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第十一話「再会と衝撃」

 さて、第二章開幕でございます!

 氷河龍討伐から、3ヶ月が経過していた。


 まだ夏の暑さが残るこの街も、紅や黄に染まった落ち葉に彩られ、春とはまた違った美しさを演出していた。

 秋真っ盛りである。

 人々の服装も少しずつ変化していき、温暖な地を求める渡り鳥たちは、そろそろ南下しようと長旅の準備を整えているかのようだった。


 秋と言えばあれだ、食べ物が旨い!

 米が収穫される時期だし、栗や芋、果物も美味しい季節である。


 そして何より、この季節には昇進試験があるのだ!

 合格すれば、合法的にSSランククエストに挑めるようになる。

 どうやって気持ちを高ぶらせずにいられようか、いや不可能だ(反語)。


 そんな訳で、ギルドの人間も全員ソワソワしているのである。


「今年こそは、周りの連中蹴落として俺がSランクになるんだ!」


 とか、


「テメエにゃ無理だよデブ!Sランクになんのは俺だ!」


 といった叫び声も飛び交う時期である。

 ……叫んでた奴らはたちまち喧嘩を始めた。


 そして同時に、この時期になるとギルドのメンバーが大体集結する。

 試験開催中にクエスト行ってて出られませんでした、なんてことになりかねないため、暫くは皆この街に留まるのだ。


 俺をあっちこっちのクエストに連れ回してくれたカレンも、例外ではない。


「楽しみね、私も早くBランクになりたい!」


 カレンはフォークでパスタを綺麗に巻きながら言う。

 楽しみなようで何よりである。

 よかった、暫くは振り回されずにすみそうだ。

 

「俺も早くSSランクにならなきゃな。オーファスと次に会った時に驚かせてやるんだ」


 俺はビーフシチューを口に掻っ込みながら言う。


「ちょっと、口に物入れたまま喋らないでよ。あとオーファスって誰?」


「オーファスってのはね―」


 カレンは眉をひそめたが、俺は構わず食べながら説明する。


 SSSランク、オーファス=レスタ。

 俺がギルド内で最も尊敬する魔導士である。

 彼は二年前からあるクエストに出かけていて、戻ってくる日も未定なのだ。


「へえ、SSSランクってことはカミルより格段に強いのね」


「まだ一回しか手合わせしてないけど、あの人を初期位置から数歩動かすのが精一杯だったよ。膝も手もつかずにコテンパンにされた」


「え、ってことは……そのオーファスって人は数歩しか動かずにカミルをあしらっちゃったってこと?」


 俺はそうだよ、と応えながら、スプーンを動かす。

 そう、オーファスはとんでもなく強いのだ。

 自作の魔法陣を駆使して様々な魔法を使ってくるため、対処が難しい。

 魔法陣による攻撃は全て無属性なので、例えば火属性の魔法を水属性の魔法で打ち消すとか、そういった方法は使えない。

 曲がりなりにもSランクの俺を、まるで赤子の手をひねるようにあしらってしまうその強さは、まさにSSSランクに相応しいと言えるだろう。


 オーファスの話で盛り上がっていると、ギルドの扉がバタンと勢い良く開いた。


「はあ、ギリギリ間に合ったかな?」


「間に合ったかな?じゃねえよ、トルマ。お前が寄り道なんか提案するから遅れたんじゃねえか!」


「クエストが長引いたのは、ザリアがヘマしたからだろう?」


「まあまあ二人とも、落ち着いて……」


「そっとしておけ、クィール。どうせすぐ静まるさ」


「ライルは甘いんだから……」


 そんな愉快な(?)会話をしながら入ってきた連中は、俺の姿を見つけると、すぐ駆け寄ってきた。


「おお、カミル!久しぶりだな!」


「トルマ、久しぶり!ザリアもクィールもライルさんも!」

 

 そう。

 このトルマ、ザリア、クィール、ライルの四人は、俺が以前から仲良くしているパーティのメンバーなのである。

 入団当初から親交があり、何度か同じクエストにも参加させてもらっているのだ。


「戻って来ないから、死んだのかと思ってたよ」


「お前、笑顔でとんでもねえこと言うなよ……」


 にこやかに笑いかける俺に、若干長い金色の前髪を揺らしながら、トルマは苦笑いで応える。


「案外、トルマなら死んでたかもな。ププッ」


「おいザリア!てめえ!」


 長身、短髪、色黒と三拍子揃った健康的な外見のザリアは、こうしてとことんトルマを煽るのが好きなのだ。

 またギルドが騒がしくなったなあ……


「カミル、久しぶり〜」


 ワーワー言い合う二人を押しのけ、ひょっこりとクィールが顔を出す。


「久しぶり。相変わらず小さいね」


「あはは、アンタみたいな間抜け面したガキに言われたくないわよ」


 満面の笑みで毒を吐いてきた、この水色ロングのロリっ子「クィール」。

 彼女は俺より少し年上なのだが、身長はかなり低い。

 その分すばしっこいのが特徴である。

 てか間抜け面とはなんだ間抜けとは。


「久しいな、カミル」


「お久しぶりです、ライルさん」


 深い緑色の長髪男、ライルはにこやかに挨拶をし、俺もペコリと返した。

 いつも喧嘩するトルマとザリア、それをいちいちたしなめようとするクィールをまとめる、パーティのリーダーまある。

 ……苦労が多そうだ。


「で、どうでした?クエスト」


「ん?ああ、時間はかかったが成功だよ。ザリアが死にかけたのは危なかったけど」


 彼らは長い間、具体的に言うと一年と数ヶ月、あるクエストに出かけていたのだ。

 内容は知らないが、なかなかヤバいものだったという。

 Aランクのザリアが死にかけたというのだから、相当危険だったのだろう。


「まあ、全員無事でなによりですよ」


「そうだな。ところでその子は?」


 ライルは俺の後ろでつまらなそうにパスタを食べる少女を指差した。

 あ、やべ……カレンの紹介するの忘れてた。

 カレンはいきなり指を差されたからか、若干おどおどして俺の隣に来た。


「今年の春入団した、カレン=セフィリアです。今は俺とパーティを組んでます」


 俺が紹介すると、カレンはペコリと頭を下げる。

 気まずかっただろうな、悪いことをした。


「そうかそうか、私はライル=クレスタ。彼とは仲良くさせて貰っている」


 よろしく、とライルが手を差し出すと、カレンもおずおずと手を伸ばして握手をした。

 うんうん、こうやって交友関係を広げて欲しいものだ。


「可愛い少女だな。……ひょっとしてカミル、お前」


「いやいやいやいや、ただの友達ですって!下手なこと言うと俺が殴られるから勘弁して下さいよ!」


 まったく、これだから天然は……


「まあどちらにせよ、いつも俺達といる時以外はソロだったカミルに新たな友人ができたのはめでたいことだ。カミルを頼むぞ」


 カレンは少し小さな声で、はいと呟く。

 ライルはカレンの背中をぽんと叩くと、他の3人の喧嘩を止めに行った。

 カレンは若干紅潮していた。

 どうした、暑いか?


「あんな連中だけど、悪い奴らじゃないんだ。仲良くしてやって」


「そうね、面白そうな人たちだもの」


 カレンはささっと自分の席に戻り、残り僅かなパスタを大事そうに食べ始めた。

 好きだなあパスタ。


 暫くすると、またギルドの扉が開いた。

 なんだろ、今日は人が多いな。

 見てみると、王国の役人らしき男が二名、胸を張って立っていた。


「エッジオブイーリスの皆に告ぐ!今年の昇進試験は中止だ!」


 カチャン、と食器が音を立てる。

 ……ちょっとまて、今なんつった?


「もう一度言う!キメラ事件のゴタゴタで国がそれどころじゃないため、今年の昇進試験は中止とする!」


 とたん、ブーイングの嵐が起こった。


「どういうことだよ!」


「試験の為にクエストをさっさと終わらせてきたのに!」


「ふざけんなよ!」


「ハゲ!ノッポ!タラコくちびる!死ね!」


 おい一人悪口混じってんぞ。


「黙れえーーーーーーーっ!」


 役人さんの怒声が響く。

 そりゃハゲだのタラコくちびるだの言われたら怒るわな。

 まあ確かにキメラ事件の後始末やらなんやらがあるかもしれないが、こちらも「はいそうですか」と黙って頷く訳にはいかない。


「日を改めるとかできないんですか?」


 俺はなるべく冷静な声で言う。


「残念だが無理だな。国王も我々も今回の事件で手一杯なのだ。こちらとしても望んだ結果ではないことを分かってくれ」


 もう一人の男が応える。

 先ほど悪口を言われた役人は、心なしか泣いているように見えた。

 いや、泣いてるなあれ。

 嗚咽聞こえるもん。


「そういうわけだ、邪魔したな」


「ぐすっ……お前ら!絶対許さないからな!ひっく……」


 一人は威厳を保ったまま、もう一人はまるで喧嘩に負けた子供のような捨て台詞を残し、ギルドを去っていった。


 ……えー、どうすんのコレ。

 ほらギルドのおっちゃん達も皆へこんでるし。

 さっきデブだなんだ言い争っていた連中なんかもうほら、机に突っ伏してるし。

 カレンからも邪悪なオーラ漂ってるし。


「……カミル」


「ひゃ、ひゃい!?」


 聞いたこともないような低いトーンで、カレンは言う。

 思わず変な声を出してしまった。


「クエストいくわよ、クエスト!出来れば討伐系!魔獣共に怒りをぶつけてやる!」


 およそ女子が吐いくような台詞ではないのだがなあ……

 カレンの叫び声に、ギルドの皆が反応する。


「そうだ、この怒りを全部魔獣にぶつけようぜ!」


「根絶やしにしてやらあ!」


 うわあ、こんなに殺気に満ち溢れたギルド初めて見たよ。


「カミル、カレン、それなら私達と一緒に行かないか?久しぶりにパーティを組もうじゃないか」


 顔に青筋を浮かべたライルが、殺気に満ちた笑顔で言う。

 怖い、怖いよ!


「え?だってさっき帰ってきたばかりじゃむぐっ」


 俺の言葉を遮り、カレンは身を乗り出した。


「私も一緒にいていいの?」


「当たり前だ、カミルの友人なのだろう?爪弾きにする訳がないじゃないか」


 カレンはキラキラとした目線でライルを見ている

 はいそこ、勝手に仲良くならない!

 まあこの雰囲気は収まりそうにないし、付き合うか。


「いいですよ、行きましょう」


 俺は重い腰をあげ、承諾した。

 トルマ、ザリア、クィールの3人は、試験中止の知らせを聞いてからずっと沈んだままだった。


 あの兵士すげえな、ちょっと叫んだだけでギルドの雰囲気を良くも悪くも変えちゃったよ。

 ……いや、確実に悪い方に変化したな。


 まあいい、俺も若干イライラしてるし、魔獣共を根絶やしにしてやろうじゃないか。

 キャラクターの外見イメージ


・トルマ=カストル(♂)

 少し長めの金髪、青い瞳。妖○×僕SSの○狸的な感じ。


・ザリア=エルリック(♂)

 The・スポーツ少年のような見た目(なんかサーティーナイン○ルーズに似たようなやついたんだけど、誰でしたっけ……)。


・クィール(♀)

 水色ロング、かなり小さい(何が、とは言わないが)。


・ライル=クレスタ(♂)

 深い緑色の長髪、長身。基本笑顔。多分こいつが一番怖い。

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