Episode:カルディナ ② 『一世一代の嘘』
カルディナがリウナに追い掛け回されている頃、獣人種達を引き連れたユリウス王は魁人の拠点を訪ねていた。
「話は分かりましたが、この国は探知結界で包まれています」
「先日お渡しした術を施してある地図を見れば、異常発生地帯は確認できる筈ですが……」
魁人は旅立ちを予定している為、結界と国の全域を描いた地図をリンクさせていた。結界が何かを感知すれば、その地図に模様が浮かび、場所が分かるようになっていたのだ。これはマークセージを拠点とする魁人の、旅立ち後を考えた配慮だった。
「…………あー、そうだったな」
「……まぁあれだ、ついでだから魁人も手伝ってくれ」
「おいこらユリウス、テメェ忘れてたんだろ」
ガルアがユリウス王を睨みつけるが、ユリウス王は視線を逸らし続けていた。
「手伝うのは構いませんが……紫苑!」
「ここに」
「模様の色は何色だった?」
拠点内部に呼びかける魁人、すぐに魁人の背後に紫苑が現れた。
「はい、赤でした」
「時間はなさそうだな」
「退治屋モドキ、何の話してんだ」
一人で話を進める魁人に、ガルアが詰め寄った。
「俺の張った結界は、魔物の敵意や殺意を感知する」
「模様の色はそれの高さを表すんだ、青から始まり、高くなれば赤に近くなっていく」
「既に赤くなってるって事は、交戦中って考えるのが妥当だろう」
「ガルア・リカント……同盟が結ばれた直後にこれだ」
「同胞の不始末、長としてどうするか……考えているんだろうな?」
「……俺だって馬鹿じゃねぇ」
「たとえ娘だろうが、筋は通すつもりだ」
「責任っつうのは、取れる奴が取るもんだ」
「時間ねぇんだろ、さっさと場所を教えろ」
「お待ちください、皆で行きましょう」
すぐにでも駆け出しそうなガルアを、ロニアが静止した。
「場所さえ分かれば、後は俺が……」
「ガルア様一人で、後始末するおつもりですか?」
「一人で突っ走った結果、失敗したのをお忘れですか」
「今は状況も違いますわ、皆で行きましょう」
「考えるのが苦手なガルア様の代わりに、私達が考えます」
ロニアは微笑みながら、そう言った。
「……チッ」
「変わらねぇな、お節介が」
「まぁ酷い」
「ガルア・リカントォッ! ロニア様のご好意を何だと思っ……むぐぐ!」
「ややこしくなるから、お前は黙ってろってっ!」
セントールが激昂するが、ハーミットがそれを押さえ込む。相も変わらず騒がしい獣人種達を見て、ユリウス王は思わず笑ってしまった。
「はははっ、纏まりが無いようで、結構纏まってるな」
「よし、魁人! 案内してくれや」
「誰かが襲われてるとしたら、急がないとやべぇしな」
足並みを合わせ、町外れを目指す一行。騒ぎが大きくなる前に、何とかしなければならないだろう。王達が動き出した頃、目指す町外れでは衝撃音が鳴り響いていた。
「人間の癖に、結構速いじゃねぇのっ!」
「はぁ……はぁ……」
リウナの猛攻から何とか逃げ延びているカルディナだったが、その息は乱れている。一発でも当たれば、骨の一本や二本では済まないのだ、その恐怖がカルディナの体を萎縮させていた。
(うぅ……機翔靴を使えば逃げ切れると思ったけど、避けるだけでギリギリだよ……)
(このままじゃいつか当たる……反撃してみる? いやいや無理無理!)
機翔靴の加速を生かした高速の移動術、それは獣人種の速度を凌駕する事も可能だ。加速と停止を一瞬で切り替えられる機翔靴は、人間には不可能な切り替えしも行える。そのスピードで、カルディナは何とか逃げ延びていた。
それが何故、避けるだけで精一杯になっているのか。その理由は目だ。どれだけ速度を上げられても、超スピードで移動しながら攻撃を見切り、反撃を可能にする目をカルディナは持っていない。相手の攻撃を視覚した後、ワンテンポ遅れながら、超加速で逃げる事しか出来ずにいるのだ。
機翔靴の加速を利用した蹴りなら、獣人種にもダメージを与えられる可能性はある。だが、その為に足を止めれば、反撃を避けられるかは怪しい。何よりも、カルディナの目は高速戦にはついていけない。
(どうしよう、どうしよう……緊張で頭おかしくなりそう……)
(それに、超加速って言っても……最高速度なんてこの場所じゃ出せないし……)
周囲には木が多く生えている、こんな場所で最高速を出せば、間違いなく衝突してしまう。ただでさえ機翔靴の最大スピードは凄まじく、コントロールが難しいのだ。
(今出せる速度じゃ、いつかは捕まる……)
(一回捕まれば、その手からは逃げれない……)
(あああああああ……誰か助けてええええ)
最早泣き出しそうな表情のカルディナだったが、その手の中でシズクがモゾモゾし始めた。
「あちょ、シズク!?」
「ポワー」
一瞬動きを止めたカルディナ、その隙を見逃すリウナではない。
「死ねこらああああっ!」
「きゃああああああっ!」
勢いのいい蹴り、それがカルディナの前髪を掠めた。その衝撃でシズクがカルディナの手から落っこちてしまう。
「邪魔だ水玉野郎っ!」
リウナの足元でポヨポヨ弾むシズク、その体をリウナがボールのように蹴り飛ばした。
「シズクッ!」
「あんたなんてことすんのよっ! あんなに可愛いのにっ!!」
「は、はぁ? んなの知るかよ」
「テメェ殺されかけてるってのに、緊張感のねぇことをおおおおおおおおおおおおおっ!?」
蹴り飛ばされたシズクが木に当たり、そのままリウナに跳ね返ってきた。ポヨポヨフニフニのシズクだが、弾力性のある体が勢いを乗せ、さながら弾丸のようにリウナに腹部にめり込む。その体当たりでリウナの体が吹き飛ばされてしまった。
「え、えぇ……」
木を何本かへし折り、リウナは壁まで吹き飛んでしまう。唖然とするカルディナの足元に、シズクが擦り寄ってきた。
「ポー、ポー」
「もしかして、助けてくれたの?」
「ポワー」
ピョンピョンと足元で跳ねているシズク、もしかしなくても助けられたのだ。
「シズクゥ……ありがとねぇ……」
涙を流しながらシズクを両手で抱え上げるカルディナ、その背後から足音が聞こえた。ビクッとしたカルディナが恐る恐る振り返ると、足をガクガクさせながらもリウナが立っていた。
「この野郎……ふざけんなよ畜生……」
「人間の癖に……なんで殺れねぇんだ……」
何とかここまで戻ってこれたようだが、相当効いてるらしい。木に手を当てていないと今にも倒れそうだ。
「あ、あ、あ、あなた……どうしてそんなにあたしを殺そうとすんの!?」
「勇者のテメェを、ウルフ族の頭領、ガルア・リカントの娘であるオレが殺せば、同盟をぶっ潰せるからだよ!」
「オレは……オレは人間に母様を殺されたんだ! 人間と同盟なんて冗談じゃねぇっ!!」
その言葉に、カルディナは固まってしまった。重なったのだ、小さかった頃の自分と。両親が死んだ直後、魔物を憎んでいた自分と。
「クソッ! こうなったら、町に突っ込んで……!」
踏み出そうとしたリウナだが、シズクが前を遮った。
「うっ……弾丸ボール……」
先ほどの衝撃がまだ残っているのだろう。リウナは自分の腹部を押さえながら、後ずさりしてしまう。
「ね、ねぇ……リウナ、ちゃんって言ったよね……」
「あなたは、人が憎い?」
「あぁ? 憎いに決まってんだろ!」
「オレの母様は、退治屋に殺されたんだ!」
「オレの母様は優しかった、何の迷惑もかけてねぇのに、何で殺されなきゃなんないんだよ!」
「父様も父様だ……人間なんかと……なんで同盟なんか……!」
「その人間に、お前は助けられた事実を忘れるな」
低い声がその場に響く、カルディナが振り向くと、ガルア・リカントがそこに立っていた。
「え、ガルアさん?」
「父……様……」
リウナの顔が真っ青になっている。どう見ても恐怖に染まった表情だ。
「リウナ、確かにエコーは退治屋に、人間に殺された」
「だが、病魔に苦しむお前を救ったのは、ケンタウロス族と人間だ」
「間違ってた俺を正したのは、人間だ」
ガルアを止めた人間、体を張ってガルアと真正面からぶつかった人間……。
(クロノ、君……それと……ユリウス王……だよね)
カルディナは実際に見ている、クロノがどれだけボロボロになったか。間違いを正す為、必死になっていた姿を。
「リウナ、テメェがしたのは恩義を仇で返したってことだ」
「相応の罰を受ける覚悟が、あるんだろうな」
「うっ……」
「同盟を破綻させかねない行為だったよな、娘といえ、見逃すわけにはいかねぇ」
「……最悪、死ぬ覚悟くらいあってやったんだろうな」
「え……」
その言葉に、カルディナは耳を疑った。安堵の為地面に座り込んでいたカルディナに、紫苑と魁人が近寄ってきた。
「大丈夫だったか?」
「魁人、さん……あたしは平気」
「ね、ねぇ……死ぬ覚悟って……」
「……ウルフ族の起こした問題、それにはウルフ族なりのケジメがあるだろう」
「同盟を組んでいるとは言っても、その種族の罰は、その種族の長に任せるしかない」
「騒ぎは広がってはいないが、それでもあの子は大きな罪を犯している」
「今現在もウルフ族には反乱因子が多くいる、あの子の存在と起こした事件が知れたら、火はさらに大きくなるだろう」
「……死ぬ覚悟ってのは、償いの為……じゃないか」
その言葉の意味を考え、頭で理解する前に、カルディナはリウナとガルアの間に割り込んでいた。両手を広げ、リウナを庇うようにカルディナは立っていた。
「……リウナに襲われたのは、テメェか女勇者」
「で? 何のつもりだ」
「え、と……あの……その……」
(怖い怖い怖い怖いっ!! 何この威圧感っ!?)
(てか何で!? 何であたしこんな事……!?)
目の前のガルアにビビリまくりのカルディナだが、その背後でリウナが怯えていた。
(……そうだよ、殺すなんて、ダメだよ……)
(死んじゃったら、そこまでだもん……)
(理解も、学ぶ事も……出来ないじゃん……)
(……きっと、クロノ君も……こうする筈だよ……!)
背後で怯える獣人種を守る為、カルディナはガルアと向き合った。
「えっと……こ、殺すとか、そんな必要はないと……思います」
「これはウルフ族の問題だ、ケジメは取らせる」
(あぁあああダメダメ怖いって! それに、確かに悪い事したし……)
(……いや、待って……だったら……)
(いやでもそれは……騙せるわけ……)
クロノと一緒に、初めてウルフ族の領地に行った時の事を思い出す。あの時、クロノは言葉でウルフ族と渡り合った。あの時は固まってしまい、何も出来なかったカルディナだったが、それでも気がついていた。
あの時、クロノの手が震えていたことに。
(クロノ君だって、あの時怖かったんだ……)
(あたしは、あの子の憧れてた勇者なんだ……!)
(やってやる……やってみせるっ!)
大きく息を吸い込み、カルディナは一世一代の嘘をつくことにした。
「ケ、ケジメって言いますけどね、実はあれなんですよ? あたしは襲われてたんじゃないんです」
「感知結界は、リウナの敵意を感知してる」
「下手な嘘だな」
「いやいやいや、それでいいんですよ」
「ね? リウナちゃん?」
「は? 何言っ!?」
リウナの後頭部にシズクが体当たりをかます、リウナは半強制的に頷かされた。
(ナイス! ありがとうシズク!)
「ど、同盟が結ばれて……色々決まりが出来てきたでしょう?」
「それでも、咄嗟に事件が起こったら絶対に慌てちゃうと思うんですよ」
「学校とかであるじゃないですか、避難訓練みたいなの」
「リウナちゃんは頭領の娘としてですね、役に立とうとしてですね」
「そ、それで……勇者のあたしに相談をしてきたんです!」
「それで……今回の感知結界がちゃんと動くか、上の人達がちゃんと動けるか、そんなデモンストレーションを兼ねたサプライズを企画したわけですよ!」
「何の連絡もしなかったのは、実際に問題が起きた時と同じ様な緊張感を持ってもらうためで……」
「ですから、その……今回の事件は訓練みたいなものだったんです!」
「その……ゆ、勇者の権限を持って、今回の企画を実行に移した次第です!」
馬鹿げている、騙せるわけがない。自分でも馬鹿だと思うが、それでも、自分にはこれくらいしか出来ない。精一杯で、ぶつかるしかないのだ。
「……サプライズねぇ」
「なんだ? 女勇者、まるでリウナと知り合いだったみたいだなぁ?」
(目が笑ってないよおおおおおおおおっ!)
(あぁもうどうにでもなれ! 行ける所まで行ってやるっ!)
「友達です! 友達ですよ!」
「ほらほら! 仲良しですよ!」
そう言いながら、カルディナはリウナを抱き締めた。
「なっ!? テメェ何すんだ、離しやがれ!」
「あははははははーっ! 照れない照れないっ! いつも撫でてあげてるもんねー!?」
「ば……っ!? 何言って……」
(お願い! 話を合わせてーーーーーっ!!)
小声でリウナに頼み込むカルディナ、その必死な声にリウナは少し怯んでしまった。
(……オレは、テメェを殺そうとしたんだぞ)
(何考えてんだ、何でオレを助けようとする……)
(……ダメだよ、死ぬなんて……)
(死んじゃったら、君のお父さんが何を見て、人間を信じようって思ったか……ずっと分からないんだよ!?)
(……あたしもね、本当かどうか分からないけど、魔物に両親を殺されたの)
(今は本当かどうか怪しんでるけど、当時はやっぱ、あなたと同じで……憎しみでどうにかなりそうだったよ)
(辛いよね……苦しいよね……あの感じを、あたしも知ってるから……)
(人事に思えないんだよ……放っておけ、ないよ……)
(……………………ッ!)
暴れていたリウナだったが、震える腕で抱き締めてくるカルディナの言葉を聞いて、その動きを止めた。カルディナに身を預け、力を抜いた。
「……リウナ、今の話は本当か」
ガルアがそんなリウナを見て、静かに聞いて来た。
「……………………本当、です」
「ご迷惑、おかけ、しました…………」
「……そうか」
「おい、女勇者……テメェはリウナを友達と言ったな」
「その言葉、嘘はねぇか」
どんな意図があってそんな質問をしてきたかは分からないが、カルディナの言葉は決まっていた。
「嘘なんて、ないです」
「あたしは、魔物とだって友達になれると思います」
「あの証の無い勇者と同じ様に、あたしも人と魔の共存を……信じてますから!」
そう言ったカルディナの目に、クロノと同じ光を、ガルアは感じた。
「……ほぉ」
「なるほどねぇ……つってもだ、ここまで騒ぎを起こしたんだ」
「リウナには、それ相応の罰を与える」
「……! そんなっ!」
「おい女勇者、確かテメェ、旅立つ予定があったな?」
「ふえ? ……えぇ、有りますけど……」
「いつ出る?」
決まっている訳が無い、踏み出せずにウダウダし続けていたのだ。
「えっと、それは……」
「い つ 出 る?」
「つつつつ、次のコリエンテ行きの船で! 旅立とうかと思ってました!」
自分でも思うが、情けない。視界の端でセントールが笑っているのが見えた。
「次のコリエンテ行きの船? ユリウス、それはいつだ」
「明日だな」
予想以上に早かった、カルディナは目眩を感じ倒れそうになる。
「ならいいか……魁人、テメェ使い魔契約の儀は使えるか」
「術式を描いた巻物があるから可能だが、どうする気だ?」
「リウナをこの女勇者の使い魔にする、んで旅に同行させる」
「「はあああああああああああああああああああああっ!?」」
カルディナとリウナ、二人同時に声を上げた。
「リウナ、テメェは一度己を殺せ」
「そこの女勇者に同行して、人ってのを良く見てみろ」
「それが、テメェの罰だ」
「けど、父様……!」
「サプライズだか何だか知らんが、今ウルフ族は反乱を目論む馬鹿が多い」
「テメェが騒ぐと、そいつらも暴れかねねぇんだ」
「いい機会だ、ちょっと旅に出て来い」
「いや、でも……」
「クドイ、殴るぞ」
ガルアのその一言を最後に、リウナがその場に崩れ落ちた。
「魁人、後は任せた」
「あぁ……カルディナ、こっちこい」
「えぇ!? 本当に使い魔契約結ぶの!?」
「抑止の意味もあるしな、旅の途中で噛み付かれないようにしたほういいだろ」
「抑止範囲はお前の自由だ、まぁ好きにしろ」
「俺と紫苑のように、何の束縛もしないってのも出来るしな」
またウダウダするカルディナだったが、半分強制的に魁人に引かれていった。そんなゴタゴタから遠ざかるように、ガルアが背を向けて歩き出す。
「……少し、意外でしたわ」
「口出しする必要も、なかったですわね」
「……本当は、有無も言わさず潰すつもりだったんだがな」
「見えなかったもんが見えてくると、なんつうか面白いもんだな」
「あらあら……ふふふ……」
「うぜぇぞロニア、テメェを代わりに潰してやろうか」
「まぁ怖い……ふふっ」
「チィ……おいユリウス」
「んー?」
「……人間ってのは、結構やるじゃねぇか」
「あの女について行けば、リウナも変わるかもな」
「……お前みたいにか?」
「……さぁな」
クロノと戦い、ガルアは確かに変わった。ならきっと、リウナも変われるはずだ。
次の日、カルディナは船の上に居た。皆に見送られ、本当にコリエンテ行きの船で旅立たされたのだ。セントールからはクロノへの伝言を託されたが、カルディナは正直それどころではない。
何せ、その横にはリウナが居るのだ。半強制的に結ばれた使い魔契約により、攻撃は封じているのだが、それでも怖いものは怖い。
怖い……のだが……。
「クゥーン……ぎもじ……わるいぃ……」
(……可愛い……)
リウナは絶賛、船酔い中だった。尻尾と耳が垂れ下がってるのがとても可愛らしい。思わず撫でようとするカルディナだったが、リウナはその手を威嚇した。
「さ、触るんじゃねぇ……!」
「もぉ……一緒に旅するんだし、少しは仲良くしようよぉ……」
「冗談じゃ……ねぇ!」
「何が悲しくて……人間なんか……と……うっ……」
「あーよしよし……」
あまりの気持ち悪さに涙ぐむリウナ、カルディナがその背を擦ってやった。
「テ、メェ……調子乗ってんじゃねぇ、ぞ……」
「つか……そのゴムボールを……オレに近づけんなっ!」
「えー? 可愛いじゃん」
「ねぇ? シズク?」
「ポワ?」
カルディナの肩の上には、シズクがいた。旅立つ直後、荷物の中に飛び込んできたのだ。何度置いていこうとしても、シズクはカルディナから離れようとしなかった。結局、カルディナはシズクも連れて行くことにした。
「あははは……もうこれ収まりつかないよね……」
魔物を2種族も連れた旅になるとは、想像もしていなかった。カルディナは思わず苦笑いを浮かべる。
「……テメェ、これから……何を目的に旅、すんだよ……?」
「んー……両親の死について、詳しく調べたいんだけどね」
「それを調べながら、クロノ君を追いかけようと思うの」
「もう一度会いたいんだ、会って、話がしたい」
「あたしも、共存の世界を信じるって……話がしたいの」
「リウナちゃんもきっと、驚くよ」
「クロノ君はね、君のお父さんを止めた人なんだから」
そう笑顔で語るカルディナ、リウナは機嫌悪そうに顔を背けた。
「興味ねぇ、後、ちゃんは止めろ」
「リウナで、いい」
「え?」
「リウナで良いっつってんだよっ! 二度言わせんな!」
その顔は僅かに赤い、ほんの少しは、仲良く出来そうな兆しが見えたのかもしれない。
「……ん!」
「えへへっ……これから宜しくね、リウナ!」
「……絶対、やなこった」
「ポワー」
「うわあああっ! 近寄るんじゃねぇゴムボールがあああっ!」
「うっ! 気持ち悪……や、やめ……近寄るな……うわああああっ!」
船酔いで動きが鈍いリウナに、シズクが近寄っていく。賑やかな旅になりそうだ、そう思いながら、カルディナは空を見上げていた。




