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シャドウ・スピーカー  作者: ナレソメ
11/25

十一話〜チームプレイ〜


*1*


こうして俺たちはシンの元へ集まり、この世界の影と戦いに備え準備を始めた。


そしてシンは土岐田の元へ歩み寄って、語りかけた。


「土岐田さん、まずはあなたの能力から説明します。」


土岐田はうろたえた。何故なら自分自身どんな能力があるのかを分かっていないからだ。


「俺、なんか持ってましたか?変な影とか全然見た事も話した事も無いんですけど…。」


土岐田が自信なさ気に話すと、シンはポンと土岐田の肩を叩いて言った。


「あなたの能力とは、ずばり”勘”です。」


「か、勘?ですか?」


俺は思った。確かに土岐田は何事にも勘が良い。人の心境に敏感で、実際俺は何度も助けられている。


「そう、勘です。あなたは言葉や形が無くても、他人の異変や変化に敏感です。そしてその”勘”は時として大きな力に変わります。」


「つまり、どう言う事ですか?」


土岐田は自分の能力に興味津々だ。


「あなたの鋭い勘、すなわちあなたの能力を大樹エネルギーによって増幅させます。そうする事によって、私以上の感知能力が備わるはずです。」


「つまり、土岐田さんの役目は暗躍する影を広範囲に捉える事の出来る”網”です。」


土岐田は嬉しそうだった。自分の能力がいかなるものかよりも、役に立てる事に対してだ。


「あの!質問です!大樹エネルギーを使ってって言ってましたけど、どうやってそのエネルギーを俺に渡すんですか?」


そう来ると分かっていたかの様に、シンは影の姿に変わっていった。また、店長は力が抜けた様にうなだれ、ムクムクと影が立ち上がった。


「土岐田さんはこっちの姿は初めてでしたね。」


「何だか、怖いっすね…その姿。」


土岐田は少し身を引いた。


「すみません。こちらの姿の方が私の力がより多く出せるもので。」


そう言うと、影に変わったシンの一部がズルズルと地面を這って、土岐田の影とくっついた。


「それでは、今から大樹エネルギーを渡します。苦しいとは思いますが、少しの間我慢して下さい。」


その瞬間、土岐田の体が強張りうずくまってしまった。


「なんだ…これ…。」


「だ、大丈夫か?土岐田…。」


ほんの10秒程度続き、シンの影はまたズルズルと土岐田の影から離れた。


「はぁ…はぁ…何とか大丈夫だ。」


土岐田は息が荒かったが、俺たちの方を向いて笑ってみせる。


「これであなたも、本当の能力者となりました。よく耐えましたね、土岐田さん。」


「こんなん、へ、へっちゃらっす!」


いつもの土岐田だ。やはりコイツがいてくれると何だか安心する。


「そう言えば、エミちゃんはどんな能力を持ってるの?」


土岐田は既に呼吸も整い、何事もなかった様にエミに話しかける。


「わ、私は、うまく説明するの難しいんだけど、どうしよ…。」


エミが説明しようと言葉を探しているが、中々進まなかったのでシンが代わりに説明する事にした。


「その….ごめんなさい。こ、こう言うの苦手で…。」


「いいっていいって!エミちゃんはそんなところが可愛いんだから!」


ーーまったく、見てられないな。それにしても、土岐田の奴め…。


「では、私が代わりに説明しましょう。エミちゃんは元々心が弱くてね…よく悪い影に狙われてたんだ。私がこの世界に来て、一番最初に感知したのがエミちゃんなのです。そして影に狙われているエミちゃんに、私がここの場所に来るようにとエミちゃんの意識に問いかけた。そして、エミちゃんも大樹エネルギーを使って能力を手に入れたのです。」


「私はエミちゃんの知られざる能力に驚きました。土岐田さんの様に、増幅させるのでは無く、無の領域から開花させた力でした。」


「その力が、二つの世界の繋がりを断ち切る事のできる、”(つるぎ)”の能力です。」


土岐田は少し不機嫌そうに言った。


「なんか、俺のよりカッコイイっすね…。」


「ご、ごめんね、土岐田くん…。」


俺は土岐田に気づかれないよう心で笑っていた。


「何笑ってんだよ、お前。」


俺はドキッとした。まさかこんなにも勘が鋭くなっていたなんて…。なかなか厄介な能力だ。


「そして今回の作戦の主力である、佐藤さんとサエ。」


「はいはーい!ここにいますよーっ!」


サエは突然戻ってくる。さすがに俺ももう驚かないぞ。


「よろしい。それでは佐藤さん、サエ。君たちには大樹エネルギーは渡せない。と言うより、渡す必要がない。君たちは生粋の大樹エネルギー所持者だからね。」


「君たちの能力は使い方によって様々な力をもたらす事が出来る。だがその為には君たち二人のイメージを同調させなければならない。つまり、佐藤さんとサエが同じ様に意識を集中させ、シンクロさせた時にその力を発揮できる。」


「私自身、その力がどれ程の物なのかは計り知れない。」


俺とサエの力がそんなにも大きな物だとは思ってもいなかった。だが、シンさえも計り知れない力を、一体どうやって使うのか、俺は不安だった。


そして、俺とサエの役目は一体何なのだろうと思っていた。



*2*


シンは俺たちの前に立ち、集まった皆を見渡した。


「それでは皆、よく聞いてくれ。これより本作戦の説明をする。」


シンは強い口調で俺たちに今回の作戦の説明をした。


シンの説明では、こう言う事だった。


ーーまず、土岐田の能力で可能な範囲内の悪しき影達を感知し、”網”の能力で影達の動きを一時的に止める。


そして次はエミの番だ。危険を感知した影達は元の世界に逃げようよする。そこで、”網”に掛かった影の二つの世界の繋がりを、”剣”の能力で断ち切り、この世界に影達を留まらせる。これで悪しき影達は身動きが取れず、人間に憑依する事が出来なくなるらしい。


ここまでは主に陽動作戦に過ぎない。何故なら、強大な力を持った影は感知した時点で防衛線を張ってくる。シンが感知出来ないのも、その為だ。


だが、異変を感じた強大な力を持つ影達のリーダーは、恐らく何が起きたか確認する為に自ら感知パワーを発してくる。それを俺たちが逆探知し、敵の居所を掴む。


今回の作戦で最も重要なのは、敵のリーダーを探し出し、そいつにウイルスを感染させる事だ。


強大な力をもった影は、自らより力の劣る影と綿密にアクセスしている、つまりは悪しき影達の”脳”となる存在だ。


その脳にウイルスを感染させる事によって、この世界にいる悪しき影達を一掃出来る。と言う筋書きだ。


しかし、不確定要素が多い為に全て上手く行くとは限らないのが現状だった。


特に気掛かりなのは、敵のリーダーだ。シンでさえ、一体どれ程の力を持っているのか想像もつかない。


つまり、想像もつかない相手に対抗する為に、想像もつかない力を持っている俺とサエの能力が必要とされている。


まさに、出たとこ勝負な訳である。



そしてシンは俺たちに向け最後にこう言った。


「君たちの協力に、心から感謝している。この戦いでもしかしたら私達は死ぬかも知れない。だが、私は信じている。君達なら、きっとやり遂げてくれると。」


俺たちは、顔を見合わせた。こうして普通に立っていられるのも、これで最後かも知れないと思い、しっかりとその顔を、その姿を脳裏に刻んだ。

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