っ白だ。

 あの建物その物が光を放っているかのように見える。

 それ程までに美しくに感じる。


 そしてデカい。

 今まで見たことが無いくらいデカい。

 しかも周りに柱みたいなのが浮いてる。二十本くらいかな?

 そしてその柱もでかい。


 「……これが、『神殿召喚』か」


 中が気になる。

 とりあえず入ってみよう。


 「入り口まで遠いなぁ……」


 そもそも神殿がちょっと離れたところに召喚してしまったのでそれが面倒。


 周りのバッファローモドキだった肉塊は見ないことにする。


 キュィィン!!!!


 「うおッ!?なんだなんだ!?」


 神殿に向かって歩いていたら変な音が鳴った。


 『………………』

 「……うへぇ、なるほどね。そういう事かい」


 変な音と共に、俺はこれが何なのか理解した。


 「今、俺が立っているこの場所からが、この神殿の敷地内という訳ね」


 神殿の領域内、これが最も重要と言えるだろう。


 「こりゃあすごいな……オーバーテクノロジーにも程があるわ。あのクソッたれな女は役立たずとか言ったけど、とんでもねぇ」


 最高じゃないか。


 「この神殿の領域内において、俺は『無敵』だ」


 先ほど、変な音と共にこの神殿に関する知識が頭の中に入り込んできた。

 中に何があるのかは分からないが、使い方はもうわかる。


 「無敵と言っても、殺されない訳じゃない。首を切り落とされれば死ぬし、食べなければ餓死する」


 でも、この領域内に居れば、俺は常に疲労や怪我などの身体的なダメージが凄い速度で回復する。

 更に、何かから攻撃されてもある程度はダメージがカットされる。


 「何で神殿なのかが分からなかったけど……これは俺の神殿、『俺の存在その物を高める為の神殿』なんだ」


 いうなれば、俺を崇める神殿。

 何と言う事でしょう、俺は崇拝の対象になってしまった。


 まぁ崇められなければいけない訳じゃない。

 この神殿の領域内に入っていればいいのだ。


 「しかも、俺が認めた者以外はこの領域内に入ったとたんに弱体化する」


 これは本当に凄い。


 「更にこの神殿には護衛が存在するらしいんだけど……まぁとりあえず室内に行ってみるかね」


 ワクワクが止まらない。

 領域内にいる事もあって足取りが軽い。


 気が付いたら神殿の入り口に付いていた。

 気分がウキウキで飛び跳ねたくなってきた。


 「おぉー、やっぱり中も綺麗だなぁ」


 色鮮やかなタイルや、壁や柱に施された彫刻、神殿その物が芸術作品であるかのようだ。


 「さて、まず最初にやることは、もう決まってる」


 護衛の作成。

 お供である。


 オトモと言うと二足で歩く猫ちゃんが思い浮かんでしまうが、神殿の奥にある部屋で作れるらしい。

 早速行ってみよう。


 俺は神殿の奥まで進み、そこにあった部屋に入る。


 「ん?あれに書いていけばいいのか?」


 部屋に入ると一つの机が中心にあり、その上に紙が一枚置かれている。

 俺は置かれていた椅子に座る。


 「えっと、書くものは……っと、うおっ!?」


 書くものを探していると、目の前にいきなり現れた。


 「ビックリした……これを使えばいいのか」


 俺は紙を見てみる。


 「ふむふむ……項目があるんだな」


 名前、容姿、性別、大きさ、口調、数などなど……

 これ以外にも項目がいくつかある。

 そして、その全ての項目で、更に詳細を詰める事も可能になっている。


 「へぇ、一度に大量に作ることも可能なのか」


 だが、これを使用するにはあたって制限がある。


 作ったお供のスペックに応じてペナルティが掛かるのだ。

 そのペナルティで直接的に命が危険に晒される事は無いらしいが、私生活に支障をきたすものもあるようだ。


 例えば、一か月間断食とか。

 これで餓死することは無いが、空腹は感じて辛い、みたいな。


 一か月強制睡眠とかだったらヤバいな。

 その間は、例えこの神殿の中でも殺されかねない。

 まぁ今は俺の命を危険に晒すものはないが、何が起きるかは分からない。


 「そういうのを考えると、複数のお供を一気に作ってこの神殿を守らせるべきかもしれないけど……」


 複数作るとなると、確実にペナルティは大きくなるが、俺自身とこの神殿を守ることが出来る。


 「だが!!俺はあえて!!一体のお供を作るのだ!!!よーし!!気合!入れて!行きます!!」


 俺はただひたすら紙に書いていく。

 性別はもちろん女性、男が嫌いってわけじゃないんだけど、ずっと男と二人っきりってのは嫌だし、きっとそれはお互い様だろう。

 容姿や口調、性格などは細かく決めていく。

 俺の理想の女性を作り上げるのだ!!!


 例え造り物でもいい。

 いや、造り物だからこそ、理想を現実にして見せる!!!

 家事全般もこなせるようにしないとな。

 家庭的な女性は魅力的だ。


 「ちょ、待ってwwwメ、メガネwwwメガネ単体で項目が存在するwwwしかも設定こまけぇwww」


 サイズ、色、形、目の視力……視力ここかよ、見逃してたらヤベェじゃん。

 笑い事じゃなかった。

 サイズの中にもレンズの大きさとかフレームの大きさとかもある。


 「ま、今回は着けないけど」


 視力だけいじってメガネの項目を閉じた。

 メガネっ娘好きの人たちよ、すまぬ。


 俺は心の中で謝っておいた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「ふぅ……メッチャ時間かかったな」


 詳しい時間は分からないけど、多分6時間は超えてると思う。

 もっといってるかも。体痛いし。


 「さて……っと、あれ?」


 作成できない。


 「って、あぁ、名前決めてなかったな。どうしようか」


 ……そうだ。


 「バアルだな。ピッタリだろ」


 コイツにはずっと俺の隣にいてもらう。

 相談役みたいなものだ。

 基本的に何でも出来るだろうから、きっと頼りになるぞ。


 「それじゃあ『作成』!!!」


 すると、机の前方に謎の光が現れた。


 「おぉーもしかして、時間かからないのかな?それは助かるな。……ん?なんだこれ?」


 現れた謎の光を見ていると、机の上に新たな紙が現れた。


 「……え?」


 そこには……三十日間強制睡眠、そう書かれていた。


 「……さっきのフラグだったか。バアル、聞こえているなら……三十日間、俺の事頼むよ……ごめんな」


 ギリギリそれだけを言葉にして、俺の意識は暗転した。


 椅子から落ちた気がしたが、誰かが急いで受け止めてくれたような、そんな気がした。

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