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Z E R O g a t e 〜白き髪の 色無き追憶〜  作者: シン風
インビジブル◆◇ストーリー
9/27

凛の回憶

敗戦は辛いものだ。それゆえ、凛の心はその傷を大きく残す。痛々しい程に……


しかし、その裏では影が蠢く。それは会話からするに、凛と関係がありそうだ。

怪しげな月染 燈と謎の両銃の男との会話。

一体彼らが言った事の真相とは?

また、謎の両銃の男は一体何者なのか?


色々なものが混じり合う中、一夜は明ける。


果たして今後、どのように動いていくのだろうか………




 凛よ……………

 力とは………(おのれ)の力とは……

 (おの)が心の中に存在し…

 魂の鼓動と共に……目を覚ます……


 いつか……お前は…

 自分の弱さを感じたり……

 また………不安、恐怖などが……

 お前に襲いかかるだろう……


 だが、自分を命を尊ぶその心を

 見失ってはいけない………



 自分を信じ努力せよ……



 そうすればきっと、魂はお前の気持ちに心に

 応えてくれるだろう………






 ◆___ (あく)る日 _ .*


 静か。耳に聞こえるのは自分の呼吸音_


 私は寝かしていた体を起き上がらせ、ふと目を開く。

 始めはぼやける視界も、暫く目をぱちぱちさせることで周囲に馴染み、はっきり見えるようになる。


 辺りを見回して、(ささや)いた。


「朝……………」


 窓から差し込む新鮮な光を見て、そう思った。光は暗いこの部屋の一部を明るくしていた。


 私はベットから立ち上がり、その窓辺へと向かう。朝だからか、冷たい床は少し辛いと感じる。稼働して間も無い脳だけに、(とげ)の刺さるような冷たさは更に(ひど)くなって、頭の神経を尖らせる。けど、そんな事はどうでもいい。

 前にゆくりと、足を滑らしながら進む。勿論窓からの景色を見るためだ。


「冷たい………」


 窓辺立てば太陽の光で暖かくなると思っていたが、光が弱いせいか、そうでもない。逆に更に冷たくなったと思う。外からの冷気が隙間(すきま)から入るが、為に。


 窓のとっての元へ、手を袖から出し、伸ばす。扉は軽く力を入れるだけで開く。すると黒い自身の髪は、凍てつく風に(あお)られ、ハタハタと波打つ。私は髪が舞って乱れないよう、そっと片手を耳に添える。

 そして今度は両手で、窓を押し出した。


 目の前に広がる世界を見ると、そこに映る景色に全身を一新させられ、あまりの事に思わず頭の中が(から)になる。

 見渡す限り無限を感じさせる空。

 広がりをみせる赤い雲。

 そして、自宅とは違う太陽。

 地上では山から、地平線の上から、海の上からなどなど様々なところから顔を出すのだが、こちらは白い幻想的な雲海(うんかい)の上からだけ出現する。

 白と赤のコントラストは何とも表紙付(ひょうしづ)け難い情景である。


 私は近くに掛けてあったガウンを上に羽織り、両腕を摩りながらテラスへと足を運んだ。


「ここは……雲の上にある……浮遊島……。全然、思ってたのと違う………」


 ここは浮遊島。空に浮かぶ天空城のようなものだ。

 故に見える景色もまた格別なもの。



 しばらくしてゆっくりその景色から目を離し、振り返って部屋を見る。

 彩られた家具。屋根付きのベット。ピンクのカーペット。

 どれをとっても一流尽くしの高級家具。

 そんな高級に纏われたこの部屋が、自身、凛の部屋である。


 部屋へと戻る。


 すると部屋の中央に位置するベットに目が行く。

 そして流れるように目をやっていると其の間、枕に至る。


 枕は濡れていた。

 それは私の中でも大変 (こた)えたものと関係しており、それが故に、なったものであった。


 ___完全敗北″


 力の前に何も出来ない自分


 脳裏に焼き付くワンシーン


 死に際の脱力感


 負けたという焦燥感


 これが敗戦。



 後日になっても残る悔しさがあり、それは胸を何度も熱くする。

 あのとき、まだ自分には出来たのではないか__

 頭の奥には今でも絶えず、自問自答の連鎖が渦巻いている。


 昨日の事をふと掘り起こした。

 昨日は散々な一日だった。いきなりの結婚の話。天雲 駿河に敗戦。入学式無し。校長室での薬の投与。


 昨日の入学式は一体何だったのだろうか。

 私は何の為に、胸をあれだけ高揚させて来たのだろうか。

 しかしもう忘れないであろうあの日は、悪かったと言えば嘘になる。

 何せあれ程、感情を揺さぶられた経験は一度も味わった事が無いのだ。それを貴重な体験だと言わずして何と言おうか。

 だが、それは客観論。全体的に見ればの話である。


 主観的には最悪だった。これが正直な感想だ。今日は昨日と違っていい日になることを願おう。



 *******************



 今日はあの日の後ということで、休日だ。

 今日一日 フリーである。


「今日は外に出て教材を買って、必要品もチョイスして………」


 しかし自由な日だからと言っても、やるべき事は沢山ある。

 学園に必要な道具を取り揃えなくてはならないのだ。


「よし!!」


 気合をいれる。部屋の片隅にある鏡に映る自分を見ながら、出かける為の服を選び、同じくクローゼットに並ぶ靴も選ぶ。


「これで………」


 縦長の反射板の前で一回、優雅に舞う。

 服装のバランス、色合い、綺麗さ、可愛さ、美しさ、魅了度………を確認する。


「コーディネート良し!!」


 軽く拳に力を入れながら、明るい一声発する。

 衣服はいい感じに仕上がった。今日は昨日の鬱憤(うっぷん)を晴らす意味で、明るめの服にしてみた。

 この衣装の色のように、今日一日晴れやかになって貰いたいものだ。


 準備の整った私はベットの横に立てかけている一本の黒い刀を手にする。これは無二の友のような存在であり、身に離さず常備している代物だ。フォトン・コアを触って出来たあの日から、私はこの刀と障害を共にしている。


「今日も行こうか、零影。」


 もちろん返って来る言葉は無い。


 その刀を静かに取ると、扉へと足を運ばせそして、手を掛け扉を開いた。


 扉が開くと廊下が見える。廊下には長々と続く赤い床が伸びており、オシャレ感を大いに感じさせる。

 その柔らかで心地よい床を踏みながら、外へと出る。

 そして目的地である、商店街へと足を進めるのだった。

 時は午前10、昼時と言ったところである。



 □■□■□■□■□■□■□■□



 商店街に着いた。


「私、あれがいいな」

「どれどれ……」

「あっち行って見ようぜ。」

「うめぇー。ここのクレープ、マジヤベェー。」


 ベンチに座り食事を楽しむ人、会話をして御ふざけをしている人、遊んでいる人………

 あちらこちらから引っ切り無しに聞こえてくる喋り声。

 周りには沢山の人混みが出来おり、賑わっていた。

 蟻の群れほどに、数えられない大衆がここにはいて、何が何やらカオスな状態だった。

 皆顔を見てみると、それはそれは楽しそうである。一年から三年までと、色々な人がいて、様々な事を行っている。ここにはそういった、活気溢れる景観があった。


 私は行き交う人達に絶えず目を流し首を回しながら、その雰囲気を楽しむ。


(わぁ〜凄い。商店街ってこんなにも、新鮮な感じなのね。)


 人混みの中を分け入って進み、教材などを手に入れるために、書店に向かった。



 ◇○_____


 辺りは人気(ひとけ)の少ない所へと着く。目の前には建物が建っており、大きく書かれた『クエ学書店』の看板が目に止まる。


 その建物の前に来ると、一先ず足を止め、息を整える。


「はぁ………はぁ…」


 ここまで来るのに通常5分もかからない道のりなのにも関わらず、実際ここまでつくのに掛かった時間は30分。6倍の時間である。

 凛は世間に疎い。それ故、人混みを歩く時の心得を知らないが故に、流されてしまったのだった。

 歩く時は直進し無くては、自分の道を進めないのだ。


 息を整え終えると、青ざめた顔ですぐさま重くなった足を踏みながら中へと入った。


 中に入ると書店の中は広く、また三階建てになっているのが下からも見え造りとなっており、沢山の本がズラ〜と上までずっと並んでいるのが分かる。ここには沢山の書籍の倉庫みたいである。


 辺りは静かでひっそりした空気を漂わせており、慣れない私はその空気に我を飲まれる。


「おほんっ。」


 一つ咳払いをし、飛んだ髪を整えたりと、身を綺麗にする。入って来た時の自分の格好を思い起こすと、恥ずかしくて堪らない。


 顔を赤めるて自分の羞恥を反省し終えると、一先ず店員を呼ぶ。

 そして授業のための教材を買うのであった。



 ○__不思議な少女__○


 全ての必要な教材などを買い終えると、他にもどのような本があるのか知りたく、色々と書店の中を歩き回る事にする。


 息を呑みながら辺りを見歩き、数々並べられた本の羅列に目を通し、呟いた。


「ここには、カルトレッツェの写本まで………」


 カルトレッツェとは、世紀末の偉大な魔道士の事で、人類が生まれて以来、最大の魔術を完成させたとして名を知られている。

 まだ存命であり、このアースのトップ G⒎(ジー セブン)に名を連ねた一人である。


 ここに並べられている本は、普通の絵本から小説、魔道書などなど様々なジャンルである。


 誰も踏み入らないであろう奥の奥まで踏み入る。



 寸刻(すんこく)___。


 明かりもままらならない奥に来てしまった。

 流石にここ、クエアランス学園 ーー 学生を多数有した名門校と雖も、こんな深くの所まで書物を読みにくる人が、一人や二人、いや1人たりともいるとは思えない。


 しかし__。

 それは自分のちっぽけな思い込みに、過ぎなかった。



 ___ 一人の女子生徒が、そこに立っていた。


 暗くてあまり見えにくいのであるが、見たところ覇気のない普通の人だと見える。

 その人は小柄な女性で眼鏡を掛けており、長髪で帽子を(かぶ)っていた。


 私はその人を見た時、幽霊が出たのではないかと驚いたが、それが人であると分かると安心した。


 恐る恐る足音を潜めて、本を読み耽っている少女の元へと近づき、声を掛けた。


「あの………」


 返事は無い。


 一歩先にいるその女性。依然手に本を持ったまま、僅かな光を頼りに文字を読む。


 無視される事の焦燥感を感じながらも、もう一度、今度は大きく声をかけてみた。


「お話を伺っても宜しいでしょうか。」


 しかし、いっこうに返事が無い……


 『ただのしかばねのようだ………』状態である。


 聞こえていないだけか、聞くきがないのか、或いは耳の不自由な方なのか?


 この状況では、何も分からない。


 すると突然その少女は、ようやく本を閉じ始める。


「ごくりっ。」


 私は話が通じたと思い、唾を呑む。


 しかし___。


 彼女は下に本を置いた後、固まった一向に動かなくなる。


 話をかけてくるのかと思ったが、彼女はそうはしない。

 それどころか何も言わず沈黙してしまった。



 すると、彼女は手を動かし始める。


 !!


 何をするんだと、血眼になって見ていたのだが、結局それは別の本を読み耽る為の動作に過ぎなかった。


 どうやら、私の事なんて眼中にないのらしい。それより彼女にとっては、本なのだろう。


 私は無駄にかいた汗を吹き、彼女とのコミュニケーションを諦め、他の場所へと行く事にした。

謎の少女が現れる。

ここでは彼女が何者か分からなく、ましてあとあと私自身に関わってくる重要人物の一人になってくるとは、この時の私は思いもしていなかった。


それ以前に、既に、いや前から始まっていたなんて………。

今思えば、いつ始まってもおかしくなかったのだ。


次回__


赤い月(上)___○


4/2 誤字、訂正。

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