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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第五十五章 『雪花が彩る正義の形』
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第八百三十話 『三段構えの氷祭り』

「しかし……人が多いな、魔物が参加するのは周知の事実だろうに人が減ってる感じが全然しない」



「やっぱりお爺さんの人柄のせいなのですかー? 天焔闘技大会も最終的に盛り上がったとはいえ最初の方は人減ってましたよー」



 人の波をかき分けながら、レラ達は国の王へ訪ねる。バーガーマンはすれ違う人々に挨拶をしながら、レラ達の問いに笑ってみせた。



「わしはただの厄介老害じゃて、人によっては迷惑に感じる程お節介な正義馬鹿よな」

「国民が寛大なだけよ、面倒ごとに首を突っ込むわしについてきてくれる……わしなんかには勿体ない者ばかりじゃ」



「王様っ! お疲れ様です!」



「国の警備は任せてくれ大将! 悪の一人も許さねぇっ!」



「朝から晩まで気張っていきやすっ!」



「こんのトンチキ野郎共っ! 自分達が楽しむ事は忘れるんじゃねぇぞっ!」



「「「イエッサーッ!」」」



 なんか大柄の男達が揃った挨拶と共に頭を下げてきている、その手の会合にしか見えない。



(当然のようにガラの悪い奴等が頭下げて来てんな……)



「お爺さんヤクザみたいなのです」



「ピリカさーん、思った事ぜーんぶ喋るの良くないと思うんだよ俺はさーっ!!」



「わっはっはっはっ! 好きに呼んでくれて構わんよ! わしはただの老害じゃて!」

「善き民が担ぎ上げてくれただけの、下らんじじいよ……今回も面倒に巻き込んじまう……守り切るのは当然、首突っ込んだ手前勝ち星上げにゃ顔向け出来んわい」

「当然、例年以上に祭りを盛り上げ楽しませにゃなぁ」



「そういえばさっきの男達も勇者なんですよね? ラーナには勇者が多いと聞きます」



「この祭りの由来ともなった大戦、その影響かこの辺は血の気の多い馬鹿が多くてのぉ……力が有り余ってるなら人様の為に使えってのがわしの教えじゃ」

「専属契約こそ『礼儀』としか結んでないが、大勢の勇者がこの国を拠点にしてくれとるよ」



「クロノ様が喜びそうなのですよぉ」



「あいつ勇者好きだもんな……俺達含めあいつの周りには変な勇者が多いけど」



「わしの経験則だと、勇者になる奴は変な奴が多い感じじゃな……なーんてなわっはっは」



 冗談で言っているのだろうが、レラが思い浮かべる勇者は本当に変な奴しかない。その為バーガーマンの冗談が全然笑えなかった。



(勇者の加護を与えるのは神って話だが……悪人、変人、加えて俺達のような魔物にも加護を与える始末……正直胡散臭いと思っちまう)

(何より、誰にでも加護を与えるようなガバガバ判定の癖になんでクロノが弾かれる、納得いかねぇ)



「ところで専属契約を結んでいる『礼儀』の勇者様ってどんな方なのです? 出来れば未知であればありがたいのですが」



「そうじゃな、変な馬鹿じゃ」



「専属勇者の説明とは思えないですね……」



「とびっきりの馬鹿だから、気に入った」



「なるほど、つまり未知ですね?」



「会話の合間合間に突っ込み要求すんのやめてくんねぇかな、クロノと再会する前に倒れちまうよ」



「何処までも真っ直ぐ己の正義を貫くあの馬鹿は、それ故に人も惹きつける……わしより人望厚いかもしれんよ」

「だからこそ、あいつに惚れ込んだ勇者達は今日もこの国の為に力を貸してくれとるんじゃ」



「ふぅん……仲良く出来るといいな」



「そんな事より向こうに人が集まってますよ、未知の香りがするのですよ」



「お前から振った話題だよね? この方王様なんだよ? 失礼じゃないかなっ!?」



「わっはっはっはっ! 面白いお嬢ちゃんじゃなぁっ!」



 王の言葉をそんな事で済ませ、ピリカは人だかりに吸い寄せられていく。急いで止めようとするレラだが、レラに未知補正が乗ったピリカを止められるはずもない。羽交い絞めにしても力技で引きずられてしまっている。



「おま、お前本当に……後衛が前衛より力強いのやめ、やめろ……」



「ん~? なにやら聞き覚えのある声が……」



「カクリヨの申し子、闇を知り、煉獄の焔に抱かれ、真理に至りて今再び舞い戻ったっ!」

「我が威光に平伏せ、愚民共よっ!」



「レフィアンちゃんお帰りー」



「相変わらず何言ってるのかわかんねぇ子だなぁ」



「ふははははっ! 何も知らぬ無垢なる民よ、我が庇護下に在る幸運にむせび泣くがいいっ!」



 レフィアンが人混みの中央で高らかに笑っている、ポーズを決め実に機嫌が良さそうだ。



(何してんだあの子は……)



「誰かと思ったらカクリヨちゃんなのですよぉ、再会記念に未知でも一発しばくのですよぉ」



「げぇっ! エルフ!」



 そして一瞬目を離した隙にピリカがレフィアンに迫っていた。露骨に嫌な顔をされ後ずさりされている。



(ピリカって色んな奴に警戒されてんな……)



 既に止める事を諦めているレラはピリカを放置。この後起こる悲劇から目を逸らして見れば、レフィアンの後方に見知った顔を見つけた。



「よぉラックにラサーシャじゃないか」



「レラかー! お前達も来てたんだなー!」



 笑顔で駆け寄ってくるラックとハイタッチを交わし、レラも笑顔を浮かべる。クロノが関わっている一件なら、こうして顔見知りとも高頻度で再会できる。



「お前等もクロノに加勢か?」



「それもありますが、流魔水渦に手を貸す者として此度の作戦参加は当然……勇者としても見過ごせませんし……」



「レフィアンの付き添いでもあるんだぜー!」



「付き添い?」



「ラーナは我の拠点でもあるのだ、我が師はこの国の専属勇者なのだぞっ!」

「聞けば此度の作戦はこの国を、祭りを囮に邪を誘き寄せるとか……我の目が邪を暴き、我が暗黒が全てを飲み込んでやろうではないかっ! 我が居る限りこの国に手出しはさせ」



「レフィアンさんが血相を変えてラーナを守ると言うので、友としてお力添えをと」



「そうそう、友達の為なんだ」



「…………ま、まぁそういうことだ」



「仲良いな」



「仲が良いですねぇ」



「ふんっ! まぁ我の人望の成せる業というやつ……」



「友達の為なら、俺は何でも出来るし何処へでも駆けつけるぜ!」



「そうですね、それに関しては同意です」



「うわああああああああっ!」



 カクリヨの者が善意の光で浄化されていた、どうも真っ直ぐすぎる力は特攻らしい。浄化され崩れ落ちるレフィアンに、バーガーマンが近づいてくる。



「レフィアンではないか、帰っていたのか」



「ん……ボスか、我は友と共に流魔水渦に力添えしていてな……今回の作戦を聞いて急いで戻ってきた次第だ」

「師匠は何処だ? まだ会えていなくてな」



「リンクヘッジは中央広場じゃな、雪像フェーズはそこを見張る予定じゃよ」



「そっか、師匠がいるなら中央広場は大丈夫そうだな」

「我は他に目を凝らすか、師よりも成果を上げ下剋上といこう」



「つまり頑張って役に立ってお師匠さんに褒めてもらいたいのですね!」



「ピリカ? 思った事全部口にするの良くないと思うんだ」



 ピリカの言葉に射貫かれレフィアンは大ダメージを受けている、多分この二人の相性は最悪に近い。



「そんな事より雪像フェーズってなんなのですか?」



(そんな事……)



「ふふっ……説明せねばならんなっ! ラーナ初心者共よっ!」

「雪花氷祭りは幾つかのフェーズに分かれている、大きく分けて三段階の目玉イベントが迫り来るのだっ!」

「第一フェーズ雪像クリエイトッ! ラーナには国を囲むように大通りが存在する、祭りの際この大通りを使って各チームが大型の雪像を作り上げるのだっ! 一番立派な雪像を作り上げたチームは豪華賞品! 参加は国の者以外も出来るから盛り上がるのだ!」



「確か今年は七チーム、大罪の悪魔がそれぞれ率いたチームなんだっけか?」

「参加は自由だけど、大罪達は絶対別チームになるよう仕組んでるって聞いたが……仕掛けてくるならここが一番確率高いと」



「第二フェーズは雪花パレードだ! 大通りの魔術が起動し各チームが組み上げた雪像が動き出し雪花吹雪をバックにパレードが始動するぞ! 第一フェーズのクオリティがそのまま盛り上がりに影響する! 今年はあのコール・ミジットのライブがここに足されるから凄い事になるのは確定的に明らかだ!」



「中央広場のステージが上昇し、パレードを彩る事になるんじゃ」

「今年はコール・ミジットにそこで歌ってもらう事になる、わしも楽しみ」



「俺も楽しみだ!」



「楽しめるように荒事を片付けておきたいものですね……」



「そして〆の第三フェーズ、雪花乱舞だ……花吹雪を魔術で彩り雪花火で空を、国を覆い尽くすド派手な演出で盛り上がりを最高潮にフィーバーさせるのだっ! 我等魔法使いの見せ場にして最高に綺麗で気持ちのいい祭りの目玉だ! 我はここが一番好きなんだ!」



「それは未知ですか?」



「未知も驚くド派手で綺麗な物凄い奴だ!」



「エクセレント、期待で既に脳が悲鳴を上げています」



「静かに暴走準備するのやめて、怖いから」



 テンションがどんどん高くなってるレフィアンとは違い、ピリカはどんどん静かになっていた。まるで未知に対し力を溜めているようで、レラは恐怖を感じていた。もしかしたら、この国で今一番危険なのはこの幼馴染かもしれない。



「ちなみに雪像フェーズはギリギリまで参加者を募集中じゃ、締め切りはお昼丁度じゃぞ」



「ある意味、襲撃対策最前線って事だよな……」



「大通り以外にも見張りは多数いるとはいえ、それでも備えすぎって事はないでしょうね」

「丁度話していたんです、私やラックは見張りに回るか雪像作りに参加するか」



「我は見張りに回る、我は飛べる故機動力と視野を生かす」



「俺はなんでもするぞ!」



「この通りラックはアホなので、雪像作りに回って私と別チームになると制御が利かなくなる恐れがあるのですよね」

「なので、レフィアンさんのフォローに回ろうかなと」



「俺はなんでもする、考えるのは任せるっ!」



 なんだかんだ言ってチームワークは良好のようだ、役割分担が上手く出来ている。話を聞き、レラとピリカは顔を見合わせる。



「どうする?」



「そうですねぇ、あっちもこっちも未知で興味深いのですが……」

「雪像作りに参加すれば、七分の一で大罪の傍で大罪未知を摂取できるって事ですよねぇ……」



「あぁうんそうだね、そうかな、そうかも?」



「レー君と別チームならレー君側の大罪と合わせて大罪二人分の濃厚未知を摂取できるのか……大罪ガチャか……」



「真面目にやろう? 大事な作戦中なんだからさ」



「大真面目にエルフやってんですよっ!!」



 理不尽に引っ叩かれた。助けに来たはずなのにレラは今クロノに助けてほしくて仕方がない。ピリカの暴走は徐々に加速し、勢いを増しながら第一フェーズの時が迫る。



 果たして作戦の成否は、そして雪像フェーズの豪華商品とは……!



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