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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第十二章 『友情の指輪』
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Episode:カルディナ ② 『一世一代の嘘』

 カルディナがリウナに追い掛け回されている頃、獣人種ビースト達を引き連れたユリウス王は魁人の拠点を訪ねていた。



「話は分かりましたが、この国は探知結界で包まれています」


「先日お渡しした術を施してある地図を見れば、異常発生地帯は確認できる筈ですが……」



 魁人は旅立ちを予定している為、結界と国の全域を描いた地図をリンクさせていた。結界が何かを感知すれば、その地図に模様が浮かび、場所が分かるようになっていたのだ。これはマークセージを拠点とする魁人の、旅立ち後を考えた配慮だった。



「…………あー、そうだったな」

「……まぁあれだ、ついでだから魁人も手伝ってくれ」



「おいこらユリウス、テメェ忘れてたんだろ」



 ガルアがユリウス王を睨みつけるが、ユリウス王は視線を逸らし続けていた。



「手伝うのは構いませんが……紫苑!」



「ここに」



「模様の色は何色だった?」



 拠点内部に呼びかける魁人、すぐに魁人の背後に紫苑が現れた。



「はい、赤でした」



「時間はなさそうだな」



「退治屋モドキ、何の話してんだ」



 一人で話を進める魁人に、ガルアが詰め寄った。



「俺の張った結界は、魔物の敵意や殺意を感知する」



「模様の色はそれの高さを表すんだ、青から始まり、高くなれば赤に近くなっていく」

「既に赤くなってるって事は、交戦中って考えるのが妥当だろう」



「ガルア・リカント……同盟が結ばれた直後にこれだ」

「同胞の不始末、長としてどうするか……考えているんだろうな?」




「……俺だって馬鹿じゃねぇ」

「たとえ娘だろうが、筋は通すつもりだ」



「責任っつうのは、取れる奴が取るもんだ」

「時間ねぇんだろ、さっさと場所を教えろ」




「お待ちください、皆で行きましょう」




 すぐにでも駆け出しそうなガルアを、ロニアが静止した。




「場所さえ分かれば、後は俺が……」




「ガルア様一人で、後始末するおつもりですか?」

「一人で突っ走った結果、失敗したのをお忘れですか」



「今は状況も違いますわ、皆で行きましょう」

「考えるのが苦手なガルア様の代わりに、わたくし達が考えます」



 ロニアは微笑みながら、そう言った。



「……チッ」

「変わらねぇな、お節介が」




「まぁ酷い」




「ガルア・リカントォッ! ロニア様のご好意を何だと思っ……むぐぐ!」




「ややこしくなるから、お前は黙ってろってっ!」



 セントールが激昂するが、ハーミットがそれを押さえ込む。相も変わらず騒がしい獣人種ビースト達を見て、ユリウス王は思わず笑ってしまった。



「はははっ、纏まりが無いようで、結構纏まってるな」



「よし、魁人! 案内してくれや」

「誰かが襲われてるとしたら、急がないとやべぇしな」



 足並みを合わせ、町外れを目指す一行。騒ぎが大きくなる前に、何とかしなければならないだろう。王達が動き出した頃、目指す町外れでは衝撃音が鳴り響いていた。


























「人間の癖に、結構速いじゃねぇのっ!」



「はぁ……はぁ……」



 リウナの猛攻から何とか逃げ延びているカルディナだったが、その息は乱れている。一発でも当たれば、骨の一本や二本では済まないのだ、その恐怖がカルディナの体を萎縮させていた。



(うぅ……機翔靴ナショナルムーブを使えば逃げ切れると思ったけど、避けるだけでギリギリだよ……)



(このままじゃいつか当たる……反撃してみる? いやいや無理無理!)



 機翔靴ナショナルムーブの加速を生かした高速の移動術、それは獣人種ビーストの速度を凌駕する事も可能だ。加速と停止を一瞬で切り替えられる機翔靴ナショナルムーブは、人間には不可能な切り替えしも行える。そのスピードで、カルディナは何とか逃げ延びていた。



 それが何故、避けるだけで精一杯になっているのか。その理由は目だ。どれだけ速度を上げられても、超スピードで移動しながら攻撃を見切り、反撃を可能にする目をカルディナは持っていない。相手の攻撃を視覚した後、ワンテンポ遅れながら、超加速で逃げる事しか出来ずにいるのだ。



 機翔靴ナショナルムーブの加速を利用した蹴りなら、獣人種ビーストにもダメージを与えられる可能性はある。だが、その為に足を止めれば、反撃を避けられるかは怪しい。何よりも、カルディナの目は高速戦にはついていけない。



(どうしよう、どうしよう……緊張で頭おかしくなりそう……)



(それに、超加速って言っても……最高速度なんてこの場所じゃ出せないし……)



 周囲には木が多く生えている、こんな場所で最高速を出せば、間違いなく衝突してしまう。ただでさえ機翔靴ナショナルムーブの最大スピードは凄まじく、コントロールが難しいのだ。



(今出せる速度じゃ、いつかは捕まる……)



(一回捕まれば、その手からは逃げれない……)



(あああああああ……誰か助けてええええ)



 最早泣き出しそうな表情のカルディナだったが、その手の中でシズクがモゾモゾし始めた。



「あちょ、シズク!?」



「ポワー」



 一瞬動きを止めたカルディナ、その隙を見逃すリウナではない。



「死ねこらああああっ!」



「きゃああああああっ!」



 勢いのいい蹴り、それがカルディナの前髪を掠めた。その衝撃でシズクがカルディナの手から落っこちてしまう。




「邪魔だ水玉野郎っ!」




 リウナの足元でポヨポヨ弾むシズク、その体をリウナがボールのように蹴り飛ばした。



「シズクッ!」


「あんたなんてことすんのよっ! あんなに可愛いのにっ!!」




「は、はぁ? んなの知るかよ」


「テメェ殺されかけてるってのに、緊張感のねぇことをおおおおおおおおおおおおおっ!?」



 蹴り飛ばされたシズクが木に当たり、そのままリウナに跳ね返ってきた。ポヨポヨフニフニのシズクだが、弾力性のある体が勢いを乗せ、さながら弾丸のようにリウナに腹部にめり込む。その体当たりでリウナの体が吹き飛ばされてしまった。



「え、えぇ……」



 木を何本かへし折り、リウナは壁まで吹き飛んでしまう。唖然とするカルディナの足元に、シズクが擦り寄ってきた。



「ポー、ポー」



「もしかして、助けてくれたの?」



「ポワー」



 ピョンピョンと足元で跳ねているシズク、もしかしなくても助けられたのだ。




「シズクゥ……ありがとねぇ……」




 涙を流しながらシズクを両手で抱え上げるカルディナ、その背後から足音が聞こえた。ビクッとしたカルディナが恐る恐る振り返ると、足をガクガクさせながらもリウナが立っていた。



「この野郎……ふざけんなよ畜生……」


「人間の癖に……なんで殺れねぇんだ……」



 何とかここまで戻ってこれたようだが、相当効いてるらしい。木に手を当てていないと今にも倒れそうだ。




「あ、あ、あ、あなた……どうしてそんなにあたしを殺そうとすんの!?」




「勇者のテメェを、ウルフ族の頭領、ガルア・リカントの娘であるオレが殺せば、同盟をぶっ潰せるからだよ!」



「オレは……オレは人間に母様を殺されたんだ! 人間と同盟なんて冗談じゃねぇっ!!」



 その言葉に、カルディナは固まってしまった。重なったのだ、小さかった頃の自分と。両親が死んだ直後、魔物を憎んでいた自分と。




「クソッ! こうなったら、町に突っ込んで……!」




 踏み出そうとしたリウナだが、シズクが前を遮った。




「うっ……弾丸ボール……」




 先ほどの衝撃がまだ残っているのだろう。リウナは自分の腹部を押さえながら、後ずさりしてしまう。



「ね、ねぇ……リウナ、ちゃんって言ったよね……」

「あなたは、人が憎い?」




「あぁ? 憎いに決まってんだろ!」

「オレの母様は、退治屋に殺されたんだ!」



「オレの母様は優しかった、何の迷惑もかけてねぇのに、何で殺されなきゃなんないんだよ!」

「父様も父様だ……人間なんかと……なんで同盟なんか……!」







「その人間に、お前は助けられた事実を忘れるな」







 低い声がその場に響く、カルディナが振り向くと、ガルア・リカントがそこに立っていた。



「え、ガルアさん?」



「父……様……」



 リウナの顔が真っ青になっている。どう見ても恐怖に染まった表情だ。



「リウナ、確かにエコーは退治屋に、人間に殺された」

「だが、病魔に苦しむお前を救ったのは、ケンタウロス族と人間だ」




「間違ってた俺を正したのは、人間だ」




 ガルアを止めた人間、体を張ってガルアと真正面からぶつかった人間……。




(クロノ、君……それと……ユリウス王……だよね)




 カルディナは実際に見ている、クロノがどれだけボロボロになったか。間違いを正す為、必死になっていた姿を。



「リウナ、テメェがしたのは恩義を仇で返したってことだ」

「相応の罰を受ける覚悟が、あるんだろうな」




「うっ……」




「同盟を破綻させかねない行為だったよな、娘といえ、見逃すわけにはいかねぇ」

「……最悪、死ぬ覚悟くらいあってやったんだろうな」





「え……」





 その言葉に、カルディナは耳を疑った。安堵の為地面に座り込んでいたカルディナに、紫苑と魁人が近寄ってきた。




「大丈夫だったか?」




「魁人、さん……あたしは平気」

「ね、ねぇ……死ぬ覚悟って……」




「……ウルフ族の起こした問題、それにはウルフ族なりのケジメがあるだろう」

「同盟を組んでいるとは言っても、その種族の罰は、その種族の長に任せるしかない」



「騒ぎは広がってはいないが、それでもあの子は大きな罪を犯している」

「今現在もウルフ族には反乱因子が多くいる、あの子の存在と起こした事件が知れたら、火はさらに大きくなるだろう」




「……死ぬ覚悟ってのは、償いの為……じゃないか」




 その言葉の意味を考え、頭で理解する前に、カルディナはリウナとガルアの間に割り込んでいた。両手を広げ、リウナを庇うようにカルディナは立っていた。



「……リウナに襲われたのは、テメェか女勇者」

「で? 何のつもりだ」




「え、と……あの……その……」



(怖い怖い怖い怖いっ!! 何この威圧感っ!?)

(てか何で!? 何であたしこんな事……!?)



 目の前のガルアにビビリまくりのカルディナだが、その背後でリウナが怯えていた。



(……そうだよ、殺すなんて、ダメだよ……)

(死んじゃったら、そこまでだもん……)



(理解も、学ぶ事も……出来ないじゃん……)

(……きっと、クロノ君も……こうする筈だよ……!)



 背後で怯える獣人種ビーストを守る為、カルディナはガルアと向き合った。




「えっと……こ、殺すとか、そんな必要はないと……思います」




「これはウルフ族の問題だ、ケジメは取らせる」




(あぁあああダメダメ怖いって! それに、確かに悪い事したし……)

(……いや、待って……だったら……)




(いやでもそれは……騙せるわけ……)




 クロノと一緒に、初めてウルフ族の領地に行った時の事を思い出す。あの時、クロノは言葉でウルフ族と渡り合った。あの時は固まってしまい、何も出来なかったカルディナだったが、それでも気がついていた。



 あの時、クロノの手が震えていたことに。



(クロノ君だって、あの時怖かったんだ……)



(あたしは、あの子の憧れてた勇者なんだ……!)



(やってやる……やってみせるっ!)



 大きく息を吸い込み、カルディナは一世一代の嘘をつくことにした。




「ケ、ケジメって言いますけどね、実はあれなんですよ? あたしは襲われてたんじゃないんです」



「感知結界は、リウナの敵意を感知してる」

「下手な嘘だな」



「いやいやいや、それでいいんですよ」

「ね? リウナちゃん?」




「は? 何言っ!?」




 リウナの後頭部にシズクが体当たりをかます、リウナは半強制的に頷かされた。



(ナイス! ありがとうシズク!)



「ど、同盟が結ばれて……色々決まりが出来てきたでしょう?」

「それでも、咄嗟に事件が起こったら絶対に慌てちゃうと思うんですよ」



「学校とかであるじゃないですか、避難訓練みたいなの」

「リウナちゃんは頭領の娘としてですね、役に立とうとしてですね」



「そ、それで……勇者のあたしに相談をしてきたんです!」

「それで……今回の感知結界がちゃんと動くか、上の人達がちゃんと動けるか、そんなデモンストレーションを兼ねたサプライズを企画したわけですよ!」



「何の連絡もしなかったのは、実際に問題が起きた時と同じ様な緊張感を持ってもらうためで……」

「ですから、その……今回の事件は訓練みたいなものだったんです!」




「その……ゆ、勇者の権限を持って、今回の企画を実行に移した次第です!」




 馬鹿げている、騙せるわけがない。自分でも馬鹿だと思うが、それでも、自分にはこれくらいしか出来ない。精一杯で、ぶつかるしかないのだ。




「……サプライズねぇ」

「なんだ? 女勇者、まるでリウナと知り合いだったみたいだなぁ?」




(目が笑ってないよおおおおおおおおっ!)

(あぁもうどうにでもなれ! 行ける所まで行ってやるっ!)



「友達です! 友達ですよ!」

「ほらほら! 仲良しですよ!」



 そう言いながら、カルディナはリウナを抱き締めた。



「なっ!? テメェ何すんだ、離しやがれ!」



「あははははははーっ! 照れない照れないっ! いつも撫でてあげてるもんねー!?」



「ば……っ!? 何言って……」



(お願い! 話を合わせてーーーーーっ!!)



 小声でリウナに頼み込むカルディナ、その必死な声にリウナは少し怯んでしまった。



(……オレは、テメェを殺そうとしたんだぞ)

(何考えてんだ、何でオレを助けようとする……)




(……ダメだよ、死ぬなんて……)

(死んじゃったら、君のお父さんが何を見て、人間を信じようって思ったか……ずっと分からないんだよ!?)



(……あたしもね、本当かどうか分からないけど、魔物に両親を殺されたの)

(今は本当かどうか怪しんでるけど、当時はやっぱ、あなたと同じで……憎しみでどうにかなりそうだったよ)



(辛いよね……苦しいよね……あの感じを、あたしも知ってるから……)

(人事に思えないんだよ……放っておけ、ないよ……)






(……………………ッ!)






 暴れていたリウナだったが、震える腕で抱き締めてくるカルディナの言葉を聞いて、その動きを止めた。カルディナに身を預け、力を抜いた。





「……リウナ、今の話は本当か」





 ガルアがそんなリウナを見て、静かに聞いて来た。



「……………………本当、です」


「ご迷惑、おかけ、しました…………」





「……そうか」

「おい、女勇者……テメェはリウナを友達と言ったな」



「その言葉、嘘はねぇか」



 どんな意図があってそんな質問をしてきたかは分からないが、カルディナの言葉は決まっていた。



「嘘なんて、ないです」

「あたしは、魔物とだって友達になれると思います」



「あの証の無い勇者と同じ様に、あたしも人と魔の共存を……信じてますから!」



 そう言ったカルディナの目に、クロノと同じ光を、ガルアは感じた。



「……ほぉ」

「なるほどねぇ……つってもだ、ここまで騒ぎを起こしたんだ」


「リウナには、それ相応の罰を与える」



「……! そんなっ!」



「おい女勇者、確かテメェ、旅立つ予定があったな?」



「ふえ? ……えぇ、有りますけど……」



「いつ出る?」



 決まっている訳が無い、踏み出せずにウダウダし続けていたのだ。



「えっと、それは……」



「い つ 出 る?」



「つつつつ、次のコリエンテ行きの船で! 旅立とうかと思ってました!」



 自分でも思うが、情けない。視界の端でセントールが笑っているのが見えた。



「次のコリエンテ行きの船? ユリウス、それはいつだ」



「明日だな」



 予想以上に早かった、カルディナは目眩を感じ倒れそうになる。



「ならいいか……魁人、テメェ使い魔契約の儀は使えるか」



「術式を描いた巻物があるから可能だが、どうする気だ?」



「リウナをこの女勇者の使い魔にする、んで旅に同行させる」






「「はあああああああああああああああああああああっ!?」」






 カルディナとリウナ、二人同時に声を上げた。



「リウナ、テメェは一度己を殺せ」

「そこの女勇者に同行して、人ってのを良く見てみろ」



「それが、テメェの罰だ」




「けど、父様……!」




「サプライズだか何だか知らんが、今ウルフ族は反乱を目論む馬鹿が多い」

「テメェが騒ぐと、そいつらも暴れかねねぇんだ」



「いい機会だ、ちょっと旅に出て来い」




「いや、でも……」




「クドイ、殴るぞ」




 ガルアのその一言を最後に、リウナがその場に崩れ落ちた。



「魁人、後は任せた」



「あぁ……カルディナ、こっちこい」



「えぇ!? 本当に使い魔契約結ぶの!?」



「抑止の意味もあるしな、旅の途中で噛み付かれないようにしたほういいだろ」

「抑止範囲はお前の自由だ、まぁ好きにしろ」



「俺と紫苑のように、何の束縛もしないってのも出来るしな」



 またウダウダするカルディナだったが、半分強制的に魁人に引かれていった。そんなゴタゴタから遠ざかるように、ガルアが背を向けて歩き出す。




「……少し、意外でしたわ」

「口出しする必要も、なかったですわね」




「……本当は、有無も言わさず潰すつもりだったんだがな」

「見えなかったもんが見えてくると、なんつうか面白いもんだな」




「あらあら……ふふふ……」




「うぜぇぞロニア、テメェを代わりに潰してやろうか」




「まぁ怖い……ふふっ」




「チィ……おいユリウス」




「んー?」




「……人間ってのは、結構やるじゃねぇか」

「あの女について行けば、リウナも変わるかもな」




「……お前みたいにか?」




「……さぁな」




 クロノと戦い、ガルアは確かに変わった。ならきっと、リウナも変われるはずだ。






























 次の日、カルディナは船の上に居た。皆に見送られ、本当にコリエンテ行きの船で旅立たされたのだ。セントールからはクロノへの伝言を託されたが、カルディナは正直それどころではない。



 何せ、その横にはリウナが居るのだ。半強制的に結ばれた使い魔契約により、攻撃は封じているのだが、それでも怖いものは怖い。





 怖い……のだが……。





「クゥーン……ぎもじ……わるいぃ……」




(……可愛い……)




 リウナは絶賛、船酔い中だった。尻尾と耳が垂れ下がってるのがとても可愛らしい。思わず撫でようとするカルディナだったが、リウナはその手を威嚇した。



「さ、触るんじゃねぇ……!」



「もぉ……一緒に旅するんだし、少しは仲良くしようよぉ……」



「冗談じゃ……ねぇ!」

「何が悲しくて……人間なんか……と……うっ……」



「あーよしよし……」



 あまりの気持ち悪さに涙ぐむリウナ、カルディナがその背を擦ってやった。



「テ、メェ……調子乗ってんじゃねぇ、ぞ……」

「つか……そのゴムボールを……オレに近づけんなっ!」



「えー? 可愛いじゃん」

「ねぇ? シズク?」



「ポワ?」



 カルディナの肩の上には、シズクがいた。旅立つ直後、荷物の中に飛び込んできたのだ。何度置いていこうとしても、シズクはカルディナから離れようとしなかった。結局、カルディナはシズクも連れて行くことにした。





「あははは……もうこれ収まりつかないよね……」





 魔物を2種族も連れた旅になるとは、想像もしていなかった。カルディナは思わず苦笑いを浮かべる。



「……テメェ、これから……何を目的に旅、すんだよ……?」




「んー……両親の死について、詳しく調べたいんだけどね」

「それを調べながら、クロノ君を追いかけようと思うの」



「もう一度会いたいんだ、会って、話がしたい」

「あたしも、共存の世界を信じるって……話がしたいの」



「リウナちゃんもきっと、驚くよ」

「クロノ君はね、君のお父さんを止めた人なんだから」




 そう笑顔で語るカルディナ、リウナは機嫌悪そうに顔を背けた。



「興味ねぇ、後、ちゃんは止めろ」

「リウナで、いい」




「え?」




「リウナで良いっつってんだよっ! 二度言わせんな!」



 その顔は僅かに赤い、ほんの少しは、仲良く出来そうな兆しが見えたのかもしれない。



「……ん!」


「えへへっ……これから宜しくね、リウナ!」




「……絶対、やなこった」




「ポワー」




「うわあああっ! 近寄るんじゃねぇゴムボールがあああっ!」

「うっ! 気持ち悪……や、やめ……近寄るな……うわああああっ!」



 船酔いで動きが鈍いリウナに、シズクが近寄っていく。賑やかな旅になりそうだ、そう思いながら、カルディナは空を見上げていた。



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